海洋で起こる雷、台風、暴れ狂う波、世界のあらゆる海の状況を再現可能な「屋内海洋」。
それは、巨大な倉庫の中にあります。
アメリカ海軍で「MASK」として知られ、ワシントンD.C.近郊の海軍海上戦闘センター( Naval Surface Warfare Center)に設置された操縦・航海性能試験槽です。
水容量は1200万ガロン(4500万リットル)を超えます。
長さ 360フィート(110メートル)
幅 240フィート(73メートル)
深さ 20~35フィート(6~10メートル)
海では、嵐や波、海流が容赦なく襲い掛かります。
船には二度目のチャンスはないため、混乱を事前にシミュレートし、最悪な状況から生存機会を得られるように以下のような驚きの設備で未来が形作られているのです。
巨大な屋内海洋
216の個別パドルを使って世界中の波を作り出し、実際の海洋で観測されるあらゆる波を再現。
これらの模擬波は、地球規模に及ぶ海軍の作戦で使われる装備や技術などのテストに利用されています。
海軍艦艇や潜水艦などを細部まで精密に再現した縮小モデルで、異なる波の状況での性能を検証します。
ハイテク施設MASK
船は最大15ノット(時速30km)の速度で牽引可能。
穏やかな海から台風まで、プログラム可能な多方向の波パターンを作り出し、波の高さは最大4フィートにも達する最悪の条件を再現。
科学と海が混沌を想定した空間で融合したこのハイテク施設では、米海軍が航空母艦や潜水艦、水中車両の耐荷重試験などがコントロールされた環境で行われています。
メリーランド州カーダーロックは、より広いスペース、より良い水へのアクセス、そしてワシントンD.C.の海軍指導部へのアクセスのしやすさを提供。
アメリカ海軍のグローバルな作戦を支援する8つの研究・試験施設ネットワークの重要な拠点のひとつです。
嵐と科学
巨額の費用がかかる戦艦を不安定な海に投入する前に、台風や異常波、氷山、雷雨に耐えられるかどうかなどを限界までテストすることができます。
船にとって海に出た後の失敗は、しばしば致命的な結果を招きます。
このサッカー場より大きな屋内海洋は、最先端の波発生装置や科学機器が備わった水槽。
それまで空気圧を使って起こせる波には限界があったため、2007年から2013年にかけて、モーターと動作ソフトウェアを備えた電気機械式波板を用いた新しいシステムが導入されました。
太平洋に多い嵐や海流、岩場の海岸線での波の動き、南シナ海のような複雑な地形での波、大西洋で見られる氷の海、バミューダトライアングルの海域、アラスカ湾の過酷な天候や氷山。
静かな海から、波のうねり、台風や嵐の波、異なる角度や多方向から発生する波の状態を再現し、決して均一ではない予測不能な海洋環境へのリスクを軽減するために活用されています。
以前は数ヶ月かかっていた海洋テストや乗組員訓練が、数週間で完了できるようになり、嵐のシミュレーションの全工程をわずか6週間で完了できるといわれています。
海軍作戦の未来、無人化船舶や自律型海洋システムへの期待も高まっています。