有名なパナマ運河のゲートは、マイターロックと呼ばれ、約500年前に偉大なレオナルド・ダ・ヴィンチによって設計されました。
現在でも、ダ・ヴィンチの何世紀も前の発明であるマイターロックは、ほとんどの運河の閘門(こうもん)で使用されています。
その設計はシンプルですが、完璧な防水門をつくりあげます。
さっそく以下に、マイターロックの何が素晴らしいのか、その構造をもとに紹介します。
マイターロックの防水機能の仕組み
パナマ運河の閘門の仕組みは、元祖ダヴィンチモデルの進化版です。
マイターロックによって、門は水の圧力で自動的に防水機能が形成されます。
ダ・ヴィンチ以前の人々は、重力に逆らって機能する重くて非効率的な閘門を使用していました。
では、流れる川に2つのV字型のダ・ヴィンチ流木製の門を設置したとしましょう。
これが開いた状態です。
何が起こると思いますか?
流れる水に押されて門は自動的に閉まります。
さて、ここで門の角度のついた端が、閉まった後にどのようになっているかに注目してください。
このきれいなV字型の接続部は、門が閉まった後にさらに別の目的として機能します。
みなさん、右側の水位は上昇し、反対側の水量が減っていくのが分かりますか?
最初は隙間から水が少しずつ漏れてはいましたが、水位が上昇するにつれて門にかかる圧力が高まり、門同士が押し合ってゲートの接続部をしっかりと密閉します。
これで、接続部から水が漏れることはなくなります。
これは、防水機能をもつ接合部を実現するための完璧で簡単なメカニズムです。
門の開き方
マイターロックを採用した門は、自動的に完璧な防水ロックを形成することは分かりましたが、では今度はどのように開くのでしょうか。
門が閉じた状態では、水圧が大きすぎて両側から大人3 ~ 4人が押してもびくともしません。
しかし、マイターロックの秘密は下側にあります。
扉のバルブを開くだけで、開いた扉から水が流れ出し、両側の水位が均一になるころには、1人でも簡単にゲートを開けることができるようになります。
ただしここで、ボートが通過する間にまた門が閉まり始めてはいけないので、開けたままにしておく工夫が必要となります。
ゲートの角度が水の流れを妨げなければ、ゲートは自動的に閉じません。
ボートが通過すると、作業員が門を引いて少し角度を付けると、その後は水の力によって、自動的に防水ロックが形成される仕組みです。
パナマ運河のマイターロック
パナマ運河の水門の扉は、最大730トンの重量があります。
このような巨大な水門を操作するために、強力な電動機構が設置されました。
まず、支柱の鋼鉄製アームを水門と巨大な電動機に接続することで、モーターの力で駆動し、トルク(ねじりの強さ)を増幅。
このブルホイールの回転運動により、水門の扉が完璧に開閉します。
実際、このギアシステムは844年間パナマ水門の操作を支えてきました。
その後、水門は油圧シリンダーに置き換えられ、よりシンプルで効率的な水門に。
重たい水門を支える接合部への負担を軽くする工夫
アメリカのエンジニアが直面したもう1つの大きな課題は、これらの鋼鉄製水門の膨大な重量でした。
さて、この貧弱なヒンジ(接合部分)を見てください。
これでは、マイター水門の重い重量に長期間耐えることは困難です。
そこで考えられた効率的な解決策は、水門の中を空洞構造に設計することでした。
水門は常に水中に浸かっているため、この中空構造によって浮力が生成され、ヒンジにかかる力が軽減される仕組みです。この改善策で、ヒンジが早期に故障するのを防ぐことができました。
水漏れを防ぐ工夫
たしかにマイターロックのデザイン自体は、門の扉の隙間からの水漏れをうまく防ぐことはできます。
しかし、地面と扉の間の水漏れはどうでしょうか。
実は、ダヴィンチはこの問題の解決策もすでに考えていました。
まず、扉の反対側に段差を設けます。
門が閉まるにつれて、水の圧力で押され段差と扉の隙間はなくなり、扉の底部からの漏れはほとんどなくなります。
パナマ運河の閘門の端が狭い理由も同様で、水の圧力が加わることで、先端の隙間を埋める圧力が向上し、接合部の防水機能が強化されるというわけです。
パナマ運河にも採用されたダ・ヴィンチのマイターロックについての仕組みは以下の動画で見ることができます。