飛行機は、同じ距離や同じルートを通っていたとしても、東から西へ移動した場合よりも、西から東へ移動した方が速く目的地に到達するなど、進行方向によって飛行時間が異なることがよくあります。
これには、地球の自転が関わっていることは確かですが、単純に自転によって目的地がこっちにやってくるからというわけではないようです。
ここでは、飛行機が進む方向によって、目的地に速く到達できることがある理由について、地球の自転の影響の受け方をもとに、分かりやすく紹介します。
地球の自転の向きや速度
地球は1日に1回、西から東に向けて回転してます。
これを「自転」といい、地球は丸いことから、回転の速さは場所によって異なります。
さらに、最も回転速度が速いのが半径の大きい赤道で、南極や北極に遠ざかる(緯度が上がる)に連れて、回転すべき円が小さくなるために遅くなります。
もし、あなたが最も回転が速いといわれる赤道の上にいる場合、その地点の地球の表面は、東に向けて1時間に約1600km、一日では約4万kmも移動していることになります。
時速でいうと、約1600kmという新幹線の5倍以上にもおよぶすごい速さです。
赤道と北極点のほぼ中間地点にあたる北緯45度線(日本でいうと、北海道の上端あたり)でさえ、時速1180kmのスピードで、1時間に約1100kmも東に移動しています。
これを文字通りとると、西に向かって飛び立った飛行機の方が、(東に向けたものよりも)もっと早く楽に目的地に到着するはず。
なぜなら、地球の回転によって、西にある目的地の地面が、飛行機に向かって移動してくると考えられるからです。
飛行機は西に行く方が速く到着できるのか?
しかしながら、実際には、目的地も飛行機と同じように、地球の回転によって(東に向けて)遠ざかっているので、西向きに飛んだからといって速く楽に目的地に到着できるわけではありません。
つまり、「地球が時速1600kmで西から東に移動する」とは、地面も飛行機も、地表の空気でさえも1600kmの速さで同じように移動していることを意味します。
ただし、地球を中心に考えたとき、飛行機が東に向けて時速100kmで移動している場合、実質上は時速1600kmに100kmを足した速度1700kmで移動していることになります。
そして、西に向けて移動する場合は、実質上は時速1600kmに、100kmを引いた速度1500kmです。
東西南北のない北極点や南極点から10キロ以内の地点にいない限り、(飛行機が速く到達するのではなく)地球が東に到達するのを少し遅くしているだけだと考えると分かりやすいかもしれません。
少し難しく感じるかもしれませんが、結論を簡単にいうと、飛行機の飛行時間は、地球の自転そのものにはほとんど影響を受けていないのです。
それでは、なぜ、飛行機は同じルートを飛んでも、西と東向きなど、向かう方向(行きと帰り)によって、飛行時間に違いが出ることが多いのでしょうか?
飛行機が飛ぶ方向によって時間に違いが生じる理由
飛行機は、上空の不安定な大気の影響を受けやすいことが深く関係しています。
主には、上空に吹くジェット気流と呼ばれる強い偏西風の影響によるものです。
ジェット気流とは、地球が丸く、緯度によって回転速度に違いがあるために、風向きが曲がったもの(自転によるコリオリの力と呼ばれる)で、この蛇行した風が追い風となって速度を低下させることがあるのです。
たとえば、日本やアメリカの上空ではよく、西から東に蛇行して流れるジェット気流の影響で、西に向かって飛行する方が、東に向かうときよりも飛行時間が長くなることがあります。
したがって、飛行機の移動時間の違いは、地球の回転そのものというよりも、自転によって生じる偏西風や季節、地形などといったさまざまな要因がからみあって生じるため、決して単純なものではないようです。