なぜ松ぼっくりは開いたり、(水に濡れると)しぼんだりするのか、その仕組みについて分かりやすく紹介します。
どうやらこの不思議な現象は、植物が子孫を残すための優秀な生存戦略のひとつだったようです。
子供が散歩から固く閉じた松ぼっくりを持って帰りました。
家に置いておくと不思議なことに、いつのまにか開いているではありませんか。
いったい松ぼっくりに何が起こったの?どうなってるの?
松ぼっくりとは?何のためにあるの?
松ぼっくりが開くと、魚のうろこに似た鱗片(りんぺん)の根本に、何かが埋もれているのが見えます。
これが松の種子で、ズバリ、松ぼっくりが開いたりしぼんだりする理由。
松ぼっくりは、針葉樹の松が、子孫を残すための種子を包み込んで守る果実「球果(きゅうか)」だったのです。
植物が育つには、光と水が必要なため、種はそれらが十分に確保できる場所を見つけて旅をする必要があります。
親の木の根元では、光も水も大きな木に遮られて十分に得られにくくなるからです。
そこで、松ぼっくりの種子は、できるだけ遠くへ旅する方法をとります。
それは、晴れて乾燥した日に、松ぼっくりから飛び出して、風に運んでもらう方法です。
松の種子と松ぼっくりの役割
松ぼっくりの中に埋もれている種を見たことがありますか?
翼(よく)と呼ばれるプロペラの根本に種子がついています。
よく見ると、翼の形は、どことなくヨットの帆や凧揚げの形に似ていますね。
この風の影響を受けやすい形状のおかげで、プロペラの部分が、風に乗ってくるくる回りながら飛び、遠く離れた新天地に着地できるのです。
仮に雨でこのプロペラが濡れてしまうと、種は重くなって遠くまで飛ぶことができなくなってしまいます。
そのため、松ぼっくりは、雨が降ると固く閉じて、乾燥した晴れの日が訪れると再び開いて、種を遠くに運ぶ仕組みだったのです。
松ぼっくりで実験しよう
それでは、実際に2個の松ぼっくりで実験してみましょう。
1つの松ぼっくりはテーブルの上にそのまま置き、もう一つは水を入れたグラスの中に入れます。
しばらく待つとどうなりましたか?
乾燥した松ぼっくりは開いたままですが、水で濡れた松ぼっくりだけが閉じます。
このようにして、周囲の湿気(水分)に反応しながら松ぼっくりは鱗片を開閉することで中に入っている種を守っているのです。
松ぼっくりは種を守り、子孫を残すためにある
松ぼっくりは針葉樹がつくる果物「球果」。春になって風に飛ばされた花粉が、枝の先についた雌花について受粉した後、約2年かけて松ぼっくりになります。
そして、よく晴れた秋空の元、松ぼっくりは開いて種子を飛ばし、その後地面に落ちるのです。
松の種類によっては、鱗片が開くことなく地面に落ち、そのまま新天地まで小動物や鳥に運んでもらう種や山火事を利用して種子を散布する種もあります。
身近な松ぼっくりにこれほどユニークなメカニズムが隠されていたなんて驚きですね。
湿度によって松ぼっくりが開閉する仕組みは、建物の湿度を自動調整したり、服の繊維をはじめ、農業や産業など新しいテクノロジーに応用され始めています。