ホタルの光がもつ抜群のエネルギー効率

ホタルはなぜ、どうやって光るの?動物・植物・生き物

ホタルの光の秘密について、なぜ、どのようにして発光するのかを中心に分かりやすく紹介します。

驚くべきことに、ホタルはエネルギーの100%近くを光として放出するという超省エネ機能の持ち主。

電球の場合、消費されるエネルギーの90%が熱として逃げ、わずか10%の残りのエネルギーだけが、目に見える光として放出されることを考えると、ホタルのエネルギー効率がどれだけ高いかが分かります。

しかし、悲しいことに、今、私たちの街の光がホタルを迷わせ、世界のいたるところで彼らを絶滅へと導いているようです。

体から光を放つ生物発光

生物が、化学反応を起こして光を放つ現象生物発光(せいぶつはっこう)といいます。

この魔法のような力をもつ生き物は、ホタルだけではありません。

グローワームや特定の深海魚種など、光エネルギーを作り出して発光する生き物はいくつかいます。

しかし、なんといっても地球上で最も有名な発光生物といえばホタルでしょう。

それでは、さっそくホタルの輝きの秘密に迫っていきます。

ホタルの生態

世界中には、約2000種類以上のホタルがいるといわれます。

ホタルによる揺らめく光のショーは、夏の夜をより幻想的でロマンチックな気分にしてくれます。

それでは、ホタルはどのようにして自らを発光させているのでしょうか?

答えはホタルのお尻の中に、具体的にはその腹部の発光器と呼ばれる特殊な発光細胞の集合体にあります。

これらの発光細胞が、美しい光の魔法を実際に引き起こす場所。そして、この器官は、半透明の外骨格に包まれているのです。

ホタルの光細胞の中で 何が起こっているのか?

19世紀、フランスの薬理学者ラファエル・デュボア(Raphael Dubois)は、生物発光性の二枚貝を調べ、生き物による光のショーには、2つの重要な要素があることを発見しました。

彼は、これをラテン語で光をもたらす者を意味する「ルシファー」に基づいて、「ルシフェリン(luiferin)」と「ルシフェラーゼ(luciferase)」と名付けました。

ルシフェリンは、光を発生させる化合物です。それに作用して発光を助ける酵素(触媒)がルシフェラーゼ。

今日では、ホタルの生物発光反応が この2つの要素と体内の酸素が反応して引き起こされることが分かっています。

ルシフェリンの酸化に伴う化学反応の光

まず、ホタルは、体内の気管を通じて酸素を発光細胞に届けます。

すると、酸素とルシフェリンが、酵素(ルシフェラーゼ)の力を借りて、エネルギー(ATPと呼ばれる体内でエネルギーを貯蔵する分子)を消費しながら、化学反応を起こします(酸化)。

その後、酸化したルシフェリン(オキシルシフェリン)は、激しく揺れ動いて興奮し、そのエネルギーレベルを上昇させます。

興奮したルシフェリンは、通常の安定した状態に戻るために、エネルギーを光の形で放出するのです。
ホタルの発光現象は、驚くほど効率的です。

ホタルは抜群のエネルギー効率をもつ

電球では、消費されるエネルギーの10%程度しか光にならず、ほとんどが熱として放出されてしまうため、使用中に手で触ると熱くなります。

一方、ホタルの場合、エネルギーのほぼ90%から100%という高効率でエネルギーを光に変換できるので、発光細胞でつくられる光は発熱せず、冷光とも呼ばれています。

生成された光エネルギーは、反射板のような働きをする反射細胞に集められ、腹部の半透明の外骨格を通して外に光のビームが放たれるという仕組みです。

しかし、そもそもホタルはなぜエネルギーを消費してまで発光するのでしょうか?

発光生物が光る理由

ホタルをはじめ、発光生物は、光細胞と触媒となる酵素を使って化学反応によって発光します。

厳密にいうと、生き物によって発光の仕組みや光を発するタンパク質の種類、光り方、色合い、また、発光する目的などは少しずつ異なります。

たとえば、捕食者から身を守るために光によって影を消す深海生物や、光で捕食者を威嚇する貝虫類、逆に光で獲物をおびきよせて捕食するチョウチンアンコウなどがあり、このような発光生物は、光によって進化的なメリットを得とくしてきました。

そして、このような発光生物の光は、科学の進歩にも役立っています。

たとえば、ホタルから採集したルシフェラーゼを他の遺伝子と置き換えることによって、顕微鏡で観察する細胞を光らせて可視化する技術に応用されています。

ホタルはなぜ光るのか

タフツ大学の進化・行動生態学教授、サラ・ルイス博士は、ホタルの発光理由について、次のようにいいます。

ホタルやカブトムシの幼虫は、地下で生活しています。

そのため、ホタルの光は、最初に、警告として進化したと科学者らは考えています。

それは、「私を食べないで、私は毒性がある」と捕食者に向かって叫ぶネオンサインのようなものです。

しかし、大人のホタルになると、発光の目的はもう少しロマンチックです。

夏の夜を照らす黄色い光は、オスがメスを誘うためのホタルの複雑な交尾儀式の一部だと考えられています。

点滅パターンは、ホタルでも種によって異なります。

オスは、種固有の誘惑手段を取り、同じ種のメスに識別可能なリズムや色(黄緑色やオレンジ色、赤色など)で光を点滅します。

すると、下の草周辺を飛んでいるメスたちは、この光の点滅を見て、自らの種族のオスを認識できるというわけです。

しかし、この夏の夜を盛り上げてくれる魔法のイルミネーションは今、深刻な危機にさらされています。

世界中のホタルの個体数が 激減しているのです。

ホタルに差し迫った絶滅の危機

ホタルのオスとメスの出会いには、光がラブレターの役割を果たします。

しかし今、街の灯りによる「光害」のせいで、その光のラブレターが見えにくくなり、迷子になるホタルが増えているのです。

特に広告のネオンや外灯など明るい光が多い地域では、メスがオスの光の点滅を識別するのがはるかに難しくなっていることも分かっています。

それは、オスとメスの出会い、繁殖の妨害を意味します。

その他にも、森林破壊によるホタルの生息地の損失、農薬の脅威などもホタルの固体数を危険にさらしています。

これらのホタルの中には、限られた生息条件の地でしか生きられない種も多く、生息地が無くなれば絶滅は避けられません。

悲しいことに、これは地球上の至る所で繰り広げられている物語であり、絶滅の危機は動物界全体の問題でもあるのです。

ホタルを守るために

最後に、ルイス博士は言います。

ホタルや絶滅危機にさらされた種の保護には、まずその現実を一人でも多くの人が知り、行動するための教育が絶対的に重要なのです。

もしホタルがいなくなれば、世界の多くの不思議や神秘の世界が、ホタルと一緒に消えてしまいます。
ホタルのいない世界に住みたいと思いますか?

私はそうは思いません。

これらの危険因子に対する認識を高めることで、ルイスはホタルの保護に少しでも光を当て、この小さな虫たちが何年も先まで私たちの目を楽しませてくれることを保証し、将来の世代に、光に包まれた感動的な夏の夜を過ごす機会を残したいと考えています。

参照元:
What’s Behind The Firefly’s Glow | What’s Inside?
Four Creatures That Glow

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