クジラは地球上で最大の動物です。
シロナガスクジラの体長は、なんと33メートルと150〜200トンにもなり、ゾウやマンモス、恐竜をもしのぐのです。
しかし、クジラが常に海の巨人だったわけではありません。不思議なことに、クジラの物語はむしろ小さな生物から始まります。
以下に、クジラが海の巨人になるまでの物語を5000万年前に時計の針を巻き戻して紹介します。
最古の原始的クジラ
5000万年前、クジラの拠点は海ではありませんでした。
地球上の生命は、何百万年もかけて、海から脱出して陸に上がれるように進化してきました。
多くの生物が、海から陸に上がり、ヒレを足のように変化させ、四肢動物になっていったのに対して、ある時からクジラはその努力をすべて投げ捨てたのです。
現在知られる限りで最初のクジラと考えられている「パキケトゥス」を紹介しましょう。体の大きさはオオカミほどだったと考えられています。
パキケトゥスは、水陸両域で生育する哺乳動物で、主に乾燥した陸地を、ひづめのある四肢で這っていました。
約5,000万年から4,000万年前、クジラは4本の足をヒレに変化させました。
実際、今でも後ろ足や骨盤の骨の名残があるクジラもいます。
これまで、クジラが巨大化できたのは、水中に潜ったことで重力の縛りから解放される影響があったからだと考えられてきましたが、さらに研究がすすむにつれて、冷たい海の中で体温を維持するために巨大化する必要があったのではないかと示されるようになりました。
体の大きなほ乳類は、海の中で奪われる体温が少なくなり、体温維持の効率が上がります。
参照:エネルギー的トレードオフが水棲哺乳類のサイズ分布を支配する:米国科学アカデミー紀要(PNAS)
今日、シロナガスクジラはパキケトゥス(最古の原始的クジラ類)の10,000倍も巨大化しています。
しかし、体の大きさに見合ったエサの確保も必要な条件となるため、初期のクジラにとってこの変化は思ったほど緩やかなものではありませんでした。
実際、海に入った後の3700万年ほどの間に、クジラの種はますます多様性を増していきましたがが、その大きさは小さいままでした。
例えば、2750万年前、歯の代わりにヒゲを持つ最初のクジラの1頭は、体長わずか5メートルほどしかなく、巨大なサメなどの捕食者の格好の餌食となっていました。
そして、約300万年前、クジラが有利な状況に転じました。氷河期の到来です。
食べ物を十分に確保できるようになった
海水温と海流が変化し、プランクトンの大群とプランクトンを求めるオキアミが集中的に発生したのです。
ヒゲクジラにとっては食べ放題のビュッフェでした。
そして大きくなればなるほど、さらに大きくなるために、より多くの餌を求めて遠くまで移動できるようになっていきました。
それから300万年後、ザトウクジラにおいては、地球上の哺乳類の中で最も長い回遊のひとつを行い、毎年8000km以上を移動しています。
その結果、現代のクジラは歴史上最大となったのです。
最大のシロナガスクジラをみてみましょう。
体重はボーイング757型機(約115,650kg)よりも重く、おへそは皿ほどの大きさがあります。
その血管網を一列に並べると、冥王星から太陽まで往復して2.5倍以上にもなります。
あまりのスケールの大きさに驚きませんか?
実際、最大のシロナガスクジラはあまりにも巨大で、科学者たちはもう物理的な限界に達しているのではないかと考えています。
シロナガスクジラが餌を食べるために大きな口を開けると、広いリビングルームを埋め尽くすほどの水を飲み込むことができます。
そのため、再び口を閉じるのに10秒かかることもあるほど。
科学者たちは、クジラの体長が33mになると、獲物が逃げ出す前に素早く口を閉じることができなくなると推定しているのです。
クジラの大きさについて詳しくは、生物学者のニック・ピエンソンの著 「Spying on Whales 」に記載されてあります。
クジラがどのようにして、史上最大の生物になったのかについては、以下の動画で見ることができます。