凍るカエルの正体とは?

凍るカエルの正体とは?動物・生き物

なんとカエルの中には、寒くなると凍って氷結ガエル」になってしまう種がいます。

ここでは、暖かい春がきたら、自らの体を解凍して極寒の冬を乗り切る最高にクールなアメリカアカガエルの生態を紹介します。

基本的に生き物は、氷点下の温度に長時間さらされてしまうと、体内の水分が氷の結晶をつくり、細胞組織が壊されてしまうことがあります。

それは、致命傷や死につながるほど大きなリスクです。

しかし、もしこのクールなカエルの生存テクニックを人間の医療に応用できれば、移植する臓器の凍結を防ぎながら長持ちさせるのも夢ではないかもしれません。

今回は、アメリカアカガエルが、どのようにして極寒の地を生き抜いているのかについて、体を凍らせるメカニズムや驚くべき生存戦略を紹介します。

氷の結晶は六角形になる

氷の中では、凍った水分子が六角形にくっつきあう

多くの動物にとって、寒い気候の中で長期間外にさらされるのは、体によくありません。

それは、生き物の体にはたくさんの水分が含まれているからです。

凍ったら水はどうなるのかをイメージしてみると分かりやすいですね。

そうです。氷になります。

氷を分子レベルまで拡大して見ると、水分子がハチの巣のような六角形の模様を作って、規則正しく並んでいるのがわかります。

このように氷の中では、凍った水分子が六角形にくっつきあって、それを何度も繰り返すことで安定した特別な模様を作りながら大きくなっていくのです。

この特別な模様の繰り返しをクリスタル(結晶)と呼んでいます。

動物は凍ると細胞組織や血管が損傷するリスクがある

水を凍らせてできた氷の結晶は、この模様をつくるために隙間が多くなるため、液体の水よりも場所を取ります

そのため、ガラス瓶に入れた水を凍らせるのはよくありません。

液体の水が冷やされて、氷の結晶を作り始めると、模様が大きくなり(体積が膨らむ)、ガラス瓶の容器が割れるリスクが高くなるからです。

ガラス瓶と同じように、凍った時に動物の体内に水が入っていると、容器である生体組織や血管に亀裂が入ったり、致命的な損傷を与えたりしてしまうこともあります。

そうなると、たとえ動物が温まって氷が液体に戻ったとしても、なんらかの組織の破壊が残ります。

アメリカアカガエルの体は完全に凍るわけではない

アメリカアカガエルの体は完全に凍るわけではない

しかし、なぜかアメリカアカガエルは、毎年冬になると凍ってしまいます。そして、生き延びることができるのです。

それは、カエルの体内にあるすべての水分が凍ってしまうわけではなく、凍らずに液体のまま存在する水分が残されているからです。

つまり、カエルを手に持ったら氷のように硬く感じますが、体の一部は完全に凍っているわけではありません。

この部分はアイスキャンディーというよりは、シャーベットのようなものです。

死なないために、カエルは心臓のような最も繊細で壊れやすい体の部位の水分を液体の状態に保つ必要があります。

アメリカアカガエルが体が凍るのを防ぐ方法

では、どうやったらそれが可能になるのでしょうか?

なんと、砂糖のような化合物を入れるのです。

お菓子作りに役立つのと同じで、砂糖は、お菓子を甘くするだけでなく、水分が凍るのを防いでくれます

さっそくコップに水を入れて実験してみましょう。ここでは、ガラスが割れる心配がないように、プラスチック製のものを選ぶとよいでしょう。

まず、同じ量の水を入れたコップを2つ用意します。

砂糖水は氷難い

次に、スプーン数杯分の砂糖を一方のカップに入れ、混ぜて溶かします。

そして、2個のコップを冷凍庫に入れ、1時間に1回を目安に確認します。

結果として、砂糖の入っていない水の方が、砂糖の入った水よりも早く凍るのがわかるはずです。

なぜ砂糖が入ると水は凍りにくくなるのか

砂糖が入ると水が凍りにくいのはなぜだと思いますか?

難しい質問ですね。

先程述べたように、水の分子は冷たくなると、氷の結晶を作りたがります

さて、砂糖はそれにどう影響するのでしょうか?

砂糖は、水分子同士が手をつないで六角形のパターンをつくろうとするときに、間に入り混んで邪魔をしてしまうのです。

砂糖が氷の結晶化を邪魔する

最終的には、水分子は、砂糖を押し出して氷の結晶を作るのに成功しますが、ただ、邪魔が入るので、それだけ大きな氷の結晶をつくるのに時間がかかってしまいます。

凍ったカエルの場合、体内の水分が十分に液体のままである限り、ほとんどの壊れやすい部位は、氷の結晶を作らないので、冬を無事に乗り切ることができます。

極寒の地で生き抜くアメリカアカガエル生存戦略

さて、糖を体内で移動させ、血液や主要部を凍らせないことは、アメリカアカガエルが凍結を乗り切るために使っている生存戦略のまだ一部に過ぎません。

研究者らは、カエルが凍ってしまった水を、それに耐えうる体の丈夫な部位に移動させることもできると考えています。

さらに、アメリカアカガエルの生存戦略には、まだそれ以上の秘密があると考え、今も研究を続けています。

そして、春が来て、凍っていた体がどんどん溶けだすと、彼らはまるで凍っていなかったかのようにいつもの生活に戻ります。

それは、最高にクールな生存戦略です。

そして今、研究者たちは、アメリカアカガエルのような耐寒性の高い動物と似た凍結防止物質を使って、移植のために提供された臓器を安全に長持ちさせようと試みはじめています。

参照元:The Sweet Secret of Frogsicles