お酒を飲むとアルコール成分で有益な腸内細菌も殺菌されるのか?

2018年1月23日

食料品を扱うための手指の消毒液から、医療用の除菌コットンまで、アルコールは殺菌・消毒を目的に、あらゆるところで使われています。

実は、アルコール飲料(お酒)も例外ではなく、基本的に、微生物を殺すジュースのようなもので、適度な量であれば、中毒や下痢を引き起こす微生物の活動を弱めたり、殺したりするのに役立つ可能性があると考えられています。

しかし一方で、あなたの腸にすむ有益な生き物(腸内細菌)にとってはそれほど素晴らしいものではないようです。

ここでは、アルコール飲料(お酒)が、腸に棲む微生物(腸内細菌)にどのような影響を与えるのかについて、さまざまな研究結果をもとに分かりやすく紹介します。

アルコールがもつ殺菌作用

「アルコールが微生物を殺すこと」は何世紀にもわたって知られてきたことで、ギリシャの医師Galenは、紀元前150年にワインを使って剣による傷を消毒していたという記録も残されています。

実は、ビールとワインに含まれるエタノールも、アルコールの一種にすぎず、化学的にいうと、アルコールは、炭素のくさりの周りに、酸素や水素が結合したヒドロキシル基を少なくともひとつはもつ化合物のことを意味します。

アルコールのなかでも、皮膚や医療用具の消毒に用いられるイソプロパノール消毒液(70%)のような高濃度のアルコール は、細菌やウィルスの細胞膜を溶かして殺すことができます。

体内でのお酒の殺菌効果

しかし、ショットグラスに注がれたウォッカは、ストレートでもエタノール成分は約40%にすぎず、グラスワインの平均は12%、ビールに関しては5%程度しかありません。

これらのアルコール飲料は、細胞膜を壊せる濃度を下回ってはいますが、実際にその多くが細菌やウイルスを殺す可能性があると考えられています。

なぜなら、エタノールの濃度が低くても、ウィルスや細菌の細胞膜は、不安定になることや、細菌やウィルス細胞の重要なパーツにダメージを与える活性酸素代謝物の産生を促進することなどが分かってきたからです。

胃腸の有害な微生物へお酒の影響

ある研究では、ビールとワインには、コレラを引き起こす病原菌が、胃腸から細胞内に侵入して下痢症状を引き起こす前に取り去る作用があることを示す証拠が発表されました。

それは、キャプテン・ジャック・スパロウといった海賊に限らず、長い航海では、汚染された水よりも、ラム酒やビールを飲む方が安全だったことから、お酒が船の上での主要な飲み物として普及した理由のひとつでもあります。

お酒は、コレラ菌を殺すだけではなく、研究によると、特にワインに、サルモネラ菌やノロウイルスのような食中毒を引き起こす厄介な微生物を殺す可能性があることが分かってきました。

実際に、ワインや10%以上のアルコール飲料を飲んだ80人の人々が、牡蠣を介したA型肝炎(肝臓病を引き起こす恐れのある疾患)への感染を防げたことを示す研究もあります。

有益な腸内細菌へお酒の影響

もちろん、私たちは今、体内に有益な微生物(腸内細菌など)が生息していることも知っています。

そして、幸いにも、それらの有益な微生物の多くは、胃ではなく結腸で生育しているため、テキーラを飲んでも殺されにくいのです。

なぜなら、お酒は、胃で胃酸と混ざり合って、腸の上部を通るまでにほとんどのアルコール成分がすでに吸収されているため、腸の下部には影響が及びにくいというわけです。

ワインが体に与える影響

毎晩飲むグラス1杯のワインが、腸の下部によい影響をもたらすと考えている科学者は多くいます。

ワインに含まれるポリフェノールと呼ばれる非アルコール性化合物が、腸内の有益な微生物の栄養分となり、代謝物をより小さな分子に分解する助けとなるのです。

また、いくつかの科学者は、ポリフェノールの分子がクロストリジウム属のような病原菌の細胞膜と結合し、それらを殺すことができると考えています。

それどころか、あなたの健康を増進する可能性さえあるというのです。

ワインを習慣的に飲む人が、心疾患の発症率が低いのは、ポリフェノールがもたらす副産物のおかげであることを示唆する研究や、肥満によって引き起こされる代謝問題の解消にポリフェノールが役立つかもしれないことを発見した研究もあります。

かといって、飲みすぎるのは待ってください。

上記のようなワインがもたらすであろうメリットは、まだ確実なものではなく、毎日1、2杯程度の適度な飲酒に限られたものであることを忘れないでください。短時間での大量飲酒やアルコール依存症とはまったく違う話です。

飲酒量の注意点

例えば、2001年に公表されて注目を集めた研究では、少量のお酒を習慣的に飲む人は、重度の胃潰瘍を引き起こす細菌として知られるヘリコバクター・ピロリへの感染リスクを軽減すると示されています。

しかし、研究者は、アルコール消費量が増加して、ある時点を越える(個人差はある)と、かえって感染の可能性が高まることから、それ以上の飲酒は、良くないと判断しました。

事実、飲酒時間や期間にかかわらず、大量飲酒によって腸の上部には、細菌が大量に繁殖する傾向が高いことが分かっています。

それは、大量のアルコールが、腸の動きを鈍らせていき、それが有益な細菌に害を与え、有害な微生物が繁殖する時間と空間を与える可能性につながるからだと科学者は考えています。

大量飲酒がもたらす深刻な問題

アルコールは、あなたの腸や胃を覆う細胞の遺伝子を乱す可能性があり、長期間乱用の結果、胃酸過多や、逆に胃酸をほとんど生成しなくなる症状を引き起こす恐れがあります。

これは、私たちの体にとってよくありません。なぜなら、胃酸は、病気を引き起こす細菌に対する最も効果的な体の防御システムの1つであるからです。また、慢性的なアルコールの乱用は、免疫系を傷つけていくため、病原体に脆弱になります。

さらに、大量飲酒は、肝機能を弱めていくだけでなく、胃を破壊して、胃壁に無数の穴を開けていき、そこから細菌の毒素を流出させることもあります。

以上のことから、夕食での一杯の赤ワインは、食中毒を引き起こす毒素に抵抗する一助となるかもしれませんが、ある時点を越えて飲み過ぎると、健康を害する大きな要因となっていくでしょう。