なぜ飛行機にはパラシュートがないのか?

なぜ旅客機にはパラシュートがないのか?宇宙・航空科学

みなさんは、民間旅客機にパラシュートがないことを不思議に思ったことはありませんか?

すべての旅客機には酸素マスクと救命胴衣が装備されています。

これに、パラシュートがあれば、墜落時に命を救える可能性が上がるような気はしませんか?

残念ながら、緊急時は、パラシュートがあったとしても役に立ちません。

以下のような飛行機の設計や飛行高度での酸素、温度の問題などがあるからです。

離着陸時はパラシュートが使えない

ニュースで耳にする墜落事故のほとんどは、飛行機が離陸して上昇するときか、着陸のために地上に戻る際に起きていることをご存知でしょうか。

そのため、離陸と着陸はあらゆるフライトの中で最も困難で危険な時間だと考えられています。

しかし、離着陸時は、飛行機の高度が低すぎてパラシュートを安全に展開することができません。

さらに、離着陸時の飛行機のスピードも速すぎるため、パラシュート着用予定者にとって無事に着陸することは難しいでしょう。

酸素の問題

一般的にスカイダイビングで飛び降りる高度は、地上3,000~4000メートルですが、民間旅客機の高度は、10,000メートル以上にもなります。

この高度の空気はとても薄く、気圧は地上の1/5程度しかありません。

そのため、飛行機には、外の空気を圧縮して客室に送り込むことで気圧を高くする「与圧キャビン」と呼ばれるものがあります。

実際に、緊急時に座席の上から酸素マスクが落下するのはそのためで、機内の与圧が損なわれてもすぐに呼吸可能な酸素にアクセスでき、気を失うことを防いでいるのです。

つまり、この状態で外に飛び出すと酸欠状態になってしまい、呼吸することができなくなります。

温度の問題

飛行高度では、外気温は氷点下40~50度にもなります。

したがって、民間機から飛び降りるパラシュート飛行士は、携帯用酸素ボンベが必要なだけでなく、凍えるような寒さから身を守るための特別なスーツも必要となるのです。

民間機はスカイダイビング用に設計されていない

スカイダイビングは通常、機体の側面に大きなドアがついているか、機体の後部のタラップが開いているようなスカイダイビング用に設計された特別な航空機に乗って行います。

このような構造的な調整によって、スカイダイバーたちは飛行機から安全に飛び降りることができるのです。

一方で、民間の旅客機は、高度10000メートルから飛び降りるようには設計されておらず、飛行中の扉は内側から開きません。

乗客はパラシュートを使う訓練を受けていない

パラシュートは、ただの大きな布で、空中に投げれば自動的に飛び出すといった簡単なものではありません。

パラシュートをタイムリーかつ安全に展開させるためには、多くの小さな部品が完璧に機能しなければならないのです。

2人1組でスカイダイブを行う際にも、ジャンプ前のトレーニングが義務付けられているのはこのためです。

ゆえに、パラシュートを使ったことも見たこともない乗客が、安全に着地するための操作ができる可能性はありません。

ここで、飛行機が急速に高度を下げ、全員がパニックに陥っているシナリオを想像してみてください。

パニックの乗客にドアの前に一列に並ばせ、ジャンプの順番を待たせることはほとんど不可能です。

つまり、パラシュートについて何も知らないパニック状態の乗客を巻き込む危険なジャンプよりも、飛行機が滑空して不時着に成功する確率にかける方ががまだ大惨事をまぬがれる可能性は高くなります。

パラシュートを装備する費用の問題

一般的なパラシュートは飛行機の座席の下に収まらないため、もし装備するなら大幅に小型化する必要があります。

さらに、安全性を考慮して、乗客がパラシュートを展開する準備ができたときにだけ開くように機能するようなシステムも必要となります。

これらすべての要素が、1回のフライトの総コストを押し上げるため、そうなると航空券の価格は高騰するでしょう。

飛行機にパラシュートが装備されていない理由については、以下の動画で見ることができます。

Why Don't They Have Parachutes For Passengers In Commercial Planes?
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