フグには肋骨や骨盤はありません。
水を送り込むという防衛能力を進化させるために、特殊な筋肉(口や食道、お腹)を発達させ、一方で、胃は消化能力を失いました。
お腹を膨らませたフグは、風船のように制御不能な状態で水中を浮遊しているように見えますが、彼らの生存戦略を見ていくと、その脅威に驚かされるでしょう。
今回は、フグが敵から身を守るために身に着けた恐ろしい体の機能について紹介します。
フグはどうやってお腹を膨らませているのか
ハリセンボンのような一部のフグにおいては、まさにボールのようにまん丸になります。
ブラウン大学の生物学者でフグの専門家であるエリザベス・ブレイナードさんは、フグについて次のようにいいます。
まず、フグはどうやって体を膨らませているか分かりますか?
実は、大量の水を口に含んで胃に送り込んでいるのです。
そして、体が完全に膨らむまで、ポンプのように10回でも15回でもそれを繰り返し、大きく膨れた状態を保ちます。
実は、これにはかなり高度な生物学的技術が必要です。
フグのお腹の構造と仕組み
まずは、胃です。
フグの胃は、アコーディオンのように何重もの小さなひだでできています。
このヒダ構造のおかげで、水が入っても破裂せずに元の大きさの3倍近くまで胃を膨らませることができるのです。
これは、平均的な人間のウエストが3メートルに膨らむようなものです。
しかし、この驚くべき能力には欠点があります。
フグが体を膨らませる機能によるデメリット
フグの胃は、膨らむ能力を得る代わりに、食べ物を消化する機能を失っています。
つまり、腸がすべての仕事をしなければならないのです。
どうやら、フグは、胃の消化能力よりも敵から身を守る防御力の重要性を優先させて進化してきたようです。
フグはただ膨らむだけではない
実のところ、胃が膨らむことは、フグのもつ奇妙な機能のひとつに過ぎません。
フグには他の魚にはない特殊な筋肉もあります。
水分を胃に送り込むためにポンプの役割をする口の筋肉や、胃の中に入った水をとどめておくために排水栓のように塞ぐ食道の筋肉です。
そして、お腹の底には、収縮して水を排出するための特殊な筋肉もあります。
フグの骨は不完全
さらに、もっと奇妙なのは、フグには肋骨や骨盤がないことです。
つまり、フグには基本的な骨がないのです。
これは、フグにとっては良いことです。そうでなければ、骨が膨張の邪魔になるからです。
実際、ブレイナード氏によると、もし、この欠落した骨がなければフグが現在のように進化し、膨らむという防御力をつけることはなかったでしょう。
フグが身を守るために身に着けた脅威の能力
ある研究では、鳥が狩りをする様子を観察しました。
鳥たちは11匹のフグを釣り上げましたが、そのうちの半分近くを落としてしまいました。
フグが膨らみ始めたからです。
しかし、もっと驚いたのは、くちばしが空になった鳥たちは実はラッキーだったという事実。
というのも、フグにはもう1つもっと強力な防御手段があるからです。
フグの体には、テトロドトキシンという猛毒の神経毒が含まれている可能性が高く、その毒性は世界の脊椎動物の中で2番目に強いと言われています。
我々人間は、そのような生き物を実際に食べているのも驚くべきことです。
実際には、日本では、フグは珍味として人気があり、訓練されたシェフだけが調理できるようになっています。