宇宙飛行士には、地上では許されても、宇宙にいくと絶対にやってはいけないことが4つあります。
宇宙飛行士にとって、ミッションで過ごす数ヶ月の間、国際宇宙ステーションは「家」です。
しかし、そこは「仕事場」でもあります。
近くに病院も修理工場もない400kmも上空にあるオフィスでは、守るべきルールが以下のように厳しくなるのは当然なのかもしれません。
宇宙ではお酒を飲んではいけない
宇宙では、お酒を飲むことは許されていません。
宇宙ステーションでは、いつなんどき問題が起こるか分からず、それに対応して知恵を絞らなければならないからです。
デリケートな機器や実験も多いので、酔った宇宙飛行士がいると簡単にダメになってしまいます。
実は過去には、お酒をよしとする時代もありました。
1970年代にアメリカが初の宇宙ステーション「スカイラブ」を打ち上げたときの話です。
宇宙ステーションでのメニューにシェリー酒が登場すると発表したところ、NASA本部に怒りの手紙が殺到したそうです。
どうやら宇宙飛行士が宇宙でお酒を飲むことを良しとしない人たちは多いようです。
その後、NASAは宇宙でお酒を飲まないというポリシーを作り、時の試練に耐えています。
アポロ8号でも、クリスマスディナーのお供にブランデーのミニボトルが配られましたが、指揮官のフランク・ボーマンは、地球に戻ってから飲むようにと命じたそうです。
しかし、例外もあります。
ロシアの宇宙飛行士は、1980年代から宇宙でお酒を飲むことを許可されているそうです。
現在、宇宙飛行士はアルコールを飲めないだけでなく、パンも食べてはいけないことになっています。
宇宙ではパンを食べてはいけない
宇宙では、パンをはじめ、パンくずを出すようなものも食べてはいけません。
1965年のジェミニ3号のミッションのことです。宇宙飛行士のジョン・ヤング氏は、無断でコンビーフサンドイッチを宇宙船に持ち込んで、こっそり食べようとしました。
すると、一口食べただけでパンは崩れてしまい、あちらこちらにパンくずが散らばってしまったのです。
ヤング氏はNASAのスタッフにひどく怒られたわけですが、それには理由があります。
パン粉が宇宙船内を漂うと、科学機器や重要な換気口に入り込む可能性があるからです。
また、目にゴミが入ったり、宇宙飛行士が食べ物の破片を吸い込んだりする危険もあります。
宇宙飛行士の食事は、パン粉の混入を避けるために、ほとんどがチューブ入りのグミか、一口サイズに圧縮・脱水されたキューブ状の食品、または、ゼラチンでコーティングされたものです。
現在では、宇宙飛行士は何ヶ月も宇宙に滞在することを考えて食品技術を向上させたため、宇宙での食事は地球での食事に近いものとなっています。
例えば、サンドイッチやピザのような食べ物も可能ですが、パンの代わりにトルティーヤで提供されます。
宇宙飛行士は洗濯をすることが許されない
宇宙では洗濯ができないため、同じ下着を3、4日着たり、同じ作業着を何ヶ月も洗わずに着続けるも人もいるそうです。
宇宙で効率よく洗濯する方法はなく、宇宙ステーションの限られた水を使って洗濯するのはもったいないからです。
幸いにも、宇宙ステーションはとても清潔で、温度も管理されているので、すぐに物が汚れることはありません。
また、宇宙では宇宙飛行士の嗅覚が減退しやすいため、においはそれほど問題ではないのかもしれません。
しかし、宇宙では筋肉や骨の量を維持するためにたくさん運動しなければならないので、宇宙飛行士の服はいずれは汚れてしまいます。
その時は、宇宙ステーションのゴミと一緒に、地球の大気圏で燃やしてしまうのです。
しかし、これではもったいないので、将来的には、宇宙飛行士の下着をバクテリアに食べさせる計画が考えられています。
バクテリアが汚れた下着を消化すると、有用なメタンガスが放出されるので、それを宇宙船の動力源に活用してしまおうというものです。
下着で動く宇宙船ですよ!
なかなか素晴らしいアイデアですね。
妊娠をしないこと
現在、人間が宇宙で生活している唯一の場所「国際宇宙ステーション」には、6人のクルーが生活するための388立方メートルの居住スペースしかありません。
限られた空間で同居しながら、プロフェッショナルな関係を保たなければならないのです。
仮に、宇宙飛行士が宇宙で妊娠したらどうなるのかも、まだ分かっていません。
無重力状態であるうえ、宇宙光線の問題など、発育中の胎児にはさまざまなリスクが考えられます。
また、帰還時の揺れや窮屈な環境も妊娠中の宇宙飛行士には不利に働くでしょう。
その他にも、光の速さを越えてはいけないとか、宇宙服を着ないで外に出てはいけないなど宇宙にはたくさんのルールがあります。
もし宇宙飛行士がパンを食べたり洗濯をしたりしたくなっても、地球の家に帰るまで待つしかないのです。