ものの仕組み・エンジニア

なぜ津波は岸に近づくと巨大化するのか?

津波の原理ものの仕組み・エンジニア

なぜ津波が発生すると、船は水深が深い沖に移動させるのでしょうか?
水深が浅くなるにつれて、津波の高さはどのような影響を受けるのでしょうか?

津波は、広大な海洋で形成されると高速で移動しますが、沖ではほとんど目立ちません。

しかし、はじめは無害に見えた波が、浅瀬に移動するにつれて、破壊的な巨大津波に変わることがあります。

それは、水深が減少すると波長が短くなり、波のスピードも減少しますが、波は一定のエネルギーを維持するため、岸に近づくにつれて振幅(高さ)を増加させていくからです。

この津波の不思議な物理現象を理解するために、まず常に移動し続ける海洋底からみていきましょう。

津波の波が形成される仕組み

ゆっくりと移動する海洋底では、ときに一つの地殻プレートが別のプレートの下に滑り込むことがあります。

ここで、プレートの上層の膨らみに注目してください。

プレートの滑り込み

この滑り込みの動きはどれくらい長く続くでしょうか?

この固定された木片は、海底で何が起こるかを示しています。

木片で津波実験

木片を締め付けて圧力をかけていきます。ある時点を過ぎると、境界部でドーン。

木片で津波実験②

これが津波の波が形成される仕組みです。

海底で、プレートを押す力によって蓄積された全てのエネルギーが、ある時点を過ぎると一気に発散されます。

海底でのプレート変動

このエネルギーによって津波が生まれるのです。

津波が発生

津波を引き起こす地殻プレートの運動と地震

地殻プレート②

もし魔法のように海をすべて排水できれば、地球の表面にいくつかのつなぎめが現れます。

これらは地殻プレートと呼ばれます。

地球の表面は、互いに相対的に動く7つの主な地殻プレートで構成されています。

地球内部のマントルは、熱エネルギを外に放出するために対流熱伝達によって常に循環しています。

マントルの対流

地殻プレートは、水に浮かぶ氷のようにマントル対流の上に浮いています。そして、マントルの継続的な運動により、地殻プレートは常に移動しています。

例えば、2つのプレートが離れていくと、そこに谷状の地溝(リフトバレー)が形成されています。

リフトバレー

世界最大の大地溝帯として知られるアフリカ大陸東部のグレートリフトバレーは、このような動きの典型的な例です。

アフリカ大陸東部のグレートリフトバレー

アフリカ大陸東部のグレートリフトバレー②

プレートが衝突する場所では、その相互作用によって、山脈、海溝、時には活火山を形成する可能性があります。

この種の収束運動の最も良い例は、アメリカ北西部のカスケード山脈です。

地殻プレートの運動はとても遅く、年間数センチ程度です。

次に、おもしろい観察結果をみてください。

地球上の地震多発地域に点をマークすると、それらすべてが、2つの地殻プレートが接する地域にあることがわかります。

地震の位置とプレート運動

2つの地殻プレート間の相対的な運動とそれに伴うエネルギーの解放が地震を引き起こしているのです。

そして、海洋の深部で地震が発生すると、津波を引き起こす可能性があります。

沈み込みにプレートはどれほど耐えられるのか?

津波を引き起こす地殻プレートの運動は、「沈み込み帯運動」と呼ばれます。

海洋プレートが大陸プレートに沈み込むとき、大陸プレートを押す力(エネルギー)が蓄積して大きくなり(圧縮応力場)、大陸プレートが上に隆起します。

プレートが衝突

これは、海洋プレートが大陸プレートよりもはるかに密度が高いためです。

境界で大陸プレートは内側に曲がり、そこには巨大な海溝が形成されます。

プレートが衝突②

しかし、このエネルギーの蓄積はどれほど続くのでしょうか?

一部の沈み込み帯では、エネルギーが数世紀にわたって蓄積されます。
他の沈み込み帯では、ひずみエネルギーが時間をかけて徐々に解放されます。この緩やかな滑り込み現象は津波を引き起こしません。

しかし、日本海溝やチリ・ペルー海溝のような地域では、エネルギーは数秒の間に解放されます。

これによって起こった地震は確実に津波を引き起こします。

水深が浅くなると津波はどんな影響を受けるのか?

