水の中で細長い糸のようなものがニョロニョロ動いています。
ハリガネムシと呼ばれる線虫(せんちゅう)です。
彼は、自力で水まで来たのではなく、小さなコオロギから出てきたものです。
信じられないかもしれませんが、この寄生虫は、コオロギの心を操って、水にたどり着くのです。
以下に、コオロギに寄生する線虫「ハリガネムシ」の興味深い寄生方法についてみていきましょう。
ハリガネムシの寄生
水生生物である線虫の旅は、川の中で卵として無邪気に始まります。
糸くずのような受精卵の塊の中から孵化したものは曲がりくねった幼虫に成長。
線虫の幼虫(右)は、同じく川に生息するカゲロウの幼虫(左)に食べられた後、
この尖った部分を使って体内に入り込み、
体を丸めて休眠状態のまま時を待ちます。
線虫にとってのカゲロウ
実は、カゲロウの体内は、まさに線虫にとって必要な場所なのです。
なぜなら、実際に線虫が狙っているのは、カゲロウではなくコオロギだからです。
カゲロウの幼虫が成虫になって陸地に向かう間、線虫はずっときつく縮まっています。
そして、陸地でコオロギが線虫入りのカゲロウを食べると、目的は達成されるのです。
線虫の寄生生活
コオロギの体内で何が起こっているのか想像してみてください。
線虫は、一ヶ月ほどでコオロギが蓄えた脂肪を全て食べ尽くします。
しだいにコオロギは鳴き声を出せなくなりますが、線虫はコオロギを殺しません。
なぜなら水に戻るための手段が必要だからです。
通常、コオロギは、泳ぎが得意ではないので、水域を避けて生活します。
コオロギが無意識に水に飛び込む理由
そこで、線虫は、まるでコオロギの体を乗っ取ったかのように、コオロギの脳にタンパク質を注入して、脳内化学物質を増強させ、水辺まで誘導するのです。
実際に、フランスの科学者は、寄生虫に感染したコオロギがプールに一直線に近づく様子を観察しています。
コオロギが水に飛び込むと、線虫はお尻からにょきっと出て、急いで体外に逃げ出します。
これは、ニューメキシコ大学の研究室での線虫に寄生されたコオロギの映像です。
このコオロギの体内には、たくさんの線虫がいます。
彼らは、時間を惜しむかのように、コオロギの体からまだ完全に外に出ていない状態で、すぐに互いに巻き付き合って交尾します。
なんとも自然が見せる陰惨な光景ですが、ここでほとんどのコオロギは、水に溺れなければ、試練を乗り越えて乾いた大地に戻っていきます。