コンサート、スポーツイベント、フェスティバルでは、何千人もの人々が一か所に集まることがよくありますが、限られた空間で膨大な数の人々が集団で動くと、身動きが取れなくなり、圧迫(窒息)される可能性があります。
そこで現在、研究者チームがこの群衆の動きを物理学で理解しようとしています。
そして、チームは、祭りの参加者の非対称な軌道振動を突き止めることができました。
これらの動きは、外部要因や個人の行動によって引き起こされたものではありません。それらは自然に現れ、同じような状況なら他でも再現されるのです。
将来、チームは、このモデルが群衆を監視し、ドミノ倒しや圧死などの惨事を防ぐために使用されることを期待しています。
以下に、群衆によって引き起こされる振動についてみていきましょう。
群衆を流体としてモデル化
物理学者は、お茶の中の分子など、システム内の個々の要素を無視して、代わりに流体力学として知られる、より大きなスケールでの流体の動きを支配する法則に焦点を当てています。
そこで彼らは、群衆を基本的に流体としてモデル化するために、これと同じ原理を群衆に適用しました。
スペインの牛追い祭りでは、参加した人が死亡する事故が発生しています。
パンプローナの通りで繰り広げられるこの祭りは、守護聖人の聖フェルミンを称える儀式で、聖人が怪我から彼らを守ってくれるはずですが、残念ながら物理学がイエスとはいいません。
毎年7月6日、サン・フィネ・フェスティバルの開会式では、長さ50メートル、幅20メートルのコンシストリアル広場には5,000人以上の人々が集まります。
この周囲の建物は、研究者にとって群衆の動きを観察するのに最適な視点を提供しました。
非対称な軌道振動
人々が集まると、彼らは祝いながら広場を動き回ります。
しかし、フェスティバル開始の約30分前には、群衆は1平方メートルあたり約4人の臨界密度に達し、動きのパターンが変わりました。群衆は前後、左右に揺れるように振動し始めます。
これらの動きは個人ではなく群衆全体によって駆動され、外部要因によって導かれるものではありません。
チームは、サン・フィネ・フェスティバルで毎年同じ動きを観察できたほか、21人が命を落としたことで知られる2010年のドイツのデュースブルグで開催されたラヴパレードの惨事の映像でも同じ動き(振動)が観察できました。
これらの状況で観察される振動は、コンサートのモッシュピット(観客がぶつかり合うパフォーマンス)や、大勢の人々が一方向に移動するときに起こるstop-and-go waveなど、他の混雑した状況で見られる動きとは異なります。
群衆に現れる液体のような振動現象
これらは自発的に非対称の軌道振動を形成し、これらのダイナミクスは混沌としているのではなく、定期的に発生したのです。
実際、これらの動きは特定の群衆密度でのみ発生するとてもユニークな特性を持っているため、研究者はこれらの動きの出現は集合的な現象であり、液体のようなものだと結論付けました。
この集合的な動きのダイナミクスは、その容器によって影響を受けます。
たとえば、研究チームはフェスティバルで、警備員がオーケストラを通すために群衆を2つに分け、より密閉された2つのグループができた瞬間を観察しました。
各グループは独立して振動しましたが、今度はより高い周波数で振動しており、振動間の周波数は閉じ込められる度合い(レベル)に依存していることを示しました。
チームは、これらの発見が、動きの速度をリアルタイムで監視することで密集した群衆の危険を予測し、うまくいけば人命を救うための重要なツールになることを期待しています。
流体力学は人命を救うことができるかについては、以下の動画で見ることができます。