音は、脳での記憶の定着だけでなく、忘却にまで影響を与える可能性があるって知っていますか?
今週、Learning and Memory誌に発表された研究では、特定の音が、寝ている間に特定の記憶を忘れるのを助けたそうです。
一般的に、記憶にとって、睡眠はとてもに重要です。
新しい記憶をより長期的な記憶に安定させ、将来的に思い出しやすくするのに役立ちます。
しかし、今回の研究では、記憶を強化するのではなく、にぶらせるように実験に手が加えられました。
それは、睡眠中にターゲットとなる記憶を再活性化することで、重複した記憶を忘れるように誘導するというものです。以下に研究を紹介します。
新しい記憶を強化する研究例
科学者たちは、睡眠中の記憶プロセスがどのように機能するのかを正確には分かっていませんが、ひとつの仮説として、脳が記憶を再活性化し、それを表現するために使用するニューロン間の接続パターンが睡眠によって強化されると考えられています。
過去10年ほどの間、研究者は睡眠中に特定の記憶を意図的に活性化させ、人々がよりよく記憶できるようにするための研究を行ってきました。
その一例が、日中に「犬と学校」のようなペアの単語を教え、寝ている間に犬の吠える音を聴かせるというもの。
犬の吠える音が「合図」となり、その単語のペアの記憶を再活性化させるため、結果的に、寝ている間に再活性化されなかった単語よりも、目が覚めたときによりよく覚えておくことができます。
しかし、以下の研究では、単一のペアではなく、同じ単語を重複させた記憶によって、特定の単語の記憶を忘れやすくするという試みです。
特定の記憶を忘れるための研究
ペアは、場所に関する単語、有名人の名前、一般的な物の組み合わせで構成されています。
研究者たちは、2つ1組でペアを作り、共通のものを共有するようにしました。
例えば、「自転車、ベッカム、城」の3つの単語から、「自転車-ベッカム」、「自転車-城」という「自転車」を共通とする2つ1組の単語のペアをつくります。
参加者には研究者が何をしようとしているのかわからないように、両方のペアの間に「pitt ladder」や「jug beach」というような無関係な単語のペアを入れて、間隔をあけて見せました。
そして、「自転車-城」のときには「自転車」という単語の音声が流れるなど、各ペアには何らかの音声による強化が施されました。
それは、学習した単語を1つずつ見せられ、そのペアとなるもう1つの単語を答えるというものです。
結果:重複する記憶は薄れた
翌朝、全員が寝る前と同じ形式の記憶テストを受けたところ、睡眠中に流された単語「自転車」については、参加者は最初に覚えた単語のペア「自転車-ベッカム」の記憶を強め、2番目に覚えた「自転車-城」という(自転車の部分が重なりあう単語ペアの)記憶をにぶらせたのです。
しかし、この結果は、半数が受けた寝る前のテストに出題していないペアにおいてのみ当てはまりました(睡眠前にテストによって強化された記憶には及ばない)。
睡眠中に聴く音によって嫌な記憶を忘れられるかもしれない
ヨーク大学心理学部の研究チームは、次のようにいいます。
この記憶の忘却がどのような脳のメカニズムによるものなのかまだよく分かってはいません。
もしかすると、脳はもともと強い記憶を強化することに集中し、弱い記憶や重なった記憶は信頼できないノイズと見なしているのかもしれません。
これは明らかにまだ初期段階の研究なのです。
しかし、もっと研究を進めれば、音が記憶の再活性化にどのような影響を与えるのかがつながっていくでしょう。
このような予備的な研究は約束できるものではありませんが、記憶に関する研究を前進させるものであることは間違いありません。