ヒトの目の色素はみんな茶色。青い目は空が青いのと同じ原理で青く見えるだけだった

2019年5月28日

ウィリアム・シェイクスピアは、目を「心の窓(鏡)」と呼びます。

ヒトの瞳(虹彩)には、茶色や青、ヘーゼル、グリーンなどさまざまな色があります。まるで小さな銀河のように大きさや模様もたくさんあり、指紋と同じように人によって目は全て異なります。

実のところ、青い目が誕生したのは一万年前のことで、それ以前は存在しなかったといわれています。

それでは、これらの目の色は、いったいどこから来たのでしょうか?

ここでは、科学的な視点で、目の色の不思議について考えていきます。

驚くかもしれませんが、青や緑の目をした人もみな色素の色は黒や茶色の目と同じで、ただ色素の割合が異なるだけだったのです。それは、空が青く見えるのと同じ原理で、ただ青い目に見えているのです。

目にある色素はみな同じ「茶色」のみ

あなたの瞳の色は何色ですか?

人類学者は世界規模で、人々の目の色を分類しようとしました。

まず、眼球の前側で瞳孔(黒目)を丸く囲んでいる色付きの部分は、「虹彩(こうさい)」と呼ばれます。

英語読みでは「アイリス」。ギリシャ神話の虹の女神イーリス(イリス、)にちなんで名付けられていますが、驚いたことに、この万華鏡のような色は、実際には1色だけで作られています。

1色しかないはずが、ヘーゼルや青、グリーンにみえるのは、すべて物理的なトリックによるものです。

目の色が違ってみえる物理学的トリックとは

虹彩には、メラニンと呼ばれる色素をもつ細胞があり、虹彩の中心には、メラニンが濃く密集している瞳孔があります。

実際に自分の目(虹彩)を取り出して、色素分子の色を確かめることはできませんが、ヒトには茶系の色調しかないといわれています。

哺乳類が作り出せる色素「メラニン」については、以前に「私たち哺乳類はなぜ鳥やトカゲのようにカラフルではないのか?」や「なぜ白髪に早くなる人がいるのか?」で詳しく紹介しましたが、青い色のメラニンは存在しないのです。

一般的に私たちが「目の色」と呼んでいる瞳の色は、主に虹彩のストロマにあるメラニン色素とその密度で決まります。

仮にあなたの目が茶色なら、虹彩には色素がたくさんある(高密度)ことを意味します。

一方で、青やグレーなら、虹彩の色素はそれほど多くはありません。グリーンやヘーゼルなどその他の目に含まれる色素量はその間となります。

それでは、青い色素がないにもかかわらず、なぜ目が青く見える人がいるのでしょうか?

それについては、簡単な実験で考えてみましょう。

青い目に見えるのは空が青いのと同じ理由

水槽に水を入れて、光を照らすと、光のビーム(筋)はほとんど見えません。

しかし、この水に牛乳を少し入れて横から見ると、光のビームが濁って見えるようになり、ほのかに青みがかった色合いになります。

これは、「チンダル現象」と呼ばれ、身近なところでは、雲の隙間から太陽の光が差すときに見える光の線(通路)があります。

この水を濁らせている牛乳の小さな粒子は、青い目の中に広がるメラニン色素と同じで、実際には青色ではありません。しかし、光が、水中の小さな粒子とぶつかることで、(赤い光は吸収され)より短い波長の光「青」があちこちに散乱されるために、青っぽく見えているのです。

濁った水槽の水が青く見えるのも、空が青なのも同じ理由です。

空の場合、赤やだいだい、黄、緑、青、藍、紫といった波長の異なる光をいくつももった太陽光が、大気中にある塵や水滴ではなく、光よりももっと小さな酸素分子や窒素分子といった空気の分子にぶつかって散乱しすることで青く見えます

これは、レイリー散乱と呼ばれ(光の波長と同じ程度の大きさの粒子の場合はミー散乱と呼ばれる)、長い波長をもつ赤い光よりも、短い波長をもつ青や紫の光ほど散乱されやすい性質をもつために起こります。加えて私たちの目は、光のスペクトルでは端よりも中心よりの光をとらえやすいために、紫よりも青色に見えるというわけです。

