さて、2台の車がパンクしました。
しかし、青い車はスムーズに路肩に停車しましたが、赤い車は大きな衝突事故に遭ってしまいます。
実は、この2つの車の未来が分かれた理由を理解するには、タイヤを見れば十分です。
衝突した車はチューブ入りタイヤ、生き残った車はチューブレスタイヤを装着していたからです。
驚くかもしれませんが、この事故を防いだチューブレスタイヤ技術のもとになったのは、単純な風船。
以下に、風船を使った簡単な実験をもとに、チューブレスタイヤの仕組みについてわかりやすく紹介します。
風船を使った実験
何もない風船に針を刺して穴をあけると、パンっと音を出して割れます。
しかし、表面にテープを貼った風船に針を刺しても、ゆっくりと空気が漏れるだけで、風船は割れません。
チューブレスタイヤは、この簡単な風船実験に基づいて設計されているわけですが、その仕組みを理解する前に、まずはチューブ入りタイヤの基本を確認する必要があります。
チューブ入りタイヤの仕組み
タイヤに空気を入れる際、タイヤに直接空気を入れることは決してありません。
強度を高めるために化学処理されたタイヤのゴムは、通気性があります。
そのため、直接空気を入れると、ゴム素材の小さな孔から空気が漏れてしまいます。
この空気が抜けてしまう小さな穴への解決策は、タイヤの中に不浸透性(水やガスを通さない)のゴムチューブを入れることで、これが従来のチューブタイプのタイヤの仕組みです。
このチューブに空気を入れれば、空気漏れは発生しません。
これは優れた設計ですが、もし釘がチューブに刺さると、急激に空気が漏れ出してしまう欠点もあります。
さて、それではどうすればよいでしょうか。
チューブがパンクするのを防ぐ方法はあるのか?
ここで少し考えてみましょう。
設計には2つの選択肢があります。
バルブをリムに取り付けないままにするか、リムに固定するかです。
どちらが最適なのでしょうか?
バルブはリムに固定しない
チューブの穴から漏れた空気粒子の大部分は、チューブとタイヤの間に閉じ込められます。
バルブを緩めたまま(リムに取り付けない)にすると、当然バルブはリムの中に落ちてしまいます。
結果的にすべての空気はバルブの穴からすぐに押し出され、タイヤはパンクしてしまいます。
しかし、2つ目の選択肢では、バルブが固定されているため、空気がタイヤとチューブの間に閉じ込められ、空気が抜けるのに時間がかかる可能性があります。
これならパンクは防げそうですが、残念ながらこの固定バルブ設計では大惨事につながります。
問題は、高圧の空気がチューブから抜け出せない場合、図のようにタイヤが爆発してしまうことです。
このため、チューブタイヤの設計ではバルブがリムに取り付けられていません。
チューブ付きタイヤの場合、タイヤを守るために突然の空気漏れを許容する必要があるからです。
タイヤのもう1つの重要な点は、車両が急旋回した場合でもタイヤが常にリムの内側に留まるようにすることです。
そのために、タイヤの内側に金属のワイヤーの束(図の緑)が挿入されています。
片方のがパンクして突然平らになるとタイヤの半径が小さくなり、接地点での速度が低下します。
この状況は差動作用につながり、例えば、左のタイヤがパンクすると、車は自然と左に向きを変えるため、
ドライバーは驚いて反対にハンドルを切って車の向きを戻そうします。
結果的に車は瞬間的に方向転換し、制御不能になり、壊滅的な事故につながります。
さて、チューブレスタイヤがこのような致命的な事故をどのように克服するかを探る時が来ました。
事故を防ぐチューブレスタイヤの原理
ここで興味深い粘着テープ風船の実験の出番です。
私は風船を持っています。
風船は、明らかに水やガスを通しません(不浸透性)が、ここでの主な問題は、針が刺さると、風船が破裂することです。
そして、ここからが重要です。
風船に粘着テープが巻かれている場合、針で刺すとそこからゆっくりと空気が漏れ、いきなり破裂することはありません。
この興味深い粘着テープと風船の組み合わせが、チューブ構造の基礎となります。
