ミミズはどうやって動くのか?ロボット科学に応用

ロボット科学にも応用されているミミズの動き動物・植物・生き物

ロボット科学にも応用されているミミズの素晴らしい生態や雨の後の行動のナゾ、そして、ミミズが植物の生育をささえる仕組みなどについて科学的に分かりやすく紹介します。

実は、ミミズの表面には、「剛毛」と呼ばれるほとんど目には見えない毛が生えています。

どろんこ遊びや園芸で、土いじりをすると、ぞっとするような小さな友達と遭遇することがあります。

れは滑らかな肌で覆われ、輪のような体節でつながれた細長い体でニョロニョロとうごめく生き物。

そうです「ミミズ」です。

実のところミミズは、しばしばアリやカブトムシのような昆虫と間違われることがありますが、全く別の動物です。

まず第一に、昆虫の特徴である「6本の足」、「3つ(頭、胸、腹)に分かれたからだ」、「硬い外骨格(骨の役割)」のどれとも一致していません。

かといってヘビのように細長くても、骨格がないのでヘビとも違います。

ミミズの体は、ヒルやゴカイと同じように強い筋肉でできており、筋肉を圧迫しながら体を薄く、長く伸び縮みさせて動く環形動物(かんけいどうぶつ)なのです。

さっそく以下にミミズの不思議な生態についてみてみましょう。

ミミズの体には毛が生えている「ぜん動運動の仕組み」

ミミズの体の表面には、ほとんど目には見えませんが「剛毛」と呼ばれる毛が生えています。

ミミズは、動くときに、体液の圧力で筋肉を伸び縮みさせて、体節の太さや長さを変えるぜん動運動を行いますが、そのときに、この剛毛で周囲の土をつかまえるようにして、前方に体を押し出しているのです。

まれに、鳥が、地面からミミズを引き抜こうと苦戦しているのを見ることがありますが、それは、実際にミミズが体表の毛で土につかまっているがために、鳥がうまく取れない状況になっているのです。

ミミズは、この複雑なぜん動運動のおかげで、ふにゃっとした柔らかい体でありながら、水圧をかけて体壁を硬くすることで土に穴を掘るだけでなく、壁を登ることもできます。

それは、ロボット技術の研究にも用いられています。硬い骨格がないからこそできるミミズのようなロボットの動きは、ジャングルの中から宇宙に浮かぶ衛星の配線の中といった複雑な地形にまで入り込んで、さまざまなものを監視できると期待されているのです。

また、ぜん動運動は、他の生き物の動きに比べて移動に必要な空間が最小限であるというメリットを活かして、近い将来、体内に入って病気を見つけ出したり、薬物を適所に投与したりする任務を負った小型のミミズロボットが生まれる可能性だってあります。

ミミズのぜん動運動と同様に、骨や関節のない強大な筋肉からなるゾウの鼻の仕組みもロボット科学に取り入れられています。

光と振動を感知するミミズの脳

ほとんどの動物と同じように、ミミズの体にも前側と後ろ側(肛門)があります。
前側の先端には口が、そして、消化管のはじまりのすぐ上には待ち針の頭のような小さな「脳」があります。
しかし、そのちっぽけな脳が素晴らしい仕事をやり遂げるのです。ミミズは、耳や鼻といった感覚器官がないにも関わらず、光と振動を感知して、すばやく反応することができます。土を伝わる振動から危険を察知してすぐに地下に逃げ込むのです。

ミミズの呼吸方法

ミミズは、巣穴と呼ばれる地下トンネルで一日のほとんどの時間を安全に過ごしています。地下トンネルの湿った土は、鳥やネズミなどミミズを狙う数多くの捕食者から身を隠すだけでなく、彼らの肌を乾燥から守って、しっとりと保つのに適しています。

特に肌の湿り気はとても重要です。なぜなら、ミミズは、私たちと同じように呼吸をしなければ生きてはいけませんが、100%皮膚を通して酸素を吸収する皮膚呼吸をするからです。

湿った土や泥を掘るとミミズを見る機会が多いのはそのためで、皮膚が乾燥してしまうと、呼吸ができなくなって生命を落とすことにもつながります。

しかし、例外もあります。

暴風雨の後には、地中ではなく歩道や駐車場のいたるところで、ミミズが動いているといわれています。さて、ミミズにとって天敵が多いはずの地上にあえて出るのはなぜなのでしょうか。

大雨の後にミミズが地上に出るのはなぜか?

