ウサーマ・ビン・ラーディン氏最後の襲撃を指揮したことでも知られるウィリアム・マクレイヴン海軍大将は、世界を変えることは誰でもできるとし、そのための方法を自身の米海軍特殊部隊SEAL(※1)での経験を交えながら素晴らしいスピーチで語っています。
もし世界を変えたいなら、ベッドメイキングから始めなさい。
「ベッドメイキングのような小さな日課を成し遂げることから1日を始めること」
1節1節に、私たちが大切にすべきもの、生きるとはどういうことかというメッセージが込められたスピーチです。
人生は、不公平で、全ての努力が無駄になったり、失敗に終わったりすることも多くあります。
それが人生というものです。
そして、ここで始めたことが、本当に世界を変えることになるのです。
以下にユーモアを交えて世界を変えることの大切さを示したウィリアム・マクレイヴン海軍大将によるスピーチの抜粋(日本語訳)と実際の動画を紹介します。
参照元:ウィリアム・マクレイヴン
※1)ネイビーシールズ(Navy SEALs)は、海(SEa)、空(Air)、陸(Land)の頭文字からなることから分かりますが、陸海空全においての特殊任務をうけおう部隊。過酷な訓練を乗り越えたものだけに許される精鋭部隊です。
ウィリアム・マクレイヴン海軍大将のスピーチの抜粋(日本語訳)
世界を変えたいなら、まずはベッドメイキングから始めましょう。
毎朝ベッドをきちんと整えることは、一日の最初の課題を達成したことになります。
それは、あなたに小さな誇りを与え、次の仕事にむけて次から次へやる気を起こさせるだろう。
そして、一日の終わりには、1つの小さな達成が、たくさんの課題の達成に変わっているのです。
ささいなことを正しく行うことができなければ、大きなことを正しく行うことは決してできないのです。
もし、今日一日が最悪な日だったとしても、自分で整えたベッドに帰ると、明日はきっといい日になるという励みになるだろう。
SEALの訓練に合格するには、遠泳を完了する必要があります。夜に泳ぐこともあります。
泳ぐ前に、教官はサンクレメンテ沖に生息するすべてのサメについての楽しい説明を簡単にします。
記憶する限りでは、サメに食べられた生徒はいませんが、もし、サメがあなた周りを回遊し始めたら、その場でじっとしておくことを教わるでしょう。
決して泳いで逃げださないこと、怖がって行動しないこと。
もし、お腹をすかせたサメがあなたに襲い掛かってきたら、そのときは勇気をふるいたたせてサメの鼻めがけてめいっぱいパンチしなさい。そうすればサメは、泳ぎ去るでしょう。
世界にはたくさんのサメがいます。
もし、遠泳を完了するには、それらに対処する必要があります。
恐怖や障害が立ちはだかっても、逃げ出さないで、頭から突っ込む勇気をもって挑むこと。
数週間の難しい訓練の後、150人から始まった私のSEALクラスは、わずか42人になりました。
私は、背の高い男たちと一緒のボートでしたが、最高のボート乗組員は「小人(Munchkin)」と呼ばれた小さな男たちで構成されていました。
誰一人として165cm以上はなく、アメリカインディアン、アフリカ系アメリカ人、ポーランド系アメリカ人、ギリシャ系アメリカ人、イタリア系アメリカ人が一人ずつ、そして、中西部から来たタフな子供が2人いました。
彼らは、他の誰よりも漕ぎ、より走り、そして、より泳ぎました。
背の高い乗組員は、いつも小人たちの小さな足ひれをからかっていました。
しかし、どういうわけか、世界のあらゆる場所から来たこれらの小さな男たちは、いつも最後には笑っていました。誰よりも早く泳ぎ、先に岸にたどり着いたのです。
SEALの訓練は素晴らしく平等でした。
成功への意志以外は、何も重要ではありません。
肌の色でも、民族的背景でもなく、学歴でもなく、社会的地位でもありません。
足ひれのサイズではありません。
トレーニングの9週目は地獄の週と呼ばれ、6日間寝ずに、肉体的にも精神的にも教官によるハラスメントが絶え間なく続きます。
地獄の週の水曜日には、泥沼の中を進み、凍えるような寒さを15時間乗り切らなければなりません。
肌を突き刺す風と教官から「やめてしまえ」という絶え間ないプレッシャー。
その水曜日の夕方、太陽が沈み始めたとき、私のクラスは、重大な規定違反を犯したと、泥沼に入るように命じられました。
ドロは、首から上しか見えないほど一人一人を飲み込んだ。
そして教官は言いました。
もし5人棄権すれば、みんな泥から出てもよいと。
たった5人の男が棄権すれば、私たちは厳しい寒さからみんな抜け出すことができるのです。
泥沼を見渡すと、何人かの生徒がギブアップ寸前でした。
太陽が昇るまで、まだ8時間以上も骨まで凍り付くような寒さに耐えねばならないのです。
震える訓練生が歯をガチガチさせる音とうめき声がとてもうるさく、他は何も聞こえませんでした。
そのとき、暗闇の中で、一つの声がこだまし始めた。一人が声を振り絞って歌いはじめたのです。
音程がくるったひどい歌でしたが、大きな熱意が込められた歌でした。
一人から二人、三人と次第に声が重なっていき、やがてクラスのみんなが歌っていました。
教官は、まだ歌い続けるようなら、時間を延長させると脅しましたが、歌は続きました。
すると、どういうわけか、泥は少し暖かく感じ、風は少し穏やかになり、夜明けはそう遠くないような気がしてきました。
たった一人の力が希望を生みます。ワシントン、リンカーン、キング牧師、ネルソン・マンデラ、そしてパキスタンの少女マララ、彼らのような希望を運ぶ人になってください。
一人の人間が、人々に希望を与えることで、世界を変えることはできるのです。
だから、もし世界を変えたいなら、日課を成し遂げることから始めましょう。
人生は不公平で、失敗することも多くあります。
そうすれば、次の世代、さらにそれに続く世代は、今よりはるかに良い世界に住むことができるでしょう。
そして、ここで始めたことが、本当に世界を変えることになるのです。