一般的なハチミツの100倍にも相当するものまであるマヌカハニーの人気は、年々高まりつつあり、さらに高価になる可能性があります。
マヌカハニーは、しばしば健康上のメリットを強調して販売されていますが、高価な分本当にその価値はあるのか疑問に思う人も少なくはないでしょう。
ここでは、マヌカハニーが高い理由について、収穫方法や栄養素などの理由をもとに紹介します。
マヌカハニーは、他のハチミツよりも栄養が豊富で、粘度が高いことで知られています。
おそらくあの濃厚なスプーン一杯を口にするだけで、他とは一味違うことが分かるでしょう。
このハチミツは、「マヌカ」と呼ばれる貴重な植物の花の蜜から作られています。純粋なものでは、100グラムあたり日本円にして1万円することもあるほど高価なことでも有名です。
人々は、この高価なハチミツにたくさんの健康的な効果を求めてきましたが、今ではそれに美容効果への期待も加わり、ますます価格は押し上げられているのです。
さて、そもそもマヌカハニーにはそれほどの価値はあるのでしょうか?
ここでは、マヌカハニーがなぜこれほどまで高いのかについて、希少なハチミツの収穫方法や健康効果などをもとに紹介します。
マヌカハニーとは
「マヌカ(Manuka)」とはマオリ語で「癒し」や「復活」の木を意味します。
マオリ族は昔から、葉や樹皮などを薬草として健康のために活用してきました。英語ではTea Treeという呼び方をします。
Tea Treeとはいえ、アロマでよく耳にするティーツリー(フトモモ科コバノブラシノキ属)とはまた違う植物で、マヌカはフトモモ科ネズモドキ属のギョリュウバイ、学名はLeptospermum scopariumとなります。
そして、この野生のマヌカの木をえさとするミツバチが、約6kmにわたって集めたミツから作られたものがマヌカハニーで、世界のハチミツの約1%ほどしかない大変希少なものです。
マヌカハニーの品質管理などを行う「UMFハニー協会」のohn Rawcliffe氏によると、ハチミツが収穫できるのは、2週間から6週間という限られた期間のみで、花が咲くのはたったの12日間程度であるため収穫は難しく、このハチミツを集めるのにヘリコプターが必要になることもあるようです。
実のところ、マヌカの低木は、オーストラリアにもありますが、世界の生産量のほぼすべてを占めているのはニュージーランドです。その輸出額は2億400万ドルに達し、2028年までにはその4倍におよぶ8億ドルに達すると予想されています。
このように、収穫が困難を極める高級ハチミツは、利益を求めた偽物や低品質なものも出回りやすいため、ニュージーランドでは品質基準を設けて検査機関を通じて保護しています。
品質を維持するためのニュージーランドでの取り組み
Feraサイエンスラボのエイドリアン・チャールトン博士は、マヌカハニーの品質基準について次のようにいいます。
マヌカハニーは、一般的に殺菌、抗菌作用が高いことから、感染症予防や消化器系の健康効果が注目されています。
そこで、ラボ(検査機関)ではまず、マヌカハニーの基準において、ジヒドロキシアセトン(DHA)とメチルグリオキサール(MGO)、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の3つの含有化合物をテストすることで、消費者が期待する抗菌特性が含まれているかを確認します。
そして、UVライトを用いて、特定の波長を検出することでマヌカハニーの濃度を調べた後、他の一連の検査が行われています。
マヌカハニーの殺菌、抗菌作用
市販のマヌカハニーには、通常UMF、MGO、NPAといったブランドマークや10+、100+、300+、500+といった数値が特定の化合物の成分濃度を保証する品質マークとしてラベルに記載されています。
たとえば、ニュージーランドのManuka Health New Zealand社が規格した「MGO」マークでは、MGO300と表示された場合、厳密な検査機関で1kgあたり300mgのメチルグリオキサールが含まれていることが確認されたことを意味します。
この数値が高いほど、抗菌作用は高くなります。
NPA(Non-Peroxide Activity)マークの場合は、過酸化水素が除去された後のハチミツに含まれるメチルグリオキサールのレベルに基づいて確立されます。
