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電子レンジでは凍った物は温めにくい理由

電子レンジの特性ものの仕組み・エンジニア

電子レンジは、オーブンやトースターといった加熱家電とはまったく違う方法で調理するため、予想外のことが起こります。

実際の熱を発することなく食品を温めるその特別な仕組みは、食品を脱水しやすい反面、凍ったものの加熱食材を均等に加熱することが苦手であるがゆえに、食品をしおれさせてしまうことも。

以下に、電子レンジの仕組みをもとに、電子レンジの得意なことや苦手なことやその理由をみていきましょう。

電子レンジが食品の水分子に働きかけて温める仕組み

マグネトロン

電子レンジの魔法は「マグネトロン」から始まります。

マグネトロンは電球のようなものですが、目に見える電磁波(光子)のエネルギーを出すのではなく、

マグネトロンと電球の違い

目には見えない「マイクロ波」と呼ばれる長くてエネルギーの小さい電磁波を出します。

マグネトロンの仕組み

これらの電磁波は、金属でできた空洞の箱の中で、跳ね返りながら超高速で往復し、融合してより大きな電磁波になります。

電子レンジの仕組み①

これを49億倍にスピードアップしたものを想像してください。

さて、この中に食品を置いてみましょう。

電子レンジに入れた食品

電磁場が食品内の水分子(プラスに帯電した面とマイナスに帯電した面を持つ)と出会うと、電磁場の電荷が水分子を引き寄せ、分子を整列させます。

電荷が反転すると、分子は反対方向に引っ張られてひっくり返ります。

マイクロ波は水分子だけでなく、塩分や脂肪分など、電荷や帯電部分を持つ食品中の他の分子をもエネルギーレベルが高い状態に変化させることができます。

これらの高いエネルギー状態に変化した分子が1秒間に何十億回もひっくり返されることで、熱が発生するのです。

ここで少しマイクロ波に関する以下のような奇妙なことに気付きます。

温めにムラが出る理由

加熱の仕組み

電子レンジは、基本的に他のあらゆる調理方法とは異なり、実際に熱を発しません

その代わりに、食品中の分子が電子レンジの電磁エネルギーを与えられ、熱に変換します。

この他とは全く異なるプロセスが、電子レンジについて奇妙なことを引き起こしています。

例えば、電子レンジの加熱スピードは尋常ではありません。

一般的に、何かを焼く場合、熱は空気を通って食品に到達し、さらに食品を通過するまでに時間がかかります。

熱するプロセス

しかし電子レンジでは、電磁波が食品の分子と直接相互作用するため、同じジャガイモでも数分で火が通るわけです。

ただし、全ての分子にエネルギーがいきわたるわけではありません。

マイクロ波調理は基本的に不均一なので、エネルギーが食品と相互作用できない場所が生まれてしまいます。

この写真で分かるように、黄色が加熱部位、緑が冷たい部位となります。

電子レンジの加熱ムラ

そのため、電子レンジでは、ターンテーブルを使ったり、途中で食材をかき混ぜたりひっくり返したりすることで、食材を調理する際にこれを均等にすることはできますが、電子レンジの仕組み上、食材を均等に加熱することはできないのです。

電子レンジは凍った食品を温めるのは苦手

電子レンジの特性

さらに、凍っている食品を温めようとした場合、マイクロ波が発するエネルギーでは氷を溶かすことはなかなかできません。

凍った水分子は、互いにぎゅうぎゅうにひっつきあっているため、向きを変えるスペースが十分ではないからです。

凍った部分を温めるには、その周りの部分(電磁場と相互作用できる部分)を十分に熱くし、氷の部分を解凍してマイクロ波が温め始められる準備をするのに時間が必要となります。

加熱にムラができる

しかしその間、既に加熱されている部分は溶岩のようにさらに熱されるでしょう。

その結果、電子レンジで温めた食品を一度に頬張ると、口の中を火傷してしまいます。

食品の食感を変化させる理由

残念なことに、電子レンジは食品の食感にも奇妙な影響を与えています。

たとえば、フライドポテトを電子レンジで加熱した場合、ふにゃふにゃでやわらかくなってしまった経験はありませんか?

オーブンの場合、内部の水分は温められると、表面から自然に蒸発しますが、電子レンジではそうはいきません。

表面温度が部分的に低い部分があるため、内部から逃げようとした水分がそこに集まってしふやけてしまうのです。

一方で、内部奥深くの熱によって大量の水分が急速に蒸発するため、外への圧力が高まり、水分がどんどん押し出されて食品の表面が乾燥しやすい面もあります。

食品を脱水しやすい特性

基本的に、電子レンジは水分子を刺激するのが得意なので、常に食品を脱水しやすい特徴があります。

そのため、電子レンジを使用するときは、食品に霧吹きで水を振りかけたり、濡らしたペーパータオルをかけたりして水分を追加することで過度な脱水を防ぐとよいでしょう。

実は、電子レンジの「水分を刺激」する特性を有効活用する方法があります。

ハーブを乾燥させたり、ナッツをトーストしたり、フルーツを脱水したり、チーズチップスやケールチップスを作ったり。

これまで電子レンジをただの残飯加熱器としか見ていなかった人にとっては、このヒントは大発見ではないでしょうか?

このような電子レンジの特性や仕組みについては、以下の動画で見ることができます。

The weirdest thing about microwaves
知力空間
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