七変化するサケの驚くべき生態

七変化するサケの驚くべき生態動物・生き物

さて、少し難しいなぞなぞです。

生まれてから生涯にわたって呼ばれ方が7回変わり、川(淡水)と海(海水)の双方を生活場所とし、体の色もストライプ柄から銀色、そして紅色(赤)に変えて、見た目を大変身させる特殊な生き物は何でしょう?

答えは、日本の食卓でも馴染み深いあの生き物「サケ」です。

サケは、卵からかえり、7つの異なる段階を経て成長しながら、同じ魚とは思えないほど自らを大変身させていくとてもユニークなライフサイクルをもった驚きの生き物だといわれています。

ここでは、そんなサケの興味深い生態について、7つの段階に分けて分かりやすく紹介していきます。

サケのライフサイクル

サケは、異なる7段階のライフサイクルごとに呼ばれ方も変わっていくため、生涯にわたって7つの呼び名を持ちます。

下記では、そのひとつひとつの段階にみられるサケのユニークな生態的特徴を詳しく紹介していきます。

サケは、他の魚と同じように、「卵」からスタートします。

秋になると、成長したメスは卵を産みます。一般的にサケは、川の流れのように、動く水のある場所を好んで卵を産み、産卵後にメスは、卵に砂をかけて隠すといわれています。

そして卵は、冬の間ずっと川底の安全な場所に身を隠し、春になると第二の名前「仔魚(しぎょ)」を取得するときを迎えます。

仔魚(しぎょ)

春になると、卵は孵化(ふか:卵がかえる)して「仔魚」になります。生まれたばかりのサケの赤ちゃんは、まだ泳いで移動したり、えさを取ったりができないので、代わりに栄養分として体に卵黄の袋をつけています。

サケの種類は多岐におよび、種類によっては、仔魚から次の段階(第三の名前「幼魚」)に進むに足る大きさになるまでに数週間から数ヶ月かかってしまうものもいます。

幼魚(ようぎょ)

幼魚の段階になると、卵黄の入っていた袋は小さくなります。

まだあまり上手ではありませんが、自分で食料をとって食べたり、泳ぎ回ったりすることもできます。

しかし、まだ遠くまでは移動しないで、生まれた川にとどまっています。

そして、夏の終わりになると、次の段階「パー」へ進みます。

パー

パーとは、サケの子供の呼び名で、人間でいうと成長はしても成人まではいかない10代くらいの頃です。

まだ体は小さいままですが、確実に大きくなっています。

生まれた川を泳ぎ回ってえさを取り、体には敵から身を守るために周囲の景観に適応した黒い斑点のような模様ができます。これは、パーマークと呼ばれています。

パーが生まれ育った川から離れる準備ができるほど成長した頃には、体の模様は消え、「スモルト」と呼ばれる第五段階に入ります。

スモルト

スモルトとは、生まれ育った川を去り、大河や湖のような大きな水に下る頃の若いサケの呼び名です。
大河や湖で生活した後は、川を下り、太平洋や大西洋といった海に出ます。

しかし、ほとんどのサケは、山の高い地点の川で生まれるため、海に出るまでは長い期間を要します。
海に向かって旅立ったばかりのスモルトは、まだ見た目がパーに似ていますが、海に繋がる水に出る頃までには、体は大きく成長し、新しい環境に適応して色は銀色に変化しています。

そして、第六段階の成魚となります。

成魚

マスノスケ(キングサーモン)、シロザケ、ベニザケ、サクラマス、カラフトマスというように、海には、様々な種類のサケがいますが、それらは群れを形成しています。

そして、大人になったサケ「成魚」は、海でとても長い年月を過ごします。それは最大で8年にも及びます。

長い間海で過ごした後、サケにはとても素晴らしいできごとが起こります。赤ちゃんを産むとき(第七段階)を迎えるのです。

産卵期の成魚(成熟したサケ)

冒頭でも述べたように、サケは、川で卵を産みます。

そうです。大人になったサケは、卵を産むために、海を離れ、再び山の上の川に戻ってくるのです。

サケは、卵を産む準備ができたとき、自分が生まれ育った川を覚えており、スモルトの頃に下ってきたときと同じように長い距離を泳いで戻ります。

ただし、今度は川を(下るのではなく)遡っていきます。

その移動距離は、数百キロにも及ぶといわれています。

ときには、滝をジャンプしながら登り、ダムを越えなければならないことさえあります。

それは本当に厳しい旅です。

この時期になると、体は銀色から紅色に変わります。

そして、オスのなかには色だけでなく、体型を変えるものもいます。

カラフトマスのように下顎を発達させて突き出し、背中にこぶのようなふくらみができるオスもいます。

まとめ:サケのライフサイクル

このように、サケのライフサイクルは、非常に興味深い進化を遂げてきました。

淡水の川で生まれた後、年月を重ねて多様に変化しながら、えさが豊富な海水に出て、再び生まれ育った故郷の川(淡水)に戻って産卵します。そして、そこからサケの新しい命の旅が始まるのです。

ちなみに、サケ科の魚には、海に下らないものもいます。

たとえば、サクラマスのなかで海に下らないものが「ヤマメ」、スティールヘッドの場合は「ニジマス」と呼ばれています。同じ種類のサケであっても、栄養が豊富な海に出たサクラマスと、川に残ったヤマメでは、サクラマスの方が倍近く大きくなります。

また、日本最大の淡水魚として知られる「イトウ」や「イワナ」もサケの仲間です。

参照元:Salmon Parents Are Amazing!