ワニが獲物を食べる時に流す「涙」は、ウソ泣きではなかった

2021年7月29日

英語では、「そら涙」や「泣きマネ」を「crocodile tears(ワニの涙)」と表現されます。

この言葉は、「ワニが獲物を食べる時に自責の念から涙を流す」という逸話からきたもの。

しかし、「自責の念」という部分は確かに迷信ではありますが、フロリダ大学の研究者たちは、ワニが、食べる時に目をうるませるのは生物学的な事実に基づいていることを明らかにしました。

これは、私たちが普段考えているような意味での「泣き」ではありません。

しかし、ワニが泣く生理的な理由を理解する過程で、研究者たちは、動物たちがどのようにして目の潤いを保っているのかを解明しはじめたのです。

今回は、ワニが獲物を食べる時に涙を流す理由について紹介します。

これは、人間のドライアイの治療法を開発するのに役立つかもしれません。

獲物を食べるときにワニが泣くのはなぜか

フロリダ大学の動物学者Kent Vliet氏は、2007年の研究で、ワニが目をうるませる現象について調査しました。

クロコダイル科は、陸上では非常に攻撃的で機敏な動きをするので、研究では、彼らの代わりに同じ顔の構造を持つ近縁種で、小柄な体格のカイマン亜科とアリゲーター亜科に注目しました。

これらの爬虫類は、ワニ農場で乾いた大地で食事をするように訓練されていたことが重要で、水の中にいたのでは、泣いたり、目が潤んだりする様子を観察することはできません。

乾いた陸上で食事をしている様子を観察し、ビデオ撮影することによって、たくさんのことがわかりました。

ワニは食べるときに、涙膜が押し出される

7匹のうち5匹が涙を流しながら食事をしており、中には目が泡だらけになっている動物もいたのです。

これらは、厳密には私たちが意味する悲しみの「涙」ではありません。

つまり、目の周りの腺が新しい液体を作っていたわけではないのです。

むしろ、これは涙の膜が吐き出されているようなもので、副鼻腔を通った空気が、ワニの涙腺から目に流れ込む涙と混ざるのかもしれません。

涙液層、あるいは涙膜と呼ばれる層は、私たちの角膜や結膜に広がって目をいつも覆っている液体の層です。

通常は、目の涙腺から分泌されます。

しかし、この爬虫類では、ムシャムシャと食べているうちに、肺から息を吐くことで、涙の膜が涙管から押し出されます。

涙の泡立ちは、涙に含まれるたんぱく質などの物質によって引き起こされる反応だと考えられています。

爬虫類が目を潤ませるのは、それだけではありません。

爬虫類の涙膜は、人間よりもはるかに効率的なのです。

ワニはまばたきをしなくても涙膜が安定している

人間は、1分間に15回まばたきをしないと涙が目に行き渡りません。

しかし、カイマンは2時間近くもまばたきをしないでいられるのです。

なぜ、このように膜が安定しているのか、完全には解明されていませんが、2020年に発表された論文によると、その原因の少なくとも一部は、涙膜が何からできているかに関係していることがわかりました。

研究者たちは、膜の乾燥に伴って形成される結晶パターンを調べることで、そもそもフィルムの中に何が入っているのかを知ることができたからです。

このパターンは、タンパク質、電解質、粘液などの物質によって形成され、涙の膜には、これらが大量に溶け込んでいます。

しかし、涙の水分が蒸発しても、これらの物質は取り残されます。

タンパク質も粘液も、液体を非常に安定させる働きがあるので、涙液は安定して長時間目にくっついていることができます。

これは、水の中に長時間いる動物にとってはありがたいことです。

また、電解質は、目の潤いを保ち、炎症から保護する働きがあると考えられています。

ワニの涙への理解が人間の目のヒントに

前世紀初頭には、ワニの目にタマネギと塩を擦り込んで、ワニが泣くのは本当かどうかを判断してみることにした科学者がいました。

しかし、彼は、食事中のワニを調べなかったので、ワニは泣くのは偽りだと結論づけたのです。

涙とその仕組みは一般的にはよくわかっていません。

一つだけ確かなことは、ワニに、偽りの悲しみは関係ないということです。

しかし、ワニの涙への理解が深まることは、ワニという動物を全体的に理解することにつながり、さらには、人間の涙についても何らかのヒントになるかもしれません。

爬虫類の極めて安定した涙膜を支える分子やメカニズムが解明されれば、人間のドライアイなどに対する新しい治療法の開発につながる可能性があります。

いずれにせよ涙についての知識を深めることは、研究者の知識向上につながります。

参照元:

Crocodile Tears Are Real