皆さんが海でよく目にする巨大なタンカー、見ているだけでなぜか圧倒され、よく浮いてるなと感心させられます。
ここでは、そのタンカーの中でも石油を運ぶ、石油タンカーについてのエンジニアリング的な映像を紹介します。
3Dで内部の仕組みを詳しく見ることができるので、エンジニアを目指す人もそうですが、子供でも大人でも楽しく勉強になる映像です。
石油タンカーってどんな船?
まず、タンカーには、石油などの液体貨物をばら積みで運ぶ原油タンカーと、石油精製品や石油化学品を運ぶプロダクトタンカーの2種類があります。
原油タンカーは大量の未精製原油を採掘地点から製油所まで運搬する船です。
プロダクトタンカーは一般的に小型で、精製された製品を製油所から消費市場に近い地点まで運搬するように設計されています。
この船の主な部分を詳しく見てみましょう。
タンカーの設備
サイズは、内陸用から沿岸、超大型原油タンカーまでありますが、ここでは、超大型原油タンカーを中心に紹介します。
パイプラインシステムは、石油、水、ガス、その他多くの目的の積み下ろしに使用されます。
タンカーには、ヘリポートや重機を船に積み込んだり降ろしたりするためのクレーン、乗組員の滞在する居住エリア、コントロール室、緊急脱出ボート、マストライザーなどが整備されています。
船体の内部
それでは、船体の内部を見てみましょう。
石油貨物タンクは、輸送用の原油を保管します。
安定した航行のために海水などを注入して船の浮き沈みを調整するバラストタンク。
船の後部には、重油と船舶用ガスのタンクがあり、船の動力源として使用されます。
スラッジタンク(黄色)は、処理システムからの廃棄物を保管します。
ここはエンジンルームとポンプルームです。
すべての石油タンカーがまったく同じ設計というわけではありませんが、これが基本的な設計デザインです。
石油を入れる部屋が複数に分かれている理由
大型の原油タンカーには、主に自由表面効果(船舶の液体が部分的に偏って船が傾く)を防ぐために複数の石油貨物タンクの部屋に分かれています。
海はしばしば荒れることがあるため、巨大な部屋に石油をまとめて入れておくと、タンク内の液体が左右に移動するにつれて自由表面効果が起こり、船体が傾くほどの力が発生してしまうからです。
船体の片側への衝撃が強すぎると、船が転覆する可能性があります。
この問題を解決するために、石油タンカーには複数の小さなタンクがあるのです。
それによって液体が移動すると、衝撃は小さなセクションに分割されて船体の片側への影響が軽減されるので、船の安定性が向上します。
船底が二重になっている理由
長さが120メートルを超えるすべての石油タンカーは、石油貨物タンクを外部からの損傷から保護するように二重船体となっています。
外部からの衝撃により船体が裂けたり割れたりすると、海洋への石油流出を引き起こし、海洋生物を危険にさらし、環境を汚染する可能性があるからです。
船体と石油貨物タンクの間の空間は、石油を積んでいないときは水バラストタンクとして使用されます。
タンクが浮力に対抗するのに十分な重量がなく、波によって簡単に安定性を失うためです。
乗組員が作業をしたり、生活しやすくしたりするためには、バラストタンクに水を満たして船舶の底部を水中に沈めて船を安定させる必要があります。
バラストタンクの水処理システム
すべての船舶には水処理システムがあります。
これは、船舶がある場所から海水をバラストタンクに汲み上げて別の場所に運ぶときに、不要な微生物やバクテリアを持ち込む可能性があるため重要です。
水は、有害なバクテリアを処理して海に排出されます。
液体同士が混ざらない工夫
コッファーダム、または囲い堰(かこいぜき)と呼ばれる大きな防水の部屋は、異なる種類の異なる液体タンクを分離するために使用される空間です。
異なる液体タイプが同じ壁を共有している場合、亀裂や漏れがあると、2種類の液体が溢れて互いに混ざり合うことになります。
そのため、2つのタンクを分離するコッファーダムにより、もう一方のタンクを汚染することなく漏れを修理するためのスペースがつくられます。
石油の積みこみ方法
石油が貨物タンクにどのように積み込まれるかを見てみましょう。
石油を積み込むときは、重量配分を考慮することがとても重要です。
重量配分が不均一であると、たとえば、片側が重すぎると、船のバランスが崩れて望ましくない事故につながる恐れがあります。この事故を避けるために、石油は毎回均等に積み込まれなければなりません。
そこでパイプの出番です。
パイプラインは、貨物タンクへの石油の積み込みと貨物タンクからの石油の排出に使用されます。
注入された石油は、ポンプを使用して、パイプを通って下からタンクに出てきます。
15個の石油貨物タンクがある場合、最初のパイプラインは黄色の5つのタンクに、次のパイプラインは、紫の5つのタンクに、3つめは緑の5つのタンクに、それぞれ、重量が均等に分散されるように石油が積み込まれていきます。
実際の石油の色は、黒色です。
石油貨物タンクには、低温によって石油の粘りが出ないように、加熱コイルも装備されています。
マストライザーは、下の貨物タンクに接続されており、石油の積み込みや積み下ろし中に貨物タンク内に蓄積された圧力を解放するように設計されています。
対岸での石油の積み込みや排出には、ローディングアームと呼ばれる装置が使用されます。
これで、基本的には海底パイプラインから直接石油を受け取りますが、石油タンカーが大きすぎてドックに近づくことができないような場合は、石油を小型タンカーに移動してドックまで運びます。