ものの仕組み・エンジニア

電子レンジはどうやって食品を加熱するのか?電磁波は体にも影響あるのか?

ものの仕組み・エンジニア

電子レンジを使用するとき、周囲の電子機器の接続状況が悪くなることがあります。

そんなときは、電磁波による健康への被害を心配してしまいませんか?

電子レンジは体に害を及ぼすのでしょうか?

以下に、その答えを電子レンジの電磁波の仕組みを中心に分かりやすく紹介します。

結論からいうと、電子レンジから漏れ出る低レベルの電磁波は、体への影響は心配ありませんが、その周波数帯がwifiと同じなので携帯の電波状況などには干渉しやすいようです。

電子レンジは偶然発明された

電子レンジはまるで魔法のように機能します。

驚くかもしれませんが、電子レンジの発明は、偶然の産物でした。

ある日、科学者のパーシー・スペンサーはマグネトロンと呼ばれる装置で実験を行っていました。

電子レンジを偶然発見した人

マグネトロンは強力なマイクロ波を発生させます。

実験中、彼はポケットに入れたキャンディーバーが完全に溶けているのに気づき、マイクロ波を食品の調理に応用することを思いつきました。

実験中にマイクロ波の加熱力に気付く

高出力の移動式マイクロ波には食品を加熱する能力があることが観察されましたが、当然のことながら、ここでキャンディーバーを溶かした電磁波の中に何が入っていたのかという疑問が生じます。

食品を加熱する電磁波とは

加熱調理するマイクロ波

マイクロ波は特定のスペクトルを持つ電磁波であり、他の電磁波と同様に、電界と磁界を振動させています。

マイクロ波

特定の領域で波の振幅を追跡すると、この振動を観察でき、キャンディーバーが溶けた事故のケースで、電磁波の振動電場成分が食品調理する役割を果たしたことがわかります。

では、これらの振動電場がどのように食品を調理するのかを見てみましょう。

水分子が加熱される仕組み

私たちが口にする食品のほとんどにはが含まれています。

水は極性のある分子です。水分子の水素原子は互いに約104度の角度で配置されており、水素原子と酸素原子はどちらも電荷を持っています

水分子には極性がある

そのため、水分子は双極子のように振る舞います。

双極子とは、ある距離を隔てて対になって正負の電荷が配置され、分子内の電荷の偏りがある状態

水分子に電場が加えられると、双極子に生じるトルクによって水分子は回転を始めます。

水分子が回転

電磁波では電場が絶えず振動回転するため、水分子もそれに合わせて振動し続けます。

1秒間に24億回以上振動する波によって、水分子同士は互いにこすれ合って摩擦熱がうまれ、食品を温める仕組みです。

摩擦熱で食品を温める仕組み

では、この発熱の概念を実用的な製品に応用する方法を見てみましょう。

電磁波をどうやって使うのか

電磁波を反射させる

電磁波エネルギーを有効に使用するには、電磁波を何度も再利用する必要があります。

これを効率的に実現する方法は、電磁波を反射させて特定の領域に限定することです。

この反射板を作る最良の方法は金属を使うことです。

金属表面はマイクロ波をその表面で反射させます。さらに反射板を発生源に置くとはね返ったマイクロ波を再び反射させ、反射が継続します。

こうすることで電磁波のエネルギーをある体積の中に閉じ込めることができます。

電磁波の強度を高める方法

ここで、電磁波エネルギーを閉じ込める最も効率的な方法があります。共鳴空洞と呼ばれる技術を使うことです。

この方法は電磁波の強度も増加させます。

共鳴空洞とは何かについては、定常波を使ってみていきましょう。

定常波とは、移動せずにその場にとどまって振動するようにみえる波です。同じ波長、振動数、振幅、速さで進行方向が逆向きの2つの波が互いに重なり合うことによって形成されます。

