おへその中には何があるのか?

2019年7月25日

21世紀への変わり目に、ウィーン工科大学の科学者Georg Steinhauser博士はある問題を抱えていました。

この科学者を魅了し、そして悩ませていた問題は、「なぜ、おへそに糸くずのようなものがたまる人がいるのか?」でした。しかも、おへそのゴマはみんなにありますが、糸がたまるのは男性ばかり。

なんと当時、このおへそにたまるナゾの「糸」の正体を知る科学者は、一人としていなかったのです。

そこから彼は、3年間にわたっておへその中にあるものを研究し続け、今まで明かされなかった内容物の実態を解明しました。

ここでは、分析化学によって分かったおへその興味深い実態について紹介します。どうやらおへそには、正体不明の糸くずやゴマだけでなく、数えきれないほどの細菌や汚れなど、私たちの想像以上のものが潜んでいるようです。

おへその糸くずは、体毛がない人にはない

Georg Steinhauser博士は、おへその中の実態を調べるために、まずは彼自身のおへそにある糸くずを収集することから始めました。

そして、友人へのインタビューの他、彼自身の503もの糸くずのサンプルを3年間にわたって調査した結果、これらの糸くずを集めている犯人を発見したのです。

なんと犯人は、へそ周りにある毛髪「腹毛」

糸くずは、腹毛の鱗状の構造が一種のトゲ状のフックのように働いて、シャツの極細繊維をかき落としたものだったのです。シャツでこすれた繊維は、フェルトのような毛羽に圧縮されながら、おへそに向かって集まっていきます。

これは、おへその糸くずが、主に男性にみられる現象であることを説明しているといえるでしょう。現に、腹毛が濃い男性が毛を剃ると、糸くずは集まらなくなります。しかし、それは、次に毛が生えてくるまでの短い間だけ。

また、オーストラリアで行われた研究では、5000人のサンプルを分析した結果、やや太った中年男性に糸くずが見られる傾向が高いことも分かりました。

おへその糸くずの正体

へそに集まった糸くずサンプルに関する分析化学では、それらがその日に着ていたTシャツの繊維組成と一致することや、窒素と硫黄化合物をわずかに含んでいることが分かりました。

これらの汚染物質は、おそらく汗や死んだ皮膚(垢)からきたものだと考えられ、その他にも皮脂(皮膚分泌物)やタンパク質のような物質が含まれていることもあります。

おへそは、人間の皮膚で唯一発汗しない部位なので、もちろんこの汗はへそ由来のものではありません。

1人のへその中にみられる糸くずの質量は、多くて1.20mgから1.29mg。3年間で最も大きな質量をもつ糸くずには、9.17mgにも及ぶ大きな断片もあったようです。

さらに研究を続けていくと、新しいTシャツやYシャツよりも、古い衣類の方が糸くずが少なく、100回着用したTシャツは、その質量の約0.1%をへそへの糸くずに失うことも計算によって出されました。

これで1つの謎「糸くずの正体」は解決されました。しかし、人間にみられる奇妙な割れ目「おへそ」に存在するのは糸くずだけではありません。

おへそは細菌の繁殖地

誰のおへそにも傷があります。これは、人間につけられる一番最初の傷跡で、医師があなたと母親をつなぐ臍帯を切るときに形成されたもの。そして、その傷の治癒の過程はおへそのでっぱり具合に影響します。

実のところ、でべそよりも全体の90%におよぶへっこんだおへその方が細菌の温床になりやすいようです。

おへその中には、先に述べたような糸くずや死んだ皮膚細胞だけでなく、毛髪やほこり、汚れの塊(俗にいうヘソのゴマ)なども存在し、バクテリアの植民地となっていくわけです。

ある研究では、60人のおへその内容物のサンプルを分析したところ、2,300種以上ものバクテリアが発見され、人は平均して67種の異なる微生物をもつことも分かりました。

おへそに潜む微生物たち

これらの微生物の多くは、おへそ特有のものではなく、鼻やのど、毛髪などでもみられ、なかにはブドウ球菌感染症を引き起こすブドウ球菌のようなものも存在します。

研究によって科学者たちは、以前は海でしか見られないと考えられていたマリモナと呼ばれる菌をはじめ、人間の肌では今までに見られなかった細菌も発見しています。

驚いたことに、シェフがチーズを作るのに使うバクテリアまでもおへその中で発見されたのです。それに興味をもった科学者は、実際にその採取されたバクテリアをペトリ皿で育てて、牛乳を加えてみたところ、数時間後には固まってチーズになったといいます。おそらく、誰ひとりとして「おへそ由来のブリー(チーズ)」なんて食べたくはないかもしれませんが。

しかし、ほとんどの場合、あなたのおへその中の微生物は無害です。研究がすすむにつれて、人間の体に潜むバクテリアは、肌の防御システムを強化する可能性も示されています。

微生物のほとんどは無害だが注意も必要

しかし、コリネバクテリウムのようなおへそで一般的にみられるバクテリアが繁殖したまま放っておくと、そこから不快な臭いがし始めるかもしれません。

コリネバクテリウムと呼ばれる菌は、体臭の原因のひとつで、ワキガなどと同じような刺激臭を引き起こします。

最悪の場合には、ブドウ球菌やレンサ球菌咽頭炎、酵母菌感染を引き起こす微生物などに感染するケースもあります。それらは、おへそにかゆみや赤みなどをもたらし、なんらかの液体を分泌しはじめます。

イースト菌感染症のように、まるでカッテージチーズのようなオフホワイトの物体をおへそに作り出すこともあります。

おへそは、腹部の臓器を守る筋肉や脂肪がなく、防御の薄いところであるがゆえに、これらの感染症には注意が必要です。

一方で、これらの微生物は、へその外側からだけでなく、内側から侵入する可能性もあると考えられています。たとえば、お腹のヘルニアです。

お腹のヘルニア

子宮の中で赤ちゃんは、臍の緒で母親とつながっています。

通常、その開口部は生まれた後に封印されますが、場合によっては、へその下の筋肉が完全に閉じないケースもあります。

それが原因で生後間もない赤ちゃんのおへそが飛び出た状態になる「臍(さい)ヘルニア」は、泣いたり、腹部になんらかの力が加わったりした際に、筋肉の隙間からへそに内臓が滑り落ち、膨らみが生じたものです。

しかし、臍ヘルニアは、米国では新生児の5人に1人の割合で発症しますが、生命を脅かすことはめったになく、成人ではほとんどみられないようです。

最後に

実際には、あなたが週に一度、暖かい石鹸水でおへそをやさしく洗えば、ほとんどのトラブルは避けることができるといわれています。おそらく気になることといったら、少しの糸くずくらいになるでしょう。

しかし、気を付けてください。おへそは、決して無理やりケアしないこと。傷つけないようにやさしく行ってください。

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