過酸化水素以外の効果を示すもので、これは抗菌効果をもつハチミツの濃度をよりダイレクトに示しています。
UMFは、殺菌剤として知られるフェノール溶をもとに、その液の何パーセント相当の抗菌成分が含まれているかを示したものです。
ほとんどのハチミツは過酸化水素を生成する化学物質を含んでいるので、バクテリアへの殺菌作用があると信じられています。
しかし、1991年に行われたニュージーランドの調査によると、特定の範囲のハチミツから過酸化水素を取り除くと、バクテリアに対する殺菌能力を維持したのはマヌカハニーだけでした。これは、特定の抗菌特性を持つメチルグリオキサールと現在識別されているユニークな成分の存在によるものです。
この発見に応えて、マヌカハニーの瓶には、過酸化水素が除去された後の効果を示す、ハチミツの殺菌作用に関連するUMF番号を付けて販売され始めました。
マヌカハニーの値段を押し上げている要因
マヌカハニーの価格を吊り上げている理由は、健康効果の他にもあります。
そのひとつが、マヌカハニーの美容製品としての使用です。抗菌性と抗炎症性は、シミやニキビをはじめとする肌トラブルを落ち着かせ、栄養を与える効果があるといわれています。
マヌカハニーにはそれだけの価値があるのか
ハチミツが医薬品として使用されていることに関して、「医療グレードのハチミツ(使用目的が医療現場)」は、創傷治療のために世界中で認可されています。
イギリスのカーディフ大学をはじめ、多くの研究チームによって、一般的なハチミツ、特にマヌカハニーが慢性創傷およびMRSA(抗生物質耐性感染症)に効果的であることが示されています。
ただし、これらの研究対象となるハチミツは、不純物が取り除かれた医療グレードのハチミツであることに注意することが非常に重要です。
家庭において、傷口に直接ハチミツを塗らないでください。
喉の痛み、消化器官、アレルギーへの効果を検証
代わりに喉の痛み、腸や消化器官の問題、さらにはアレルギーに役立てる目的で、ハチミツを購入する人は年々増える傾向があります。
これについて、1981年にマヌカハニーの健康効果の研究を始めたニュージーランド・ワイカト大学の生物学教授であるピーター・モラン博士は、マヌカハニーには、酸逆流や真菌感染症を含む消化器系の病気を和らげるという特有の抗菌特質があることを示しました。
報告によると、免疫システムを高めることに加えて、副鼻腔炎、アレルギー、のどの痛みなどの上気道の問題を緩和し、免疫機能を高めて感染と闘うのに役立つ可能性が高いようです。
しかし、メチルグリオキサールが、口に入れた後に腸内に生きて届くという十分な証拠はなく、実際に体内での効果や上気道の問題を緩和することを示す確固たる証拠は、臨床試験によって裏付けられていません。
まとめ:マヌカハニーの実際の効果とは
とはいえ、グウィネス・パルトロウや米健康情報番組司会者のドクター・オズ、コートニー・カーダシアンのような有名人が、ハチミツに関する健康効果に同意したことを追い風にマヌカハニー人気が衰える兆しは見られません。
スーパーフードとしての人気が高まるにつれて、南半球ではマヌカハニーの命名権、商標登録について、オーストラリアとニュージーランドによる激しい議論が繰り広げられています。
希少で独特な風味をもったマヌカハニーは、販売される前にラボを通過し、厳密に管理された後、他のどのハチミツよりも高値で取引され続けているのです。
その需要の高さゆえに、ニュージーランドでは、残念ながらハチの巣やハチミツが盗まれたり、ハチが毒殺されたりすることもあります。
最後になりましたが、ハチミツを摂取するうえで、栄養士たちが警告している重要事項があります。
1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べるとボツリヌス菌が腸内で繁殖し、その毒素によって乳児ボツリヌス症にかかることがあるので摂取すべきではありません。
また、ハチミツの高グルコース含有量は、潜在的に糖尿病患者にもよくないといわれるため、気になる場合は必ず医師に相談してから取り入れましょう。
参照元:
・Why Mānuka Honey Is So Expensive
・Is Manuka honey worth the money?