太陽は常に謎に包まれていました。
なぜ太陽は輝き続けられるのか?いったい何が太陽にパワーを与えているのか?
19世紀には、太陽の表面温度が冷えて収縮することによる重力位置エネルギーが太陽のエネルギー源になっていると考える科学者もいました(ケルビン・ヘルムホルツ機構)。
しかし研究が進むにつれて、太陽が長い間光り輝いていられるのは、原子核反応によるエネルギーのおかげであることが解ってきました。
以下に、太陽のエネルギー源の生成方法について分かりやすく紹介します。
太陽のエネルギーの謎
たしかに、太陽は巨大な塵とガスの雲から始まり、この雲は重力の力で崩壊し、大量の熱を放出しました。
これによって太陽がなぜ熱いのかは説明できるかもしれませんが、残念ながら太陽がなぜこれほど長い間熱かったのかは説明できません。
この太陽のエネルギー源についての謎は、原子のより良いモデルができるまで、明確な姿は見えてこなかったのです。
核反応が起こる条件
まず、原子の中心には陽子と中性子からなる小さな原子核があります。
陽子にはプラスの電荷があり、これが問題で、この電気の力が陽子と中性子を引き離そうとします。
しかし、原子核には、核内の陽子と中性子を結びつけている強い力「核力」があります。
この核力は、陽子同士のペアや中性子同士のペアには影響しません。陽子が多すぎるとバラバラになり、中性子が多すぎてもバラバラになってしまうのです。
つまり、すべてを一つにまとめるには、陽子と中性子のちょうどいい組み合わせが必要なのです。
そして、ちょうどいい組み合わせになると、核反応が起こります。
核反応とは
核反応は多くの点で化学反応に似ています。
化学反応とは、例えば、水素と酸素を組み合わせてH20を作れば、これはより安定した組み合わせであり、エネルギーを作ることができます。
同様に、2つの水素原子核を組み合わせて(核融合反応)ヘリウムを作れば、より安定した組み合わせとなり、エネルギーが生まれます。
核反応と化学反応の違い
しかし、核反応は、以下の点で化学反応とは異なります。
- 生成するのがより難しい
- より強力
- 中性子を伴う
生成するのがより難しい
化学反応は日常生活の一部によく見られますが、強い核反応はそうではありません。
その理由は、核力はとても短い距離でしか働かないからです。
また、陽子はすべてプラスに荷電しているため、水素原子核同士を近づけると反発し合います。
核力が働くのは、極端に近づいたときだけであり、通常、反発し合う原子核同士が近づくことはありません。
より強力で中性子をともなう
原子核が衝突するには、極度の圧力と極度の熱の条件下が必要となります。
そしてこのような強い核反応は、太陽のようなはるかに巨大な物体の中心か、核爆弾の中でしか起こりません。
さらに、中性子は、核反応においてとても重要なものですが、化学反応では関係ありません。
たとえば、水素原子のほとんどは、原子核が陽子1個からなる水素(水素1/H-1)ですが、陽子1個と中性子1個からなる水素2(H-2)、陽子1個と中性子2個からなる水素3(重水素、または、トリチウム/H-3)も存在します。
水素2は重水素とも呼ばれ、核反応はとても強力です。
もう一度2つの反応を見てみましょう。
水素(2h2)と酸素(O2)の化学反応では5evのエネルギーしか生まれません。
一方で、重水素の核反応では、500万倍強力な2400万eVのエネルギーを放出できます。
たった1ポンドの重水素の中に、1万世帯の1年間の電力に十分なエネルギーがあるのです。
これは莫大なエネルギー量です。
だからこそ太陽は驚くほど輝き、科学者たちは何十年も核融合発電に取り組んできましたが、ほとんど成功しなかったのです。
もうひとつ、核の力について話す必要があります。
ここまでは強い核力について話してきましたが、弱い核力もあります。
弱い核力とは
強い核力は原子核を結びつけていたもので、弱い核力は放射能のもとになります。
強い核力に比べて、弱い核力はゆっくりと作用するので、弱い力と呼ばれています。
まず、弱い核力は、陽子と中性子を入れ替わらせることができます。
これらは、電子、または、陽子といったベータ粒子の放出をともなう原子核の放射性崩壊のひとつで「ベータ崩壊」と呼ばれます。
中性子は陽子よりわずかに重くなります。
これが意味するのは、自由になった中性子は、自分ひとりでも質量を失って陽子に変わることができること。
しかし陽子は、他の粒子が近くにない限り、中性子に変わることはできません。
この過程がベータ崩壊と呼ばれるのは、放射性元素が崩壊する方法の一つだからです。
さて、放射能は、放射性物質がゆっくりと崩壊することだとわかりました。
たとえば、箱にウラン235原子がいっぱい入っているとしましょう。
最終的にウラン原子はすべて鉛に変わりますが、それを急ぐ必要はありません。
ウラン原子の半分が鉛に変わるまで待つとしたら、7億年待つことになるでしょう。
放射能の原因は、ベータ崩壊だけではなく、実際にはもっと多くのことがそこで起こっています。
重要なのは、ベータ崩壊はランダムに起こる遅いプロセスであるということ。
これでようやく、太陽がどのように輝いているかを説明するのに十分な下地ができました。
太陽のエネルギー源って何?
1939年、太陽のような恒星のエネルギーが核融合反応によるものであることが、物理学者のハンス・ベーテによって解明されました。
それは、以下のような仕組みです。
太陽はほとんどが水素1(陽子)でできています。
太陽ははるかに高温で高密度なので、陽子同士は衝突することができます。
しかし、中性子がないため核反応は起こりません。
ほとんどの場合、2つの陽子が衝突すると、エネルギーは発生せず、ただちに飛び散るだけです。
しかし、ごくまれに、ベータ崩壊という別のことが起こる可能性があります。
ベータ崩壊とは
2の陽子が衝突した瞬間、そのうちの1つがベータ崩壊(電子を放出)を起こし、中性子に変わるケースです。
これにより水素2が生成され、大量のエネルギーが放出されます。
ベータ崩壊が起因となってエネルギーが生成される
水素2の原子核は動き続け、陽子とぶつかるとヘリウム3に変わり、
これが大量のエネルギーを放出します。
このプロセスが続くと、太陽はますます多くのヘリウム3を生成し始めます。
2つのヘリウム3の原子核が衝突すると、
さらに良い組み合わせのヘリウム4になり、これが大量のエネルギーを放出するのです。
もう一度まとめると、水素は3つのステップでヘリウムに変換されます。
まず、2つの陽子がベータ崩壊して重水素になる。
次に陽子が1個加わってヘリウム3が作られ、最後に2個のヘリウム3の原子核が衝突してヘリウム4と残りの陽子2個が作られる。
最初のステップはベータ崩壊を待たなければならないので、圧倒的にスピードは遅くなります。
太陽の中心にある典型的な陽子の場合、第一段階には平均10億年かかると考えられています。
第2段階にかかる時間は、約4秒。
最後のステップでは、希少な別のヘリウム原子核を見つけなければならず、これに約400年はかかると考えられています。
これらの核反応が太陽の驚異的なパワーの源になるのです。
太陽は究極のエネルギー源
太陽は、空気を熱して風を起こし、水を熱して雨を降らせて水力発電をもたらします。
太陽光は生命の基盤です。
太古の太陽光に育まれたエネルギーが地中に堆積し、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料が生まれました。
事実上、世界のすべてのエネルギーは、最終的に太陽か原子力のどちらかからもたらされています。
太陽が輝き続けられる理由を要約すると、以下のようになります。