ちなみに、夕焼け空が赤いのは、真上より斜めの角度から入る太陽光の方が空気中を長く通過するため、レイリー散乱によって青色は散って弱くなり、残った赤色の光が目に届くためです。

では、この仕組みを目にあてはめて考えてみましょう。

青い目に見える理由

青い目をもつ人は、目の中に浮遊している茶系のメラニンが少ないために、赤い光のみが虹彩に吸収されて、目に入った青い光はチンダル現象の散乱効果によって外に向けて跳ね返されて青く見えます。

緑色をした人は、この青い色にフェオメラニンの黄色が混ざって緑色に見えるなど、その他にもその人のもつメラニン色素の割合やチンダル現象を妨げるコラーゲンの存在なども瞳の色を決める要素のひとつになっているようです。

特にメラニン色素が少ない人は、瞳孔の筋収縮や日光の照射率などによって目の色が変化することもよくあります。

一方で、メラニン色素が高濃度に含まれる目ほど、この色素分子がほとんどの光を吸収するために、茶色になります。虹彩のメラニンの密度は、瞳がどれほどの光を吸収できるかを決定しているのです。

つまり、緑色や青色、灰色のような明るい色の目は、緑色や青色、灰色の色素をもつのではなく、ただ光を吸収できる茶色のメラニンが少ないだけだったのです。

青い目は10000年以上前まで存在しなかった

世界では茶色の瞳が優勢です。

研究がすすむにつれて、青い目は、もともと存在せず、ヨーロッパで6000年前に突然変異として現れたか、もっと昔の10000年前にアフリカで生まれた可能性があると考えられるようになりました。

そもそもメラニン色素は、太陽の有害な紫外線から細胞を守るためにメラニン細胞によってつくられるため、日光の照射率が低いヨーロッパ北部において、遺伝子にメラニン色素の生成量が少なくなってきたのかもしれません。

一般的に、ブルーや緑色の目は、虹彩に色素が少ないために遮光性が弱く、茶色の目の人よりも光を眩しく感じやすいため、サングラスで目を保護することがよくあります。

それでは、目の色はどのように受け継がれているのでしょうか?

目の色は遺伝する

目の色を決めるのは、両親から受け継がれたDNAにある遺伝子です。

今までに、「茶色の目は青い目よりも遺伝的に優勢」や「青い目の両親から茶色の目の子供は生まれない」といった話を聞いたことがあるかもしれませんが、それらは全て誤りです。

目の色についての過去の遺伝学のほとんどは1800年代まで遡り、エンドウ豆からメンデルの法則を導き出したグレゴール・メンデルの考えからきています。

しかし、研究がすすむにつれて、私たちの目の色に関する遺伝子の形質は相互に作用するいくつかの遺伝子によって決まるため、メンデルの法則が必ずしも当てはまらないことが分かってきました。

たとえば、私たちがもつOCA2という遺伝子は、どれだけの色素細胞が作られるかを決定付ける大きな要素のひとつで、青色か茶色かを決める75%近くの影響力をもつといわれています。

しかし、他のHERC2と呼ばれる遺伝子は、OCA2の形式を変えて、遺伝子に干渉するため(触媒)、その影響で茶色の目の特性をもっていたとしてももっと明るい色になってしまう可能性があります。

目の色に影響を与える遺伝子はこの2つだけにとどまりません。ASIP、IRF4、SLC24A4、SLC24A5、SLC45A2、TPCN2、TYR、TYRP1など、少なくとも10以上もの遺伝子があると考えられています。

最後に

目の色は、身長や頭脳を決めるのと同じ遺伝的交響曲のようなもので、さまざまな遺伝子が相互に影響しあって決定されます。

目は、茶色から青、そしてその間にあるさまざまな色合いで構成されたもので、目の色を一言で表現することはできません。しかし、あなたの目の色は、あなたにとって最も美しく唯一無二なものであることは確かです。

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