車では、停止したいときにブレーキを踏みます。
このシステムは、動いている車の運動エネルギーを熱エネルギーに変える摩擦力によって働きます。
では、水との間に実質的に摩擦がない「船」の場合、ブレーキ無しでどうやって停止させるのでしょうか?
以下に、船をブレーキ無しで停止させる方法について、まずは緊急停止のやり方から紹介します。
船はブレーキの代わりにテクニックで停める
車は、基本的に、ブレーキを踏んだ力を真空システムによって増幅させ、その後、油圧力でパッドをタイヤに押しつけて圧力をかけることで減速、停止させる仕組みです。
このブレーキパッドとタイヤの摩擦、タイヤと路面間の摩擦によって車は停止します。
船の場合、車の摩擦と同じようにブレーキペダルを踏んで抵抗を大幅に増やすことはできません。
たしかに、水上を進んでいる船は、エンジンを停めるといつかは止まりますが、それには時間がかかるため、緊急停止が必要になった場合は、なんらかの力を加えて止めるしかないのです。
そのため、船では、ブレーキペダルの代わりに、さまざまなテクニックによって船を減速させています。
まずは、船が緊急停止しなければならなくなった場合について見ていきましょう。
舵による操作
まず、舵(かじ)を切ることができます。
舵とは、船の進む方向を変えるためのハンドル操作で、船を減速した場合にも使えます。舵を右に動かして、(船が旋回するまでに時間がかかるため)船の向きが変わり始めると、今度は反対方向(左)に強く回して、抵抗を増加させる方法です。
このテクニックは、実際に船の向きを変えることなく、舵を動かすことで船を減速させるテクニックです。
これにより、舵自体によって生み出される追加の抵抗力のみをで船が減速します。
蛇行・ドリフト運転
このアイデアをさらに発展させて、船をゆるやかな蛇行運転しながら減速するテクニックもあります。
船の進む角度によって抵抗力を大きくするのです。
船の運動量はまっすぐ前方方向にあるため、一方向に30~40度斜めに進むという低頻度の舵サイクルを繰り返すことで、抵抗力を大幅に増やして、5.6倍の船の長さ以内で停止させます。
つまり、300mの船では、1.6km程度で停止できます。
緊急停止しなければならないときは、車のドリフトのように一方向に舵を強く切って、フル操舵によって2、3倍の船の長さ以内に停止させることもあります。
これらは、直前に前方に危険が迫っていることに気付いた場合に、安全を確保する効果的な方法になります。
では、エンジンを使うことはできるのでしょうか?
エンジンを逆回転するのは最終手段
映画では、船のエンジンを全速前進から、中立、全速後進させて急停止しようとするシーンを見たことがあるでしょう。
これは認められた操縦ではありますが、エンジンが壊れる可能性もあるため、クラッシュストップと呼ばれます。
クラッシュストップは、緊急を要する場合の最後の選択肢になるでしょう。
なぜなら、それは船のコントロールを完全に失うことにつながるからです。
エンジンのスクリューを急に止めたり、逆回転させたりすると、舵の手前で水の流れが乱れ、舵を操ったり、船の向きを修正したりする方法がなくなります。
それだけではなく、プロペラを水の流れと反対方向に回すと、一種の真空が発生してしまい、プロペラの効果は予想よりもはるかに小さくなります。
それでは、エンジンで他に何かできることはあるのでしょうか。
エンジンを停止させて止まるまで待つ
エンジンを停止することができます。
これは文字通りエンジンを停止し、船が動かなくなるまで漂流させる方法です。
これによってある程度の舵のコントロールは維持されます。
ただし、船が速ければ問題はありませんが、速度が遅くなるとコントロールを失います。
さらに、この方法では、停止するためには、数キロもの海域が必要になってしまうでしょう。
残念ながら、船体の抗力のみを使用して船を減速させるため、あまり効率的ではありません。
通常の船の停止方法
では、日常的に船が停止したいときには、実際に何をするのでしょうか。
これまでは緊急操作について話しましたが、これらは決して毎日行うわけではありません。
通常は、目的地に合わせて、速度を計画的に低下させます。
これは、航海士が毎回航海する前に行う航海計画プロセスに記されています。
目的地に近づくにつれて、航海中の減速ポイントが計画され、その地点に達すると少しずつ出力を下げるだけでよく、プロペラを前進させたまま、舵の制御を維持できるというものです。
上記の船をブレーキ無しで停止させる方法については、以下の動画で確認することができます。