詳細を見ていきましょう。
風船が破裂する理由
まず、風船が破裂する理由を探る必要があります。
膨らんだ風船内の圧縮空気は、風船を張力(ちょうりょく:物体を引っ張る力)で保ちます。
風船に空気を送ると、(内側から外側にかかる空気圧が上昇して)ゴムの膜全体に張力が働き、ゴムが伸びて風船が膨らむ仕組みです。
そして、針でこの風船に穴を開けると、圧縮空気がこの狭い隙間から勢いよく流れ出します。
空気が漏れると、風船に半径方向に働く力(中心から外側に向かって働く力)が生じ、(ゴムの引っ張られる力で)穴が急激に広がります。
そのため空気が急速に流れ出ます。
タイヤのチューブでも同じことが起こり、空気が急速に流れ出ます。
粘着テープで何が起こるか
粘着テープの上から針で穴を開けたときでも、半径方向の力によって穴は広がろうとします。
しかし、粘着テープがそれを許さないため、開口部はすぐには広がらず、空気がゆっくりと漏れ出します。
さて、この基本的な知識を応用してチューブレスタイヤを作りましょう。
この膨らんだチューブは不浸透性であるため、先ほど見た風船と同じになります。
つまり、この状態のチューブでは突然の収縮に対してしっかりとした構造的サポートが必要となります。
チューブレスタイヤの仕組み
そこで、風船につけた粘着テープの代わりに、特殊なゴムを薄く貼りつけます。
これで、タイヤがパンクしても急激に空気が漏れることはなくなります。
これで、突然のパンクによる破裂を防ぎ、ゆっくりと空気が漏れるより安全なタイヤが完成しました。
この設計をより実用的にするために、チューブの内側の領域(図の黒色部)を取り除き、
不浸透性のゴム膜ができたタイヤにリムに取り付けます。このリムにはバルブを取り付けるための穴があります。
バルブには凹凸があり、
リムの内側部分から外に向けて引くとロックされるように作られています。
これでチューブレス イヤの完成です。
この新しいチューブレスタイヤの設計は、特別に設計されたいくつかのリムでのみ空気漏れを防ぎます。
リムの構造
まずは古いリムを試してみて、何が起こるか見てみましょう。
図のように、加圧された空気は簡単に抜けてしまいます。
タイヤを空気漏れから守るためには、チューブレスタイヤには優れたロックメカニズムが必要です。
そのため、エンジニアはリムに突起を追加しました。
これにより、タイヤがリムに完全に固定され、空気は抜けなくなります。
しかし、これによってタイヤに新たな課題が生じます。曲がり角といった動きでのタイヤの柔軟性が低くなるので、どうやってリムにフィットさせるかという問題です。
エンジニアは、この問題に対して巧妙な解決策を考案しました。
リムをタイヤにフィットさせる工夫
彼らはリムを図のように非対称の形状にしました。
このリムの設計では、図のように特定の方法で力を加えることでタイヤを簡単に取り付けることができます。
これでタイヤがわずかに伸びるだけで、完璧にフィットすることに注意してください。
右上のみ、フィットさせるのが少し難しいですが、この領域もタイヤに空気を入れるとフィットします。
圧縮空気で自己修復するチューブレスタイヤ
みなさんは、圧縮空気でチューブレスタイヤが自己修復するメカニズムがあることをご存知ですか?
これはラテックスベースのシーラント法です。
このラテックスシーランドは、空気に触れると固まる液体です。
チューブレスタイヤのパンク防止剤として使われ、タイヤ内部では液状ですが、パンクで空気が漏れ始めると、その穴に流れ込んで空気に触れた面から固まり、穴をふさぐ仕組みです。
この液体がこの穴を自己修復する様子をご覧ください。
ただし、ラテックスシーラントが意図したとおりに機能するようにするには、定期的に新しいものに交換する必要があるともいわれています。
では、チューブ付きタイヤをチューブレスタイヤに実際に変換できるのでしょうか?
可能です。ただし、リムに気密ロックを提供するための突起があることが唯一の条件です。
チューブレスタイヤについては、以下の動画で見ることができます。