子牛のための乳汁、つまり、私たちの飲む「牛乳」は、牛の血液をろ過したもの。
たしかに、ただ血液をろ過しただけではありませんが、乳汁は血液に由来するものです。
哺乳類の赤ちゃんは、脳と体を成長させるためにたくさんの糖分や脂肪、タンパク質を必要とします。そして、血液にはそれらの栄養素がたくさん含まれています。
しかし、哺乳類の母親は、動脈を開いて血液をそのまま子に与えるのは危険なのでできません。
さらに、赤ちゃんには血液中にある栄養素のほとんどは希薄すぎるし、鉄分も多すぎてほとんど処理できません。
そこでミルクをつくる乳腺の出番です。
ほ乳類のお母さんは、以下のように、赤ちゃんに必要な栄養素を与えるために血液からバクテリアやその他の汚染物質を取り除くためにろ過して調合した「ミルク」をつくるのです。
ミルクをつくる乳腺とは
乳腺は、何千もの小さな袋(小葉)でいっぱいになっています。
そして、その袋の壁には特殊な細胞があり、通過する血液から水分や栄養素を取り込んで化学反応を起こし、それらを袋に渡して、そこで混ざり合ってミルクが生まれます。
まず、赤ちゃんが乳首を吸い始めると、その吸い方のパターンが母親の脳にオキシトシンというホルモンの分泌を促します。
すると、オキシトシンはが付着した袋が収縮し始め、乳汁の小滴を赤ちゃんの口に絞り出させようとするのです。
動物の種によってミルクのレシピは異なる
哺乳類は、それぞれの種によって、赤ちゃんのニーズに合わせた血液ろ過レシピをもっています。
たとえば、北極圏に住むフタイロアザラシの母親は、子アザラシの体脂肪を増やすために、牛のミルクの15倍の脂肪分を含むミルクをつくります。
ワタオウサギの母親は、ウサギの赤ちゃんのために高タンパク質のミルクをつくり、赤ちゃんが跳びはねる筋肉を早く発達させるようにしています。
カンガルー科のダマヤブワラビーは、2種類の異なるミルクをそれぞれの乳頭で同時につくることができます。
一つ目は、袋の中にいる新生児のために糖分の多いミルクを。そして、2つ目のおっぱいからは、よちよち歩きの赤ちゃんのために脂肪とタンパク質の多いミルクをと使い分けてつくれるのです。
飼育下で繁殖された現代の乳牛は、特に奇抜なミルクレシピを持っているわけではありませんが、たくさんのミルクをつくる能力があります。
現在の記録保持者であるアフターショックと名付けられたホルスタイン種の乳牛は、毎日お風呂をいっぱいにするほどのミルク(100L/day)を出すことができます。
乳汁中の栄養物質は血液中のものとは異なる
たしかに、ミルクは血液に由来するものですが、実際に、血清と通常のミルクの成分を比較すると、栄養物質がまったく異なることも研究で明らかにされています。
赤血球は通常の状態で牛乳には入りませんが、白血球は入ることがよくあり、血液中には見られない物質(乳房や管の上皮組織など)が入っていることもあります。
ミルクは血液をただろ過しただけなのかについては、以下の動画で見ることができます。