みなさんは、なぜガソリン給油中に、満タンになると自動で給油が止まるのか不思議に思ったことはありませんか?
それは、給油ノズルの先端に空気穴があり、満タンになったガソリンがその穴を塞ぐことで、(空気が吸い込まれなるなるために)ガソリンの流れが遮断されて自動で給油がとまる仕組みです。
しかし、この仕組みにたどりつくまでには、エンジニアによる数多くの試行錯誤がありました。
以下に、現代の芸術的な給油システムや100年におよぶエンジニアリングの工学的な進化を紹介します。
灯油が使われていた時代
現代のガソリンスタンドの仕組みを理解するためには、それらが存在しなかった時代まで遡る必要があります。
昔、まだガソリンではなく、灯油が使われていた時代、車の燃料を手に入れるには、お店に行って従業員に缶に直接注いでもらったものを、漏斗を使って車に注ぐ必要がありました。
しかし、これは時間がかかるうえ、危険な方法だったため、より安全で効率的な給油方法が求められたのです。
そして、アメリカの発明家シルヴァナス・ボウザー(silvanus Bowser)が燃料ポンプを考案。
これは手動式のメカニズムで、容器から灯油を一方通行弁を通してノズルから押し出す仕組みでした。
しかし、顧客は、支払った分だけ本当に燃料を入れてもらえたかを確認することができませんでした。
そのため、後に量を確認できる燃料ポンプが発明されました。
燃料ポンプの発明
係員はまずポンプの上にあるガラス製タンクに燃料をポンプで注入し、正確な量を測定します。
その後、バルブを開くと重力によりすべての燃料が顧客の車に流れ込む仕組みです。
これらの小さな路肩のガソリンポンプは、1900年に全米で自動車が8,000台しか存在しなかった初期の時代には機能していました。
しかし、わずか12年後にはその数が120万台に急増し、自動車が至る所に溢れるようになると大混雑を引き起こしたのです。
ガソリン待ちの大渋滞を行き起こすだけでなく、小型タンクでは需要に対応できなくなりました。最も深刻な問題は、燃料を地上に貯蔵していたため、重大な事故が発生するリスクがあったことです。
そのため、1913年にガルフ・オイル・カンパニーはピッツバーグに最初の専用大型給油所を開設しました。
単一の給油機ではなく、地下に大きな貯蔵タンクを設置し、6つの給油機と接続することで、複数の車が同時に給油できるようになりました。
同様のガソリンスタンドが全国に次々とオープンし、車は自由の象徴となりました。
ガソリンの誕生による問題
しかし1920年代までに、ほとんどの車は灯油からより燃焼効率のよいガソリンに切り替わりました。
しかしこれによって新たな問題が生じました。
蒸気の問題です。
灯油の引火点(気化して燃焼が開始する温度)は、40℃以上で、常温では自然発火の可能性は低いと考えられています。
一方、ガソリンの引火点はそれよりもはるかに低い-40°であり、常に可燃性蒸気を空気中に放出していました。
この蒸気はタンク内に蓄積し、車が給油されるたびに空気を汚染しました。
さらに、蒸気に引火する小さな火花一つで、顧客は瞬く間に彼方へ吹き飛んでしまうリスクもありました。
そのため、ガソリンスタンドを火災の危険から効率的なセルフサービス給油所へと変えるためには、巧妙な技術革新が必要でした。
また、この給油スタイルでは顧客は、タンクが満タンになったかどうか分からなかったため、ガソリンを注入中にこぼしてしまうことも多かったのです。
そこでエンジニアたちは自動遮断弁を考案。
自動遮断弁の発明
これはとてもシンプルな仕組みで、ノズル内に設置された浮きが、燃料が満タンになると上昇して燃料の流れを遮断する仕組みでした。
しかし地下深くにはまだ大きな問題が残っていました。
巨大な貯蔵タンク内でガソリンの蒸気が蓄積し、可燃性ガスの層を形成していたのです。
そのため、地中のタンクにガソリンを補充する際、蒸気が大気中に押し出され、重大な火災の危険を引き起こす可能性がありました。
さらに、鋼鉄製のタンクは時間とともに腐食し、周囲の土壌にガソリンが漏れ出す問題もありました。
現在、これらの地下ガソリンタンクのほとんどはファイバーグラス製であり、他にも安全性を確保するための数多くの隠れたエンジニアリングの結晶が組み込まれています。
以下がその仕組みです。
まず、トラックが地中タンクにガソリンを補充するとき、タンク内のガソリンレベルが約95%に達すると、バルブが跳ね上がります。これは、燃料の流れを自動で停止させて、入れすぎを防ぐための設計です。
また、タンク内の蒸気を排出するために、トラックはタンクの上部にある2つ目のバルブからガスを吸引します。
その蒸気は処理プラントに戻されて冷却され、再利用可能な燃料に変換されます。
給油が自動的に止まる仕組み
顧客が車を給油する際は、ポンプが作動し、タンクの底に設置されたパイプとフィルターを通ってガソリンを送り出します。
それが燃料ノズルに流れ込むとき、とても興味深いことが起こります。
それは、車に給油しすぎないようにする機械的な芸術です。
燃料がノズルに入ると、狭い開口部を通って押し出されます。
開口部周辺の小さな穴は、ノズルの先端の小さな開口部につながる細いパイプに接続されています。
燃料が流れる際、ベンチュリ効果によってここに低圧領域が形成されます。
ベンチュリ効果とは、狭い出口を通すことで流体の流れを絞ることによって、流速を増加させて、低い圧力を発生させること
これにより、細いパイプを通じて空気が吸い込まれ、開口部でガソリンと混合されます。
もう1本のチューブもこの狭い開口部に接続され、密封された小さな小部屋につながっています。
そして、ここが魔法が起こる場所です。
レバーが押されると、点を軸に傾き、燃料を通過させるバルブが開きます。
車が満タンになると、燃料がノズルの空気穴を覆い、このシステム内に吸い込まれる空気の流れが遮断されます。
そのため、追加の空気を取り込む唯一の別の経路も完全に密封されているため、小部屋内の空気が吸い出されて真空状態が作り出され、
ボールベアリング(玉軸受)が落ちると、レバーシステム全体が落下してバルブを閉じ、燃料の流れを遮断します。
このようにして、100年におよぶエンジニアリングの成果によって、ガソリンスタンドは安全で日常的な存在となったのです。
ガソリンスタンドの工学的な進化については以下の動画で見ることができます。