このナゾについて科学者たちは、移動中も肌をしっとりと保つことができる雨の日は、ミミズにとって新しい家を探し求めて移動するのに好条件であるからだと考えています。加えて地上は、土の中よりも素早く移動ができるメリットもあります。

これが暴風雨の後のミミズの行動理由として考えられている有力説ですが、その他にも下記のような仮説を立てた科学者もいます。

溺死を防ぐため説

ミミズの呼吸は、内側と外側の濃度の違いによって物が移動する「拡散」と呼ばれるプロセスで行われているため、濃度の高い体外から濃度の低い体内へと酸素が自然に移動されています。

通常は、雨が降っても水中に十分な酸素が含まれていれば呼吸を続けることができますが、水は空気よりもはるかに高密度であるため、このプロセスが非常に遅れてしまいます。なんと最大で、1000倍近くこの拡散プロセスが遅れてしまうこともあるようです。

すると、大雨の後は必然的に、ミミズが息苦しくなって地上にはい出てくる可能性が高くなります。

しかし、この説に対しては、生物学者の間で、「もちろん種にもよるが、ミミズの多くが水中で数日間生き続けられるため、必ずしも地上に出る必要はない」と否定的に見る意見もあります。

たしかに、2008年には、酸素をあまり必要としない熱帯ミミズと酸素が(特に夜間に)たくさん必要なハワイミミズの2種類では、酸素の消費量が異なるがゆえに、大雨の後の反応も異なることが分かっています。どうやら、ミミズが雨の後の環境を好むか好まないかの問題でもあるようです。

交尾を目的とする説

土の浸水を交尾のサインだととらえ、交尾の相手を探すために地上にでるという説もありますが、これは、大ミミズをはじめ、数種のミミズに限定されます。

雨の振動をモグラのものと勘違いして逃げ出す説

雨が落ちると、ミミズの大敵であるモグラと似た振動が起こり、ミミズが勘違いして、地上に逃げ出すという説もあります。

たしかに、ミミズはある特定の振動を感じると逃げ出すことが分かっています。事実、つりのエサ用にミミズを捕獲するワームグランターと呼ばれる人たちは、この習性を利用して、地面に木片を打ち込んで、その棒を金属片でこすることで土を振動させて何百ものミミズを地表におびき出しています。

しかし、研究によるとミミズは、モグラをまねた振動のみに反応して、雨による振動では反応を示さないことも分かりました。

ミミズは土壌を改善する働き者

土は、ミミズにとっての安全な家であるだけではなく、食料でもあります。

ミミズは、土壌中にある葉や根といった植物の腐敗した有機物から栄養素を得ます。彼らは、たった一日で体重の2分の1のエサを摂取するほどの食いしん坊です。

土の中を移動しながら、微生物や有機物などのエサを土ごと食べて、土と一緒に排泄します。粒状の「ふん」には、植物の成長に必要な養分や窒素、ミネラルなどが豊富に含まれているのです。

さらに、ミミズが掘った細いトンネルは、水と空気を地中の奥深くまで届けるのに役立ちます。それは、植物や微生物など他の生き物が住みやすい環境を作り、新たな生命を生み出します。

そのため、あえてミミズを庭に飼う人や、その食性を活かしてバナナやリンゴの芯などの植物性の生ごみを入れたコンポストにミミズを入れて堆肥を作る人もたくさんいます。

ちなみに、ミミズが土を耕して土壌を改善する有益な生き物であることを最初に発表したのはかの有名な進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンです。

参照元:
Worms Are Wonderful
Creeping, Crawling Caterpillars – Science Nation
Why Do Earthworms Come Out After It Rains?

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