さて、ここに、アウトドアブランドで有名なThe North Face(ザ・ノース・フェイス)のマウンテンパーカーが2着あります。
2つの違いはただ「Supreme」とのコラボレーションであるかどうかだけ。
では、なぜパーカーに「Supreme」とロゴ名が入るだけで、日本円にして10万円も多くお金を費やす人がいるのでしょうか?
そもそも、シュプリームってなんで高いの?
さっそく、シュプリームのアイテムがなぜ高いのかについてストリートファッションブランドとして成功した驚くべき限定品効果を中心に、彼らがブランド価値を高めるために行った巧みなマーケティング戦略を紹介します。
実のところ、「シュプリーム」の販売価格は決して高くはありません。
シュプリームのアイテムは、商品が売り切れてから値が何倍にも跳ね上がって転売されているのです。
Supreme(シュプリーム)とは
Supreme(シュプリーム)が、ジェームス・ジェビアによって設立されたのは1994年。
小さなスケートボード店として、マンハッタンのソーホー地区でスタート。
以来「本物」を追い求めることをモットーに、パーカーやトレーナーの販売も始め、ニューヨークで急成長を遂げます。
スケボーファッションから10億ドル企業へ成長
90年代から2000年代初頭にかけては、ほぼスケートボードブランドとして機能していたシュプリームですが、ブランドに対する姿勢が認められ、新たなストリートファッションとして予想をはるかに上回って知名度を上げていきます。
特に赤地の枠内にフーツラ字体で書かれたロゴが一際目を引くデザインは有名で、その他にも数々の限定品やアーティストとのコラボレーション戦略によって、過去20年間で10億ドル(約1150億円)企業にまで成長。
そして、今やファンにとってシュプリームとは単なるファッションブランドではありません。
過去には、人々がまるでギャンブルに取りつかれたような、社会から逸脱した一種の「サブカルチャー」的なブランドともいえる現象を引き起こしています。
実はよく訴えられている「Supreme(シュプリーム)」
「Supreme(シュプリーム)」ブランドの象徴的なデザインといえば、真っ赤な背景にシンプルな文字が描かれたボックスロゴ。
実のところ、このデザインは、コンセプチュアル・アーティスト(現代アート)の一人、バーバラ・クルーガーの作品(モノクロ写真に白文字を描いた赤地のボックスが有名)のコピー作品だと指摘されています。
どうやら著作権侵害は、シュプリームの生まれついての特徴、一種のクセであるようです。
しかし、当初は反社会的とも考えられた画像の流用は、予想外にもブランド人気を生み出す鍵の1つとなりました。
彼らが印刷したポップカルチャーのイメージ画像とロゴの組み合わせによるデザインは、大手ファッションブランドの商品よりも、現代アートやグラフィティ・アートを思わせるとされ、ニューヨークを起点に次々と人々を魅了していったのです。
たとえば、シュプリームブランドが初期につくったTシャツは、映画「タクシードライバー」のロバート・デ・ニーロの写真のみでしたが、後にブランドのトレーとマークともいえる象徴的な赤と白のボックスロゴを重ねることで人気を博しました。
シュプリームブランドが初期につくったTシャツは、映画「タクシードライバー」のロバート・デ・ニーロの写真のみだったけど、後にブランドのトレーとマークともいえる象徴的な赤と白のボックスロゴを重ねることで人気を博したんだよ。
裁判で訴えられる度に認知度が向上
当然のことながら、シュプリームは、あまりにも多くの画像を無許可で使用したため、ルイ・ヴィトンをはじめ、NHL、NCAAなどから、しばしば訴訟問題が引き起こされました。
しかし、知的財産侵害行為として訴えられたり、マスコミで取りざたされたりするほど、かえって知名度は上がっていき、さらに発展していったのです。
当時のシュプリームにはステータスとしての要素はありませんでしたが、彼らのロゴは完全に、そして確実にバーバラ・クルーガーよりも認識度を上げていったのです。
そして、この「認知度」は、シュプリームにとってブランド力の重要なカギとなります。
シュプリームのアイテムはなかなか手に入らない「限定品」戦略
Supreme(シュプリーム)のアイテムは、なかなか手に入りにくく、中でも限定品には高い需要があります。
これについて、実際にシュプリームのアイテムを転売目的で購入しているクリス・マグネイ氏は、次のようにいいます。(2019年のインタビュー)
シュプリームは、世界中の11の実店舗とオンラインストアでのみ商品を販売してるんだ(2019年)。
たとえば、火曜日の午前11時にSupremeの公式ウェブサイトを開いて、そこで名前、メールアドレス、電話番号、クレジットカード番号といいた基本情報を入力したとするよ。
すると、シュプリームからその日のうちにあなたの登録メールアドレス宛に「you have been selected(あなたは選ばれました)」と書かれたテキスト文が送信される。
この通知は、列にならぶことが許されたことを意味するんだ。
そして、シュプリームは、再び水曜日にあなたに「指定の店舗と時間帯」を伝えたテキストを送信。
こうして、やっとのことで木曜日にあなたは指定の店で与えられた時間に買い物ができるんだよ。
