冷たいもので歯が「キーン」とする原因を発見

2021年8月11日

夏の太陽が照りつける中、アイスクリームを食べていると、「痛っ」と歯に衝撃が。

その強烈な歯の痛みは、素手で雪玉を作るときの痛みとはわけが違います。

では、歯で感じる冷たさが肌の冷たさよりも痛く感じるのはなぜでしょうか?

実は最近、科学者たちは、その原因となる受容体を発見しました。

今回は、歯で感じる冷たさが肌の冷たさよりも痛く感じる理由について、特に虫歯の人に引き起こされる激痛の原因とあわせて紹介します。

歯と皮膚は冷たさを感じる主な受容体が違う

皮膚が寒さを感じるのは、TRPM8と呼ばれる受容体のおかげです。

TRPM8とは、冷たいときに神経を刺激するように指示する受容体。

しかし、これまでの研究で、TRPM8は、歯の冷えに関してはあまり関わりがないことがわかっています。

そこで科学者たちは、歯が冷たさを感じる仕組みについて仮説を立て始めました。

寒さを感じる受容体は発見されたが、それがどこで働くのかナゾだった

2011年、研究者たちは、TRPC5と呼ばれる寒さを感じる別の受容体が、脳や脊髄の外側の組織に存在することを発見しました。

寒さを感じると、TRPC5を含む細胞膜の孔が開き、そこをイオンが通過することで、脳に「寒い」という信号が送られるのです。

しかし、TRPC5が皮膚では機能していないことを知った科学者たちは戸惑いました。

そこで、TRPC5を持たないマウスを作ってみたところ、やはり寒さを感じていることが分かりました。

そのため、TRPC5が一体どこで寒さを感じているのかは、10年間もナゾのままでした。

10年間もです。

そして、このナゾが解かれたのは、研究室ではなく、なんとランチタイム。

冷たさは歯にある受容体で感じていた

それは、ある日のランチタイム、研究チームの食事中に起こりました。

科学者たちは、見落とされていた体の一部、つまり「歯」の存在に気づいたのです。

そして2021年、研究者たちは、これまで認識されていなかった歯の痛みのセンサーについての発見を発表。

それには、マウスの脳を電極に接続して、顎の骨、歯、歯の神経という無傷のシステムを通して送られる信号が測定されました。

氷のように冷たい溶液を歯に塗ると、TRPC5を持つマウスは、冷たいものを感じたという信号を歯の神経に送りました。

一方、TRPC5を持たない、あるいはTRPC5の受容体をブロックしたマウスは、氷のような温度の環境下でも、弱い信号を送ったり、まったく信号を送らなかったりしたのです。

虫歯が冷たい刺激でしみる理由

さらに、このTRPC5は、健康な歯だけでなく、虫歯のある部分にこそ高頻度に見られることもわかりました。

つまり、虫歯のある人は冷たいものを食べるのが苦手なんですね。

研究者たちは、TRPC5が、主に歯の象牙質を作る細胞にあることを発見しました。

この細胞は、歯のエナメル質のすぐ下にある象牙質という保護組織と、内側の歯髄の間に存在しています。

一般的に、虫歯になると、冷たい刺激に対して敏感に痛みを感じるようになります。

なぜなら、虫歯になると、歯の表面を覆うエナメル質と象牙質に穴が開き、これらの細胞が外部刺激にさらされやすくなるからです。

虫歯があるのに、冷たいものを食べたときは、これらの受容体が直接刺激を受け、それを歯の神経に伝えてしまうのです。

さらに研究者たちは、人間の歯でも調べたところ、歯髄が炎症を起こしている歯では、TRPC5の発現率が高いこともわかりました。

これは、虫歯に対する免疫反応で、歯が皮膚とは違うということを意味しています。

歯と皮膚の寒さや熱に対する感覚は違う

歯は炎症を起こすと寒さに過敏になります。

一方、筋肉や皮膚は炎症を起こすと熱に弱くなる傾向があります。

科学者たちは、この感覚には他の要因があるのではないかと考えており、解明にはさらなる研究が必要なようです。

科学は日々進歩していますが、同時に新たな疑問も生まれ続けています。