生まれたばかり波の速度は200km/hを超えるものの、振幅(波の高さ)が低いためほとんど気づかれません。

時速200kmの波

津波の波は通常、高さが0.5メートル未満ですが、波長は数百キロメートルに及ぶことがあります。

時速100km

しかし、波が海岸線に近づくと状況は変わります。

ここで、波を生成してみましょう。

水深が減少すると波のスピードも減少

タンクの反対側まで波が届くまでの時間は1.9秒です。

水深と波の速さ②

しかし、水深が半分になると、波は反対側まで届くのにさらに時間がかかります。

水深と波の速さ④

水深と波の速さ

実験と同様に、波が岸に近づくにつれ、その速度は大幅に減少します。

ただし、このプロセスにおける、波のエネルギーは一定のままです。

波が浅い領域で、波がスピードダウンするにつれ、波長は短くなっていきます。

波長

このとき、一定のエネルギーを維持する唯一の方法は、波の振幅(高低差)を増加させることです。

波長は短くなる

波が浅瀬に近づくにつれて波高が上昇し、波長が短くなる現象を「浅瀬波」や「浅瀬効果」と呼びます。

波長は短く、波は高く

これが、津波の波高が岸辺付近で巨大になる理由です。

信じられないほど高い振幅を持つゆっくりとした波です。

最終的にこの波は岸辺に衝突し、破壊をもたらすことがあります。

海が急激に引くのは津波が来る前触れか?

以前触れたように、波では物質の水平方向の移動はありません

波の経路に沿ってボールを置くと、それらは単に自分の位置で振動するだけです。

水平移動はない①

水平移動はない②

基本的に水粒子は前進していません。

しかし、状況により波の振幅がはるかに高くなり、海岸に打ち寄せることがあるのです。

海が急激に引くのは津波が来る前触れとしてよく言われますが、それが実際に起こったようにみえることがあります。

津波の谷が(山よりも前に)最初に海岸に到達するときです。

波が引くようにみえる

これにより、突然海岸線が引くように見えます。

数秒後、津波の波頭(山)が海岸に到達します。

ただし、すべての津波が海岸線の後退に先立って発生するわけではありません。

津波の波頭(山)が最初に到達することもあるのです。

記録上最も破壊的な津波

2004年のインド洋津波は、人類が経験した最も破壊的な津波でした。

その高さは30メートルを超え、34万人以上が死亡しました。

この津波は、インドネシアのスマトラ島近海で発生した大規模な海底地震が原因でした。

この地震は、インドプレートがビルマプレートの下に押し込まれ、突然移動して海底を押し上げたため発生し、マグニチュード9.1もの巨大地震でした。

プレートの様子

地震はほぼ10分間続き、記録上最も長い地震の一つにもなりました。

放出されたエネルギーは、ヒロシマ原爆の23,000倍に相当するといわれています。

この突然の移動により、莫大な量の水が時速800kmにも及ぶ超高速で移動し、巨大な波が海洋に広がりました。

震源地に近い沿岸地域、例えばインドネシアは数分で襲われ、インドやアフリカのような遠方の地域は数時間後に襲われました。

津波を引き起こす海底地震以外の3つの原因

海底地震は津波の主な原因です。

ただし、津波を引き起こす他の3つの原因にも注意が必要です。

海底火山の噴火

海底火山の噴火

海底での火山の噴火は、津波を引き起こすもう一つの主な原因です。

海底の火山が噴火すると、破裂したり崩れたりして水を押し出します。それが大きな波を形成し、最終的に津波を引き起こすのです。

地滑り

沿岸の地滑り

また、海底や沿岸部での地滑りも津波を引き起こすことがあります。

大量の岩石、泥、または氷が突然海に落下すると、水を押し出し波を生じさせます。

これらの波が陸地に到達すると危険な場合があります。

巨大な物質の落下

非常に稀ですが、大規模な物体が海に落下するとを引き起こすこともあります。

例えば、隕石です。

大きな塊が水に衝突すると、巨大な波に変わり得る飛沫が生じます。

幸いなことに、このような津波は頻繁に起こりません。

インド洋には津波早期警戒システムがなかった2004年の悲劇は、すべての国にとって警鐘となりました。

彼らは、深海の変化をできるだけ早く検出するため、海底津波計 (DART) ブイを配備しました。

ブイ

海底の圧力センサーは、水面の高さの変化を検出し、この圧力データは、アンテナを搭載したブイに送信され、その後衛星に中継されます。

2004年の津波では、波はスマトラまで約20分、タイまで1~2時間、スリランカとインドまで2~3時間かけて到達しました。

もしブイが津波の波よりも速く情報を送信できれば、当局は津波の危険区域の住民を避難させることができます。

地震と津波の関係については、以下の動画で見ることができます。

The CRUEL Physics behind Tsunamis!
知力空間
error:Content is protected !!