車やトラックにはシートベルトがありますが、街中を走る路線バスにはシートベルトがついてさえいません。
これはなぜでしょうか?
シートベルトの安全性は明らかなのに、とても興味深い現象だと思いませんか?
シートベルトを必要としないバスの最大の要因は、コンパートメント(区画)化です。
それは、卵を小さな区画で分けて保管するたまごパックのように、座席を等間隔に配置し、乗客を小さな「区画」に分離することで、衝撃から守っているのです。
さらに、乗客が地面から高く離れた位置に座れること、バスが低速度で走ることなど他にもさまざまな要因があります。
さっそく以下に、なぜ路線バスにはシートベルトがないのかについて詳しくみていきましょう。
シートベルトの役割
クルマづくりにおいては、速度はさておき、乗客の安全性も何十年にもわたってイノベーターの心を掴んできました。
シートベルトは、安全ベルトとも呼ばれ、 衝突や急停止、または事故による負荷の高い動きや強い衝撃から乗員を保護するために 自動車に取り付けられている重要な安全装置です。
事故後にエアバッグが展開した場合に、エアバッグの効果を最大限に発揮できるように体の位置を保つ役割もあります。
さらに、シートベルトは、運転中に揺れないように固定することで、より快適な乗り心地を提供します。
しかし、シートベルトが自動車の安全に欠かせないものであるなら、なぜ バスにシートベルトを取り付けないのでしょうか?
バスの設計・運転手の安全への配慮
まず、バスがすでに他の自動車よりも提供している安全対策を見てみましょう。
バスは町や都市を巡回しながら多くの乗客を運びます。
実際、 多くの子供たちが毎日スクールバスで移動していますね。
それを前提に、バスは安全であるように、または、少なくとも他の車両よりも安全になるように設計されています。
まず、バスは、道路を走る一般的な自動車よりもはるかに重く、大きい点です。
物体の質量はその運動量に正比例するため、バスが路上で別の車両と衝突したとしても、通常は相手の車ほど大きな損傷は受けません。
また、路線バスは、同サイズの他の車両ほど速く走らない傾向があり、バス停間も短距離であるため発進や減速もゆるやかなものです。
ただし、高速バスや貸し切りバスなど、一般道路に限定されていないバスの場合は、シートベルトの着用義務があります。
座席の位置が高い
さらに、乗客はバスの中で地面から離れた高い位置に座っています。
地面からの距離は、小型の自動車やオートバイ 、SUVなどにはないとても重要な自然の安全機能です。
これは、事故が発生した場合、その衝撃は乗客ではなく、バスのデッキによって大きく吸収されることをも意味します。
衝撃から守る区画化
運輸関係者によると、 シートベルトの必要性を上回るほどのバスの最も重要な特徴は区画化です。
座席は互いに等距離に設置され、乗客を小さな「コンパートメント(仕切った区画)」に分離します。
卵をカートン内の小さなコンパートメントに分けて保管することで、損傷から保護する方法をイメージしてみてください。
バスのデザインもこれと同じ原理です。
さらに、前の座席が十分に高く、肉厚で急停車や衝突の際に前方への乗客の動きを抑えてくれます。
(ただし、最前列である運転席とその横の席ではシートベルトを着用することが決められています。)
バスにシートベルトがないもう 1 つの理由は、コストです。
安全効果とコストの問題
アラバマ大学と米国道路交通安全局が行った調査によると、シートベルトを追加すると期待にみあった安全効果は薄いうえ、コストが数十万円から数百万円も上昇することが示されています。
また、シートベルトがあると、乗客のバス停での乗り降りも大変になってしまいます。
全体として、街中や一般道しか走らないバスは、大切な乗客の安全を確保するように設計されているため、シートベルトの装着をそれほど心配する必要はないようです。
ただし、何事も過信のしすぎには注意しましょう。
参照元:no seat belt?