人類の手で、他の惑星を地球のように新しく作り変えるテラフォーミングについて、科学的に考えられてきた「第2の地球」の作り方をもとに分かりやすく紹介します。
地球の資源は限られており、支えられてもせいぜい総人口100憶人までだといわれています。
今、私たち人間が、資源を急速に消耗するにつれて、新しい惑星の必要性が目の当たりになってきました。もしこのまま、地球のように生命が存在できる惑星が見つからなかったら、人類はこれからどうすればよいのでしょうか?
テラフォーミングとは
「テラフォーミング=地球化」とは、(地球以外の)天体の地表や大気の環境を、地球のような人間が住めるものに、人の手で変化させるプロセスをいいます。
地球化の対象となる惑星のひとつに、地球と似たような条件をもつハビタブブルゾーン内の金星がありますが、太陽に近すぎて温度が高く、水が液体の状態で存在できないなどさまざまな壁が立ちはだかっています。
その他、火星や水星、衛星などにも、地球の代替物としての可能性に期待が高まっています。
下記に、火星や金星、水星などの惑星や衛星で考えられているテラフォーミングの可能性やアイデアについて紹介します。
火星の地球化案
火星は、地球の半分程度の大きさであるがゆえに、重力も地球で感じる約3分の1程度しかありません。
そのため、(大気をつなぎとめておくことができず)大気は非常に薄く、地球の約1%だといわれています。しかも、その大気の大部分は、人間に有害な二酸化炭素です。
大気がないので、空気による保温効果が期待できないうえ、火星の位置は、地球よりも太陽から遠いので、気温は-63℃くらいしかありません。それは、冬用コートを何枚重ね着しても凍えてしまう寒さです。
さらに、火星には、太陽の放射線から保護するための磁気圏が存在しません。
これでは、改善すべき点がたくさんあるのは明らかです。それでは、以下に、火星を地球化する方法について具体的に考えていきます。
大気圧や大気の組成(そせい)を変える方法
まずは、大気から見ていきましょう。これは、火星のテラフォーミングの最大難関のひとつに考えられています。
人間のような生命体が住むには、火星の大気をより厚くし、その組成(そせい:構成要素や成分)を変えなければならないのです。
大気は、生命体の呼吸のためだけに存在するのではありません。惑星の表面全体を空気の層で覆うことによって、太陽の熱を閉じ込めて、保温効果を引き出すという目的もあります。
それには、火星の岩石から採掘されたメタンや二酸化炭素などを使用するなど、さまざまな方法が考えられます。アンモニアも使えそうです。
研究によって、太陽系外から飛んできた彗星を砕くと、アンモニアが放出されることが分かっています。
アンモニアは、そのほとんどが植物の生命活動を支えている「窒素」なので、植物の生命活動を通じて酸素が得られたら、地球のような大気が生まれます。
おそらく、人間が生活できるくらいに大気圧は高くなり、地球を暖かく包んでくれるでしょう。そうなると、その後のテラフォーミングがやりやすくなります。
水を作る方法
火星では、北極点にあたる地点で、氷の存在が発見されています。
時間はかかるかもしれませんが、大気によって惑星の温室効果が上がると、氷が溶けて水が得られます。これから研究が進むにつれて、もっと簡単に氷を溶かす方法が見つかる可能性もあります。
水によって生命体の環境が整えば、かつて赤い惑星と呼ばれた土壌に、何らかの変化がもたらされ、生命が育まれる可能性があります。
磁気圏の問題
先ほど、大気には磁気圏が存在しないと述べたのを覚えていますか?
それは、火星が最初に大気を失った原因の大部分を占めています。
火星の磁場は、約42億年前に閉鎖され、そこから太陽風と強力な太陽面爆発にさらされて、地表の大気は宇宙空間に放出されたといわれています。
それは同時に、火星の岩石の中に、温室効果の引き金となる二酸化炭素が含まれていない可能性も示唆しています。
しかも、磁気圏が無いと、せっかく生成した大気もすぐに太陽による放射線と太陽風によって剥ぎ取られてしまいます。火星の弱い重力だけでは、大気をつなぎとめておくことさえできません。
どうやら、火星の地球化は非常に厳しいようです。
金星の地球化案
次に、地球から最も近い隣人、金星の惑星改造計画を見ていきましょう。
金星は、超分厚い大気で覆われており、表面温度は約460度にも相当します。これだけ見ても、大きな改造計画が必要となることが分かります。
一つの選択肢として考えれていることは、水素からなる巨大ガス惑星で、金星に衝撃を与えて、地球の海を生じさせたといわれるグラファイト (生物起源の有機物に由来するといわれる石墨)や水を作り出すアイデアです。
これによって、生成された窒素が溶解し(減らし)、大気圧を地球のような状態まで低下させられるのではないかと考えられています。
水星の地球化案
水星の北極地方には、大型のクレーターがあり、そこに水や有機分子が存在することが確認されているため、鏡で太陽光を集めて、クレーターの底を照射し、氷を溶かすという案があります。
そして、その水資源のあるクレーターの上をドーム状に囲うというアイデアもあります。ちなみに、このアイデアは、月にも応用できます。
エウロパの地球化案
木星の第2衛星であるエウロパの表面にある氷を溶かすことができれば、放出された酸素の一部が大気に溶け込み、水源を得られるかもしれません。
タイタンの地球化案
土星の第6衛星であるタイタンの場合、酸素や月を作り出し、人間への毒性を低くしなければなりません。
まとめ
上記に挙げた惑星の改造計画は、非常に困難でかつ、実現可能への道筋がはるかに遠いものです。
私たちは、宇宙に第2の地球を作ることに躍起になるよりも、今ある地球を保護する方法を考えた方が賢いかもしれません。