「パナマ運河」で分かる工学技術の驚異

パナマ運河が必要だった理由建築・構造

パナマ運河がなければ、毎年1万3000隻以上もの船が、20,000km余分に航行しなければなりませんでした。

パナマ運河の土木工学の驚異は、通過する船を約20 メートル持ち上げ、運河を安全に通過させます。

そして、このスマートな運河閘門(こうもん)システムを実現したのがアメリカのエンジニアによる数々の発明品です。

以下に、パナマ運河の驚異的なプロジェクトをエンジニアたちが問題解決しながら成功に導いた軌跡を運河の仕組みとともに紹介します。

実のところ、パナマ運河の地域で干ばつが起こと、船が通れなくなる可能性があることをみなさんはご存知でしょうか。

パナマ運河の建設を支えた脅威の発明品

パナマ運河の閘門システムは、100年前のアメリカ人による発明によって実現しました。

最初の立役者は、蒸気機関車で動かされた巨大なT型クレーン。

Tクレーン

蒸気エンジンで、コンクリートを入れたバケツを持ち上げたケーブル滑車は、手動で材料を輸送するよりもはるかに速く物資を目的地に運びました。

ではそもそもなぜこの運河プロジェクトがそれほど重要だったのでしょうか?

パナマ運河によって、大西洋と太平洋が水でつながれば、船は20,000キロメートルにおよぶ移動距離を削減できます。これは本当に快挙です。

パナマ運河が必要だった理由

1892 年、フランス人は、パナマ運河の土を掘り起こして、太平洋と大西洋を繋ごうと試みましたが、土砂崩れ、集中豪雨、伝染病などのために失敗。

崩れた土砂の除去には8年近くかかり、約22,000人が命を落とし、プロジェクトは最終的に中止されました。

次に、アメリカ人が素晴らしいアイデアを思いつきました。

土を完全に掘るのではなく、巨大な山の一部を取り除いて、土地全体を水で満たす方法です。

それは、パナマ共和国全土を水浸しにすることなく、わずかな幅だけを水で満たす方法でした。

パナマ運河の仕組み

物体が水に浮く原理を利用すれば、水位を上げるだけで船を持ち上げることができます。

パナマ運河の仕組み

このトリックを実行するために、まずパナマ運河の入り口に3つのゲートを設置し、ゲートの開け閉めによって、船は楽に上昇した水上プラットフォームに入ることができるようになります。

出口にも3つのゲートを設置し、同じ水位調整テクニックを正反対の順序で実行し、段階的に海面まで水位を下げる仕組みです。

運河の仕組み2

運河の仕組み3

水が失われる心配

ここで疑問がわきます。水位を調節するために海へ水を放出する場合、チャグレス川をせき止めた人工湖「ガトゥン湖」の水は失われてしまうのではないでしょうか?

これに対しては、チャグラス川域に十分な雨が降る限り、各船の通過中に発生する水の損失は補えます。

川

しかし、2019年にパナマ運河には実際に恐ろしい干ばつが起きました。

干ばつによりパナマの水位が低くなりすぎたため、一部の荷送人は安全に水路を航行するために貨物の量を制限せざるを得なかったのです。

ただし、翌年には、十分な降雨量があり、運河は再び機能を取り戻すことができます。

人造湖はどのようにつくられたのか?

まず、運河建設には、ダムを建設する必要がありました。

チャグラス川からの水流はダム地域内に蓄積されます。新しく形成された水域はガトゥン湖と呼ばれ、最大の人造湖の1つです。

ダムの建設

しかし、ダムを建設すると、国土のほぼ3分の2が浸水してしまい、水面上に残っているのはごく一部となってしまいます。

そのため、アメリカのエンジニアは、ダムと海をつなぐためにこの15キロメートルの高い山々を撤去することに決めました。

谷を削る計画

山を切り開いた発明品

山を切り開くために、トラックシフター、土砂散布機、アンローダーとして知られるこれらの巨大な機械が発明されました。

なかでもパナマ運河建設機械の王様は、蒸気ショベルでしょう。一回で2トンもの土砂をすくい上げることができます。

蒸気ショベル

蒸気ショベル

ここでは、目を見張る画期的な仕組みが採用されています。持ち上げられた土砂のバケツは、底を引くことで簡単にピンポイントで廃棄できる仕組みです。

底が開くショベル

70台におよぶ蒸気ショベルが使用されましたが、これらの巨大な機械でさえ、パナマの岩だらけの地形には苦労したため、行く手をはばむような大きな岩を粉砕するためにダイナマイトが使用されました。

ショベルの働き

瓦礫を線路の横に落とす機械

取り除かれた土砂は、線路で投棄場所まで移動しますが、ここでも画期的なアイデアが採用されます。

瓦礫の除去

線路の脇に、何トンもの岩石を落とすために考えられたのが、先に角度がついた前方の部品によって、土砂をすべて一方向に落とすことができます。

先端の仕組み

線路の脇の岩石を平らにする機械

機械

こうして線路脇に積み上げられた土砂は、素晴らしい発明品である土散布機によって平らにされます。

土散布機の両脇には、3メートルから4メートル伸びる鋼鉄の翼があり、翼が土を押しのけて土砂の山を平らにしていきます。

線路の脇を平らに

線路を移動させる機械

発明品

土砂が平らになると、エンジニアたちは、線路を新たに生まれた平らな土地に移動するための別の天才的な機械を発明しました。

機関車で駆動する小型で便利なトラックシフターです。

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作業員が、線路をトラックシフターにつなげると、クレーンが線路を持ち上げて、横に移動させることができます。

線路がこのように曲がるのは、特殊で柔軟なスチールレールを採用しているためです。

この機械のおかげで、約500人の作業員が苦労して線路を分解して再構築する作業を省き、線路の大部分を移動できるようになったため、米国政府は数百万ドルを節約したと推定されています。

世界中の土木技術者に大きな工学的教訓となった「クレブラカット」

クレブラカット

パナマ運河を切り開く人工の谷「クレブラカット」は、当初予想を大幅に上回るほぼ3倍の土を取り除く必要がありました。

その理由は地滑りでした。

地滑りが起こりにくくなる土の傾斜が、クレブラ地域ではとても低かったのです。

ガンボア堤防の爆破

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最後に立ちはだかる難題、ガンボア堤防にはダイナマイトが使われました。

1913年10月10日、第28代アメリカ大統領トーマス・ウッドロー・ウィルソンがボタンを押すと、6,000キロ離れたパナマのガンボア堤防にある 7,000キロのダイナマイトに信号が送信されました。

技術者は、大統領の信号をパナマに転送するために、主に海底に大規模な電気ケーブルネットワークを準備していました。

ネットワーク

ボタンを押した後、信号が目的地に到達するまでに4秒かかり、火花と大爆発が発生。ガンボア堤防に約1.8kmの隙間ができたのです。

大西洋と太平洋が初めて出会った瞬間で、世界中がこれまでに学んだ工学技術のなかでも一際輝いた歴史的瞬間でした。

パナマ運河の素晴らしい技術については以下の動画で確認できます。

The Engineering Marvel called Panama Canal

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