さて、糖分がコカ・コーラよりも多いミルクを毎食赤ちゃんに飲ませることを想像してみてください。
実はこれは自然界で本当に存在する母乳で、他にも驚くようなミルクを飲んでいる動物の赤ちゃんがいます。
それらは、脂肪分がアイスクリームの4倍もある濃厚なミルク、地球で最も高たんぱくな母乳、カルシウム含有量が世界一の母乳など極めて特徴的なミルクです。
一体どんな動物が、どんな理由で驚きの母乳を赤ちゃんに与えているのでしょうか?以下にみていきましょう。
脂肪分豊富で高カロリーな母乳「ズキンアザラシ」
ズキンアザラシの子供にとっては、ダイエットなんて論外。高カロリーでエネルギー豊富な母乳が当たり前。
ズキンアザラシの母乳には約60%もの脂肪が含まれており、世界で最も脂肪分の多い濃厚なミルクだといわれています。
ちなみに、人や乳牛の乳の脂肪分は約3%から5%程度で、最も濃厚なアイスクリームでさえその脂肪分はわずか16%。
アザラシの子どもは、この母乳を3〜5日間飲み続けるだけで、体重が2倍になるというから驚きの栄養価ですね。
しかし、極端なミルクを飲む動物はアザラシだけではありません。
アザラシが最も脂肪分の多いミルクを飲むとすれば、ダマヤブワラビーは糖分の多い甘いミルクを好みます。
世界一甘い母乳「ダマヤブワラビー」
砂糖の含有量は12%にもなり、コカコーラ1杯分(約10%)よりも多いのです。もちろんこれには理由があります。
ワラビーのような有袋類の赤ちゃんは早産で生まれますが、なかでもこのダマワラビーは0.3gという超未熟児で生まれます。
糖分は脂肪よりも消化しやすいので、彼らのミルクは未発達な赤ちゃんの消化器官にやさしいのです。
さらに、このミルクにはペニシリンよりも強力な抗生物質が含まれており、免疫システムが完全に機能しない状態で生まれてくる赤ちゃんを細菌から守ってくれるといわれています。
タンパク質豊富なパワフル母乳「ツチブタ」
一方、ツチブタの母乳にはあまり糖分が含まれていませんが、その代わりに非常に多くのタンパク質が含まれています。
牛乳のタンパク質が3~4%であるのに対し、ツチブタの母乳には13%以上と、地球上で最も高タンパクなミルクであり、赤ちゃんがわずか3ヶ月で成人体重の30%に達するだけの栄養を与えています。
しかし、ツチブタがかなりパワフルな母乳を出すのに対し、硬い装甲具で覆われたココノオビアルマジロは、彼らならではの特別なミルクを作ることで知られています。
骨を強くするカルシウム豊富な母乳「ココノオアルマジロ」
生後1か月になると、牛乳の10倍ものカルシウムを含むミルクを飲むようになります。
このカルシウムのおかげで、アルマジロにはまるで鎧のように硬い甲羅が形成されるのです。
アルマジロの甲羅は、皮骨と呼ばれる無数の骨がドーム状に組み合わさってでできています。
次は、フラミンゴです。
ピンクのミルク「フラミンゴ」
フラミンゴは他の鳥と同じように、親鳥が雛の口に直接吐いて餌を与えますが、その餌はその日に獲れた魚ではありません。
オスとメスの両方の親鳥がのどの奥の「そのう」という器官でつくる「フラミンゴミルク」と呼ばれるミルクを与えているのです。
このそのう乳と呼ばれるミルクをつくれる鳥は、フラミンゴとペンギンとハトの3種類。
しかし、この3種のなかでもフラミンゴの母乳は特別で、ピンク色をしています。
これは、フラミンゴの鮮やかな色彩を生み出す赤い色素が、ミルクから羽から溶け出しているためです。
さて、脂肪分豊富な高カロリー乳、タンパク質豊富なパワフル乳、カルシウムで骨を強くするミルク、糖分豊富な消化にやさしいミルク、ピンクのミルク、これらはかなりの健康食品のように聞こえます。
しかし、それでも私たちが牛のミルクを選ぶのには理由があり、他の動物よりも搾乳が簡単だからです。