電子レンジは、食品の栄養を壊すのか?

2018年7月13日

電子レンジは今世紀の素晴らしい発明品です。

冷凍食品から、残りもののスープまで、さまざまな食べ物をすばやく加熱できる非常に便利な道具。忙しいときには特に頼りになる存在です。

しかし近年、電子レンジは、食品の分子レベルにまで働きかけて、栄養価を損なう可能性があるといわれ、一切使わないという人まで出ています。

果たして、電子レンジを使うと本当に食品の栄養価を落としてしまうのでしょうか?

ここでは、電子レンジが食品の栄養価に与える影響について、最近の研究をもとに電子レンジの加熱の仕組みと合わせて分かりやすく紹介します。

電子レンジは食品の栄養価を変えるのか

電子レンジを使わない人の多くが、食品の分子構造の変化を恐れているようです。しかし、実際のところ、栄養価は本当に変わってしまうのでしょうか?

端的にいうと、答えは「イエス」です。

たしかに電子レンジで調理すると、焼いたり、茹でたりするよりも少なくなる栄養素はあります。

しかし、他の調理法も同じように食品の栄養価を変えているのも事実です。

具体例として、下記にオーブンと電子レンジを使用したときの栄養価の違いについて、加熱の仕組みに基づいて比較し、考えていきます。

食べ物がオーブンで焼ける仕組み

オーブンの予熱ボタンを押すと、まず、ワイヤーのコイルが発熱し、そのエネルギーがオーブン内にある空気の分子に移動します。

すると、空気分子が温められたことで元気になり、激しく動き回り始めます。この動きが熱エネルギーとなります。

そこへ、冷凍ピザを置くと、温められた空気分子が食品に衝突して、外側から熱を伝達していくのです。

電子レンジで物を温める仕組み

一方で、電子レンジは、マイクロ波と呼ばれる電磁波(電磁放射線)を発生させて、食品を調理しています。

電磁波とは、電界(電気が働く空間)と磁界(磁気が働く空間)が周期的に変化する波で、水のように「極性」という電気的性質をもつ分子に特に影響を与えます。

極性とは

極性とは、物体を構成している粒子がもつ電気量(電荷)に偏りがあることです。

たとえば、水分子は、水素と酸素からできていますが、酸素の方が電気を引き付ける力が強いために、そのわずかな力の差によって水の分子内でプラスとマイナスの部分が生まれています。

このように分子内で電荷の偏りが生じたまま結合している物質を、極性といいます。

電子レンジの働き

電子レンジに残り物を入れて、この電磁波をあてると、まず食べ物内の水分が、変化する磁場に反応して、整列しながらプラスとマイナスの向きを交互に変え始めます。

電子レンジは、この水分子の動き(振動)によって、熱が発生する仕組みで、水分を含んだ食品は、電磁波を効率的に吸収できるので、加熱しやすくなるのです。

基本的に、電磁波は、食品の端から端まで通過するため、内部の水分子は外部とほぼ同じように振動し、全体が温められていきます。

電子レンジの電磁波は危険なのか?

電子レンジは、主に水分に影響して熱を発生させるだけです。食品以外の庫内の空気の大部分は非極性であるため、電磁波が発生する過程で空気まで変化することはありません。

また、庫内の壁には電磁波を反射する金属があり、外部に電磁波が漏れることがないように備えられています。

電磁波が食品に与える影響

たしかに、食べ物は、炭水化物やタンパク質、ビタミンなどの化合物で、これらの化学物質は、すべて電磁波で処理されると変化します。しかし、他の調理器具に比べても、それほどの違いはないといわれています。

たとえば、熱は、タンパク質を消化しやすいように変化させることができますが、加熱方法によって損傷を受けることがよくあり、その度合いは調理方法によって異なります。

それでは、特に熱の影響を受けやすい栄養「ビタミン」を例に見ていきましょう。

ビタミンに与える影響

電子レンジを使うと、加熱がはるかにはやくできます。それは、熱に敏感なビタミンCには重要なポイントとなります。

ビタミンCは、熱に長時間さらされるとそれだけ損傷が大きくなるため、加熱時間の短縮はビタミンCの損傷を抑えることにつながります。

さらに、ビタミンの中には水に溶けやすいものもあるので、野菜を沸騰させた湯で茹でると、液体にビタミンが溶け出すことは避けられませんが、電子レンジはその流出の問題も回避できます。

栄養価の減少は温め方しだいで決まる

中国のある研究者グループは、さまざまな方法でブロッコリーを調理して、他の栄養素とともにビタミンCの含有量を測定し、2009年に結果を報告しました。

その研究によると、ブロッコリーを茹でるとビタミンCの33%が失われ、炒めると24%、電子レンジでは16%の損失につながりました。

結果的に、ビタミンCのほとんどが失われずに残った調理法は「蒸すこと」で、それが最も効率的な加熱方法であることが分かりました。

しかし、電子レンジも2位であり、ビタミンCの損失はあまり目立たなかったのです。

これらを考えると、台所で最も便利な調理器具である「電子レンジ」もまた、ビタミンCにとっては最良の調理法の1つであるといえるでしょう。