アスリートはなぜ車輪が斜めの車いすを使うのか?

建築・構造

みなさんは、車輪が地面に対して斜めになった車いすに気付いたことはありますか?

自動車にしても通常は、車輪の軸が地面に対して垂直になっています。

しかし、特にスポーツ競技などで使用される車いすの多くが、車輪の下側がハの字に広がっています。

いったいなぜ車輪をななめにする必要があるのでしょうか?

実のところ、斜めの車輪は人間工学的に優れ、長時間使用した場合に疲れにくいことが分かっています。さらに、車いすの効率性、操縦性、安定性、安全性、加速性などが向上するメリットがあるようです。

以下に見ていきましょう。

キャンバー角

専門用語では、車輪の平面と垂直の間の角度は「キャンバー角」と呼ばれます。

一般的に、車輪の上側が車椅子の利用者から離れる方向に傾いている場合はポジティブキャンバーと呼ばれ、

車輪の下部が利用者から離れる方向(八の字)に傾いている場合はネガティブキャンバーと呼ばれます。

後者のデザインは、テニスやバスケットボールのようなスポーツ競技の際に使用される車椅子によく見られます。

そして、それにはいくつかの理由があります。

ハの字の車輪がスポーツ競技に多い理由

ハの字に傾いた車輪を使用する主な理由のひとつは、車椅子の安定性を高めることです。

例えば、ピラミッドを思い浮かべてください。

ピラミッドは上部が狭く、底面が広くなっています。

ピラミッドが何百年もの間、時の試練や風化に耐えてきたのは、もちろん他の要因もありますが、この設計のおかげが大きいようです。

車椅子の斜めの車輪もこれと同じような働きをします。

車輪の角度を上から下に向けて広げると、選手を支える底面が広がり、車椅子がより安定するため、転倒の可能性が低くなります。

次は操作性とハンドリングです。

操作性のメリット

スポーツイベント、たとえばバスケットボールの試合中、車椅子に乗った選手は素早く、しかしスムーズに、しばしば鋭角にターンする必要があります。

傾斜した車輪は、選手が鋭角に加速して急旋回しても転倒しにくくし、安全なターンを可能にします。

また、ネガティブキャンバーは、車椅子の回転半径を短くし、素早くタイトなターンを行いやすくします。

体への負担を軽減する

このような車輪の傾斜は、使用者の腕や肩へのストレスをはじめ、身体的負担を軽減するのに役立ちます。

車輪の上部は下部よりも利用者に近くなっていることから、利用者の肩関節が車輪に近くなり、少ない力で車椅子を押すことができます。

結果、長い時間の使用が可能になるのです。

これは、少ないエネルギーが勝敗を分ける種の競技スポーツでは大きなメリットとなります。

斜めの車輪は人間工学的に考えられている

このような傾斜した車輪は、アスリートだけでなく、すべての車椅子ユーザーにとって実用的なメリットがたくさんあります。

例えば、ネガティブキャンバーでは、車輪の上部が使用者に近くなるため、狭い場所を移動する際に壁やドア枠などに手が接触して表面で手を擦る可能性が低くなります。

また、斜めの車輪は人間工学的に優れ、長時間使用しても疲れにくいことも分かっています。

車椅子の斜めの車輪は、単なるスタイリッシュな機能ではなく、工学における物理学の役割を証明するものです。

この原理を応用することで、効率性、操縦性、安定性、安全性が大幅に向上し、まさに現代デザインの驚異となっているといえるでしょう。

斜めに傾いた車輪をもつ車いすのメリットについては以下の動画でみることができます。

Why Athletes Use Wheelchairs with SLANTING Wheels?