IHクッキングヒーターは便利ですが、あの真っ平な台の上で、火を使わずに加熱できるなんて不思議だと思いませんか?
一体台の下側はどうなっているのでしょうか?
なぜガラス製の調理器具は使えないのでしょうか?
以下にIHクッキングヒーターがどのような仕組みで加熱しているのかについて分かりやすく紹介します。
電流を流すと磁場が生まれる仕組み
まずは、IHクッキングヒーターが取り入れている加熱方法の仕組みからみていきましょう。
ここにまっすぐなワイヤがあります。
このワイヤに電気を流すと、周りに円状の磁界(磁気が働く空間)が形成されます。磁界とは、磁場ともいい、電流が作り出す場で磁気が働く空間のことです。
このとき、流す電流の量が増えれば、磁場の強さも増します。
また、電流の向き(青の矢印)が変われば磁場の向き(赤の矢印)も変わります。
ここにコイル(ワイヤをくるくるコイル状にしたもの)がある場合も同様に、電流を増やすと磁界の強さは増し、電流の向きが変わると磁場の向きも変わります。
これが、IHクッキングヒーターで用いられている誘導加熱(電気を通しやすいものを加熱する仕組み)のもとになっています。
誘導加熱とは
IHの台の下には、コイル状のヒーターがあります。ここが誘導加熱器の最も重要な部分です。
このコイルに高周波の電流を、同じようなリズムで交互に向きを変えて(交流電圧)接続すると、強力な磁場が形成されます(パルス磁場)。
このとき、電界や磁界がどれくらいの頻度で変化するかを表した値が、みなさんもよくご存知の「周波数」と呼ばれるものです。
このように一定の周波数で電気的な振動を発生させるときに働くのが電子発振器(オシレーター)と呼ばれるデバイスです。
このデバイスの働きは、電池にコイルをつないで、定期的に電池の上下をひっくり返して、プラスからマイナスに、マイナスからプラスへと電流の流れる方向を頻繁に変えるように機能します。
たとえば、発振器が約50Hz(ヘルツ)の周波数といえば、磁場の方向が1秒間に50回変化することを意味します。
この仕組みで調理器具がどのように反応しているか見てみましょう。
IHクッキングヒーターの仕組み
(上と下の写真では、電気を流す方向(+と-)を変えると、磁場の向きが逆になっていることが分かります。これが高速で繰り返されています)
この上下のような磁界の変化にさらされたフライパン(導体)は、その変化に抵抗しようとして、渦状に流れる磁力線の束を作り出します。
渦状の電流が発生すると、そこに大量の熱が発生し、それが金属や食材を素早く加熱するのです。
実際、IHクッキングヒーターのIHという名前は、誘導加熱を意味するInduction HeaterのIHに由来したもので、とても熱効率のよい加熱方法だといえるでしょう。
それは、熱エネルギーがコイルから調理器具に直接伝達されるからですが、IH加熱にはいくつかの限界があります。
誘導加熱は渦電流を利用した加熱方法であるため、電気が流れやすく「導電性」と、電気抵抗があるものが調理器具の条件として適しています。
不導体(プラスチック、木、陶器、土鍋など)の材料を加熱することはできません。たとえば、金属でも電気抵抗が小さいアルミや銅、、また、電気をほとんど通さない絶縁体(ガラス製)の調理器具は加熱できません。
誘導加熱は、鋼鉄のように磁力の影響が目に見えて現れるような強磁性材料に最適なのです。
以下の動画では、IHクッキングヒーターによる加熱の仕組み見ることができます。