また、シュプリームのアイテムを購入できるのは、「スタイルごとに1つ」という制限ルールがあります。
つまり、1つのスタイルで黒、赤、灰色のTシャツが用意されていたとしても、あなたは1色しか入手できません。
そのため、黒と赤色も欲しいなら、自分が手に入れるために他にもう二人用意する必要があります。そして、その二人は、あなたのために手間暇をかけて列に並ぶ必要があるのです。
事実、並んでいる人の多くが、他の誰かのために並んでいるといわれています。
有名人による露出と他企業とのコラボレーション戦略
Supreme(シュプリーム)は、2000年代半ばから後半にかけて飛躍的に注目度を上げています。この成功は、「カニエ・ウェスト効果」と呼ばれています。
2006年、シュプリームは、ナイキとのコラボレーションによってBlazer SBをリリースしました。
約150ドルで販売された靴は、その後、転売する際には値が300ドルから400ドルに跳ね上がったのです。
さらに2007年7月、グラミー財団によるスターリーナイトパーティでミュージシャンのカニエ・ウェストがその靴を履いた写真が公開された後、靴の価格はその倍、800ドルにもなりました。
同様に、タイラー・ザ・クリエイターが、彼のミュージックビデオ「she」で着用したボックスロゴのスウェットシャツは、販売当初150ドル前後だったにも関わらず、3,500ドルで転売されています。
タイラー・ザ・クリエイターが、彼のミュージックビデオ「she」で着用したボックスロゴのスウェットシャツは、販売当初150ドル前後だったのに、3,500ドルで転売されてるんだよ。
販売価格が数倍の値段で転売される
Supreme(シュプリーム)の転売者たちは、「人気が出るアイテム」、「自分にどれだけリターンが返るか」を考えて商品を購入しなければなりません。
彼らのような転売者は、ツィッターやインスタグラムなどクラウドソーシングの投票ツールを確認して、人気度や話題性を確かめて、市場をしっかとり把握しながら転売可能かを判断していきます。
ちなみに転売者の一人、クリス氏が今までに最も稼いだアイテムは、シュプリームが2017年秋冬にノースフェイスとコラボレーションしたマウンテンパーカーでした。
それは、398ドルで購入後、950ドルで売れたそうです。
果たして、この信じられないほどの付加価値がついた限定品アイテムの売買において、お金はどこから生まれているのでしょうか。
店内のシュプリームアイテムの価格を見ると、Tシャツ約38ドル、スウェットシャツで138ドルというように驚くほど高価なものというわけではありません。
これらの製品は、売り切れた後に、元の価格の30倍に達する可能性を秘めているのです。
付加価値がついた限定品アイテム・関門戦略
近年では、他の大手ブランドもこのシュプリーム旋風を巻き起こすために、限定品戦略を採用し始めています。
トレーナーから他のストリートウェアブランドまで、限定品と示されることによって、「希少性」が商品の価値を高めているのです。
人は、何か手に入りにくいものに特別な価値を感じます。
さらに、ネットへ申請といった手間や、店舗と時間の指定といった特定のアクセス法を与え、消費者の仕事を増やすほどこれらのサービスや製品がますます希少価値を高め、魅力的になっていきます。
「くぐり抜けなくてはならない関門を用意」
これは、シュプリームが、人を引き付ける方法を熟知していることを示す一例です。
ネームブランドの価値を高める戦略
他の会社、たとえばレンガやバールを売る会社が「supreme(シュプリーム)」という名を商品につけて販売することがあります。
シュプリームという名を売り込んでくれるような一見すると献身的な行いにみえるそれらの会社はなぜそのようなことをするのでしょうか?
彼らは、シュプリームを売り込むのではなく、「かっこいいブランド」として認知度の高い有名ブランドを求めているのかもしれません。
シュプリームというネームブランドは、常に人々を引き付け、需要が高いからです。
特にニューヨークのようなストリートファッションがあふれる街では、人とは違う特別なものを求める傾向があります。
そのような人々にとって、シュプリームのようななかなか手に入らないアイテムを自身に取り込むことは、自らを至高の存在のように感じさせてくれる魅力があるようです。
さらに、お金と時間をかけて並ぶ必要のある限定品は、人々の需要を高める効果があるため、シュプリームのアイテムを手に入れることは、まるでギャンブルのように一稼ぎすることへの興味をも引き立てます。
彼らは数量を制限するという、斬新な仕事をしました。
おそらく、好きなものであればば、人々はその価格が高くとも支払うでしょう。
列に並ぶ人のなかには、転売者のように、シュプリームのアイテムを着用したいかどうかには関係なく、お金を稼ぐ機会を求めて集まる人も大勢いるのです。
最後に
supreme(シュプリーム)は、クールでなかなか手に入らない限定的なイメージを維持することに成功しました。
彼らは、マーケット市場を世界中に拡大し、ブランドの株式の50%を民間企業に売却したにもかかわらず、それはまだ維持されています。
世界には、まだまだたくさんの人々が彼らのアイテムを望んでいるので、この流れはこれからも続きそうです。