この写真は、北極圏に付近で撮影されたトナカイの群れです。
円に陣形を取り、群れ全体が回転して走りながらどんどんスピードをアップさせています。
人々が「トナカイサイクロン」と呼ぶ行動です。
一体、トナカイはなぜ竜巻のように回転しているのでしょうか?そもそもなぜそれが起こったのでしょうか。
実は、2016年にこのトナカイサイクロンに雷が落ちたことがあります。
以下に、トナカイサイクロンが起こる理由について、雷が落ちたときの状況もあわせて紹介します。
捕食者を混乱させる行動
科学者たちは、ロシアの北極圏付近に集まってトナカイサイクロンについての生態学的調査を始めました。
まず、トナカイが群れで回転をはじめると、その一帯が混沌とし、捕食者やハンターが攻撃する個体を選ぶのは非常に困難になります。
これは、魚が群れを形成すると考えられる理由の1つでもあります。
実際には、トナカイの群れはさまざまな形をしており、常にこのようなサイクロンであるとは限りません。
では、トナカイサイクロンが起こるのはどのようなときなのでしょうか?
現在、2つの理由が考えられています。
子供を守るため
1つ目の説は、ジャコウウシが子牛を守るために、円形になるのと同じ考えです。
ジャコウウシの群れが脅かされると、親たちは、角を外側に向けて小さな円を描きます。
円陣のすばらしい点は、子牛を群れの真ん中に置き、最も弱いメンバーの周りに保護となる盾を形成して安全を確保することです。
同じようなことがトナカイでも起きているのではないかと考えられています。
これが、一番若いトナカイがサイクロンの中で保護されているという最初のサイクロン説です。
次の説は、最初の説ほど認められていません。
トナカイの特性による偶然の産物
トナカイは、群れでは目の前にいるトナカイについていくという心理的なトリックに陥る可能性があります。
トナカイの群れがいて、何らかの理由で群れが内側に曲がり、先頭のトナカイが、後方のトナカイを追いかけ始めたため、偶然に群れの陣形がループ状に代わり、円になっていったとする説です。
実際に起こっている、似たような現象がこれです。
ロシアで一台の車が、羊の群れに閉じ込められ、出口のない円陣の中で永遠に羊が回り続けています。
これは2つとも起こり得ることです。
子を守るためか、単に無意識に前に続いているからなのか、いずれにせよトナカイは円状のサイクロンを形成しています。
トナカイサイクロンに雷が落ちたらどうなる?
では、嵐が来て、そのトナカイサイクロンに雷が落ちた場合、何が起こるでしょうか。
これは、2016年、ノルウェーのハーディン・ユルビダ国立公園で実際に起こったことです。
300頭以上のトナカイが、嵐が吹き荒れる中、あるエリアに集まってトナカイサイクロンを形成していました。
突然雷が落ち、地面が帯電し、そこにいたトナカイ全員が瞬時に心停止したのです。このとき、323頭のトナカイが命を落としました。
研究者たちは、現場を注意深く見守っていましたが、その後に予想外のことが起こります。
トナカイがすべてそのまま残されていたため、まず、当然ながら腐肉食動物がやって来て、キツネやクズリなどの哺乳類がトナカイの肉を求めてこの地域に頻繁に現れ始めました。
ワタリガラスやワシなどの腐肉食動物も集まり始めました。昆虫も大量に発生し、死骸を食べていたそうです。
そして、これらの動物たちは、この地域に非常に重要で鍵となるものを持ち込みます。
それは、たくさんの種です。糞の中にたくさんの種、特にクローベリーの種がありました。
クローベリーは青みがかった黒い果実をつける花の咲く植物で、この地域のキーストーン種です。
クローベリーが近くにあれば良いことです。
この地域全体で最も重要な植物種の1つであるクローベリーが、トナカイが腐っていたまさにその場所で育ち始めたのです。
多くの死に悩まされていた場所に、突然、生命を育む場所が生まれたことは、生物学者らにとって非常に興味深い展開だったそうです。
トナカイサイクロンに雷が落ちたストーリーは、以下の動画で見ることができます。