定常波をつくる方法

では、反対方向に進む2つの電磁波をつくり出す方法を見てみましょう。

それは、電磁波が金属表面でどのように反射されるかを理解すれば明確です。

波が反射体に当たると発生源に戻ることは知られています。

波が反射して戻る

反射波とは、実際には反射体がなければそのまま前方に進んでいた波です。

反射波

マイクロ波の発生源に金属版を置くと、反射して戻った反射波を再び跳ね返すことができ、2つの反射板の間で波は行って帰るプロセスが繰り返されます。

反射波の動き

ただし、ここで反射板の位置を1番目の波と2番目の波の交差点に配置すると、はね返った3番目の波は1番目の波と重なります。

反射板の位置

このように反射板の位置を波長に合わせて調節することで、たくさんの波があちこちに反射するのではなく、反対方向に移動する2つの波だけが見えるようになります。

これが定常波で、これは波の発生源と反射体の距離が半波長の整数倍のときに発生します。

定常波

したがって、電子レンジ内部の寸法はこれらの波の波長によって決まります

さて、ここからが面白い事実です。

電子レンジに加熱ムラが生じる理由

電子レンジでは、定常波のある部分はエネルギー強度が高く、他の部分は強度がゼロであることがわかります。

電子レンジの加熱ムラの原因

このため、電子レンジには冷たい部分と熱い部分が多数存在します。

チーズを使って、キッチンの電子レンジのこれらの冷たい部分と熱い部分を実証することができます。

シュレッドチーズを電子レンジの中に1分間入れるだけです。

電子レンジのホットスポット

1分後、チーズの表面にいくつかの溶けた部分が見えます。

つまり、マイクロ波をより効率的に活用するために使用されるキャビティ共振技術は、冷たい部分と熱い部分をつくる結果につながりました。

加熱ムラを防ぐ工夫

この問題を克服するために、電子レンジは食品を均一に調理するのに役立つ回転皿がついていますが、近年の電子レンジは、庫内の金属板で電磁波を乱反射させたり、底から回転アンテナで放射させたりする工夫がされています。

マグネトロン

マイクロ波を生成する装置はマグネトロンと呼ばれています。

マグネトロンはマイクロ波をあらゆる方向に放射しますが、波が一次元方向に伝播するように導波管に接続されています。

導波管

導波管から放射されたマイクロ波は調理室に入り、食品を加熱します。

加熱できる電磁波はマイクロ波だけか?

では、食品を加熱できる電磁波はマイクロ波だけか、他の波にもその加熱能力はあるのでしょうか?

どのような電磁波でも食品を加熱する能力を持っていますが、一定の限界があります。

波長の長い波は食品を簡単に通過してしまうため、多くのエネルギーを食品に伝えることができません。

波長の長い波の加熱能力

さらに、定常波をつくるには大型の装置が必要になります。

また、波長の短い波は食品の表面で急速に吸収されるため、食品を均一に加熱するのに十分な深さまで浸透しません。

波長の短い波の加熱能力

深部まで加熱したい場合は、はるかに高い出力のソースに切り替える必要がありますが、これはマイクロ波の領域では実現不可能です。

電磁波のなかで、実用上適切で、ライセンスを必要としない周波数は2.45GHzだったのです。

電磁波で最適な波

電子レンジの電磁波の体への影響

電磁波の体への影響

電子レンジから発生する強力なマイクロ波は、直接接触すると人体に危険を及ぼす可能性がありますが、心配はありません。

そもそも電子レンジで発生するマイクロ波は放射線ではなく、食品にも放射性物質が残ることはありません。

正規販売される電子レンジから発生する電磁波は、常に金属の壁で電子レンジ内に閉じ込められ遮断されています。

ただ、wifiも電子レンジと同じ周波数帯2.4GHzを使用するために、電子レンジから漏れ出た(健康には外のない低レベルな)電波と干渉しやすく、影響を受けてしまうことがあります。

したがって、携帯電話や他のwifiの接続が悪くなることはあっても、通常の使用で電子レンジの電磁放射線による健康被害を心配する必要はないようです。

ここで紹介した電子レンジの電磁波については以下の動画で見ることができます。

Microwave Oven | How does it work?
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