では、3つの心臓は何をしているのでしょうか?
タコの3つの心臓は、それぞれに役割が少し異なります。
タコの血は青い
タコの血液が青い理由は単純な進化です。
たとえば、人間の血液が赤いのは、人間の血液の重要な成分の1つが鉄だからです。鉄は、酸素と結合して、血液を赤く変色させます。
そして、血液中の鉄は、酸素輸送を担う「ヘモグロビン」というタンパク質に含まれています。
一方で、タコは、鉄ではなく、銅を含む「ヘモシアニン」というタンパク質が酸素を運んでいます。
銅が酸素と結合すると、血液は青く変色します。
そして、この青い血液は、タコの環境への適応において重要な役割を果たしています。
理由:環境に適応するため
タコは、海底に住むため、しばしば極端な温度にさらされやすく、マイナス30度に達する海底でも生存が確認されています。
たとえば、北極海の海底では、酸素がタンパク質とより強く結合します。
そして、酸素を分離して、体中の組織や器官系に届けることができなければ、生物は文字通り窒息してしまいます。
そういった場合、極寒にすむタコは、ヘモシアニンを最大で40%余分に作り出すことで、濃度を変化させて適応していることも分かっています。
また、海で得られる銅成分は、深海でも十分にありますが、鉄の濃度は最終的に減少し始めます。
血液中の酸素が不足すると、血液から青色は失われ、しだいに透明に変わっていきタコにとっては致命的となります。
つまり、銅が入手しやすかったことも、タコの血液を青くした理由の一つと考えられているのです。
タコはなぜ困難な環境条件から離れなかったのか
しかし、タコは、このようなスーパーヘモシアニンを生成する能力を開発するよりも、単純にすごしやすい海域に移動するという手段をとらなかったのはなぜでしょうか?
それは、おそらく、短い寿命(交尾様式)と長距離を移動する能力(海底を這って移動する)がそれを阻んでいたと考えられています。
このようなことから、科学者らは、青い血液の適応は、困難な環境条件から離れられなかった進化の結果であると考え、ゆえに、タコは驚くほど複雑な生き物なのかもしれません。