もしあなたがハエの目を持ったら、世界はどのように見え、生活はどのように変わるのでしょうか?
あなたは、4500ものレンズで360度、真後ろまで見ることができますが、視界はぼやけ、もはや好きな色を楽しめなくなります。
ハエの目では、色合いや彩度を区別するのが難しいので、相手の動きと背景とのコントラストに頼った見え方になるのです。
ちなみに、同じ複眼でもミツバチの複眼なら、人間よりも色が良く見えます。
今回は、もしハエの目で世界を見たら世界はどう変わるのか、ハエの目の特徴をもとに詳しくみていきましょう。
人間とハエの目の構造の違い
ハエの目からは、私たちとは見えるものがまったく違います。
人間の目はカメラのような構造をしています。
それぞれの目が取り入れる光の量を調節する虹彩、画像を形成するレンズ、そしてその画像を検出する網膜があります。
一方で、ハエには2つの複眼があります。
複眼とは、小さな目がたくさんあるようなもので、さまざまな方向からの動きを見ることができます。
ハエの複眼は、それぞれ六角形の4,500枚ものレンズで構成されています。
そう聞くと、信じられないような光学的能力を備えているように思うかもしれませんいが、実際にはそれぞれの目はそれほどよく見えていません。
360度の視野
しかし、それらを組み合わせることで、ほぼ360度、周囲を見渡すことができるのです。
これからは、後ろから忍び寄る気配にビクビクする必要はなくなるでしょう。
視界はぼやける
しかし、このセキュリティー・システムには代償が伴います。
すべてがぼやけてしまうのです。
ハエの複眼には、ピントを合わせるためにレンズを通して入ってくる光の量をコントロールしてくれる瞳孔がありません。
また、これまでのように色を見ることもできなくなります。
色の識別が難しい
ハエには2つのセンサー細胞しかないため、色を区別するのが難しく、色合いや色相、色の鮮やかさの違いを見ることができません。
つまり、ハエの目では、赤という色は絵から消えてしまのです。
実のところ、色がよく見える複眼を持つ昆虫もいます。
たとえばミツバチです。
ミツバチは人間よりも色がよく見えます。
花を見分けることがミツバチの生存に不可欠であることを考えれば、これは理にかなっているのです。
小さな物体の動きを検出する能力
さて、ハエには「ラブスポット」と呼ばれるオス特有の目の領域があることをご存知ですか?
もしオスのハエの目を手に入れたとしたら、いわゆるラブスポットも手に入れることになります。
この領域は、オスがメスを追いかけるために進化したと考えられており、メスのハエの速い動きをより的確に察知できるようになっています。
小さな物体を検出する能力に優れ、狭い領域でのターゲットの動きに高度に特化して検出できるようになっているのです。
実は、このラブスポットによって、オスは、メスよりも視覚信号を処理する能力が最大で60%向上するといわれます。
一日中頭を動かしてデートの相手を探すなんて、少し大変そうではありますが、ハエには便利な能力のようです。