線路に沿って無限に積み上げられた石の山。鉄道の旅でよく目にする光景です。
これらは一見、普通の小石に見えるかもしれませんが、実は世界中どの国でも石の形や質感はほぼ同じだといわれています。
なぜこのようなゴツゴツした石でないといけないのでしょうか?
以下に、線路に石を敷き詰める理由について、石の特徴もあわせて紹介します。
どうやらこの石は、自然の力や走行中のストレスから線路と枕木を保護するだけでなく、線路の安全性を確保するうえでとても大切な役割があるようです。
「バラスト軌道」
線路に敷き詰められた砕石を「バラスト軌道」といいます。
これらの石は、枕木の下や間、その周りの道床に詰め込まれています。
バラスト軌道の厚さは、線路の地理的条件によって異なりますが、平均25cmほどあります。
通常、ほとんどが砕いた岩や石で構成され、場合によっては、 焦げた粘土などの代替物も使用されることもありますが、どんな石でもよいわけではありません。
道床に用いられる石には、適した形状、 サイズ、質感があります。
石の特徴
石の表面は滑らかではなく、端がギザギザで全体的にゴツゴツしていますが、 それには理由があります。
もし、石を円形や表面が滑らかな岩、または、細長かったり、凹凸や高低がない平らな石に置き換えると、それらは互いに滑って崩れやすく 、バラスト軌道の強度が損なわれてしまうからです。
そのため、滑り止めの意味もかねて固定されやすい石が使われています。
バラスト軌道の役割
さらに、鉄道線路は、鋼鉄やその他の金属部品でできており、腐食や錆びが発生しやすいだけでなく、灼熱の太陽光の照り返しや風雨、植生といった自然の力によって摩耗しやすい環境に常にさらされています。
そこで、鉄道を保護するために、バラスト軌道は以下のような大切な役割を果たしているのです。
枕木を固定
線路は、毎日のように上を走る貨物列車や旅客列車を含む多くの列車による大きな応力と圧力に常に耐えなければなりません。
バラスト軌道は、重い列車がその上を走っても、枕木を縦方向にも横方向にも動かないように所定の位置に固定する役割があります。
これがなければ、日々通過する列車による絶え間ない圧力で、枕木は破損してしまうでしょう。
負荷を分散
列車ははるかに重く、線路と枕木に常に大きな圧力をかけます。
バラスト軌道の石はギザギザしているため、互いにかみ合うことで、枕木と線路にかかる膨大な荷重を均等に分散してくれます。
振動を緩和
バラスト軌道は、走行中の列車によって引き起こされる振動を吸収します。
石によるクッション効果は、列車に乗る乗客の快適性を高めます。
線路の排水効果
線路が雨や水詰まりで水浸しにならないようにすることはとても重要です。
この点でもバラスト軌道は大きな役割を果たしています。
枕木やその周辺に水がたまったり、詰まったりするのを防いで排水しやすくし、線路に水がたまり、金属部分が急速に錆びてしまうのを防いでいます。
線路周辺の植生を防ぐ
植物の繁殖力は、線路の強度に大打撃を与える可能性があるため、線路の周りに草や雑草、植物が生えないようにすることはとても重要です。
バラスト軌道の石は、種が付着するルートをふさぎ、日光を遮って植物の発芽や成長を防ぐのに大いに役立っているのです。
騒音を吸収
走行中の列車は、特に列車の外側にいる人々にとっては迷惑な騒音となります。
ここでもバラスト軌道の砕石は、平面よりも大きな表面積を提供するため、騒音の吸収が大幅に促進します。
バラスト軌道のない線路で列車が動くと、その騒音は明らかに大きくなるでしょう。
線路の熱膨張を最小限に抑える
夏、線路は暑さで膨張する傾向があります。
バラスト軌道は、この熱膨張を最小限に抑え、線路の有効性と安全性を維持しています。
このようなバラスト軌道についてその役割を中心に以下の動画で分かりやすく紹介されています。