最も注目度の高い「共食い」をする生き物

2017年3月 7日

なぜいくつかの両生類は、生まれた後に母親の皮膚を食べ始めるのでしょうか?

なぜいくつかの昆虫は、交尾の後に、パートナーに頭から噛みついて食べるのでしょうか?

現在「カニバリズム/共食い」の習慣がない人間にとっては、それはとても衝撃的で、まるでホラー映画の世界のようにさえ感じるかもしれませんが、人類の歴史にも、ネアンデルタール人のように、共食いの風習があったことが知られています。

しかし、共食いは、生き物の世界ではよくみられる完全に自然な食文化なのです。

ここでは、「共食い:完全な自然史/Cannibalism: A Perfectly Natural History」の著者でもある自然史博物館の動物学者Bill Schutt氏が、なぜいくつかの種が共食いをするのかについて、最もユニークで注目度の高い生き物を例に挙げて理由を解説したものを分かりやすく紹介します。

子育てとしての共食い

自然界では、下記のように、子育て中に共食いが行われることがよくあります。

親の皮膚を食べて育つ両性類

親が赤ちゃんに、自らの皮膚を与えて育てる両生類に「アシナシイモリ」がいます。

アシナシイモリには、卵を産むもの(卵生)と、子を産むもの(胎生)がいることが分かっています。地中に住み、手足が無くて細長い原始的な形状をしており、ミミズにとても似た生き物です。

研究によって、卵から孵化した幼生は、母親の周りをくねくねと動きまわりながら、皮膚を食べ始めることが発見されました。母親の表皮は、赤ちゃんの発達を促すために脂肪を含み、栄養に富んでいるといわれています。

一方で、卵ではなく、孵化した後に外界に生まれる(胎生の)赤ちゃんは、おなかの中にいる時に、母親の卵管の壁を食べて育ちます。

母親のおなかの中で兄弟を食すサメ

シロワニ (sand tiger shark)と呼ばれるサメは、卵をおなかの中で孵化させてから、子を産む卵胎生の生き物です。

シロワニのおなかの中で最も早く生まれた赤ちゃんは、卵管にあるまだ孵化していない卵を食べ始めます。そして、卵が無くなると、次は自分より後に生まれた幼生を食べ始めます。

ひとつの子宮の中で生まれることができるのは、たった一匹だけ(サメの子宮は2つあるので産み落とされるのは最大2匹まで)だといわれています。

このように、卵から孵ったシロワニの赤ちゃんは、ひとつの子宮のなかで厳しい生存競争を勝ち抜いていかなければ生き残ることはできず、生まれた瞬間からすでに捕食者として生きていく運命にあります。

完全な自然史としての共食い

共食いは、決して奇妙なことではなく、生物学的に意義があるといわれ、世界では様々な研究や調査が行われています。

実際に、人間の歴史でも、20世紀の終わりごろまでは、ヨーロッパで医療的治療目的で人肉が食べられていたといいます。

科学者たちは、これからも地球の気候変動や飢餓、病気など様々な背景や状況によって、人間を含めて、多くの種で突発的に共食いが発生する可能性は否定できないとし、将来にむけてこれらの研究を続けています。