みなさんは、ほとんどの飛行機が白色や比較的明るい色で塗られていることに気づきましたか?
これは本来の機体の色ではなく、わざわざ白く塗装したものです。
それらの飛行機の塗装には、なんと毎回246リットル以上ものペンキが使われているそうです。
では、なぜそこまでして飛行機に色を塗る必要があるのでしょうか?
以下に飛行機が白色や明るい色で塗られている理由について、マサチューセッツ工科大学宇宙航行学の教授R.John Hansman氏による説明をもとに分かりやすく紹介します。
飛行機に明るい色を塗る理由
なぜ、ほとんどの飛行機が白色を採用しているのか、その主な理由は、太陽光を反射させるためです。
太陽光を反射して遮熱効果を高める
飛行機の機体から太陽光を反射させることによって、機内の温度が上がるのを防げるだけでなく、太陽の放射線から受ける機体のダメージを防ぐことができます。
それは基本的に、私たちが日焼け止めを塗るのと同じ原理です。
たとえば、日差しが強い日に、黒や紺といった光を吸収しやすい暗い色のTシャツを着ている人は、白いTシャツを着ている人に比べて、熱がこもって体温が上がりやすくなりますよね。
飛行機にとって、機体の温度が上がりにくくする試みは、冷房のコストを下げる効果もあるというわけです。
機体や部品の劣化を防ぐ
明るい色の塗装は、費用を節約できるだけでなく、機体を太陽光から守る役割もあります。
一部の光を吸収する他の色とは異なり、白色は、ほとんどすべての光を反射します。それは、飛行機に降り注ぐ太陽光が、機体の表面温度を徐々に上げて劣化させるのを防ぐことにつながります。
これは、飛行中だけでなく、滑走路に停車しているときにも役立ちます。
明るい色は特に、 機体に使われているプラスティック製の部品、または、カーボンファイバー(炭素繊維) やグラスファイバー(繊維ガラス)といった複合材料の劣化を防ぐうえでとても重要な役割があるのです。
プラスティック素材は、主にノーズコーンと呼ばれる飛行機の円錐(えんすい)状の頭で、レーダーを覆う透明のカバーに使われています。
そして、複合材料は、主に飛行機の舵取りを行う操縦翼面(そうじゅうよくめん)に使われています。
これらは、飛行機のなかでも重要な部位で、通常白色や明るい灰色に塗られています。
また、飛行機の安全上の問題から、ひび割れやへこみなどを定期的に検査するときに、白だと表面の損傷部分や腐食、オイル漏れなどが暗く見えるので見つけやすくなります。
色の劣化が目立ちにくい
もっとカラフルな飛行機に乗りたいと願う人は多いかもしれません。
実のところ、飛行機を色鮮やかに塗ることがいけないというわけではありません。
色を塗った場合に起こり得る問題のひとつに、時間が経つと酸化して色が劣化してしまうことがあります。
仮に赤いペイントを施した場合、しばらくすると太陽光やさまざまな環境条件にさらされることによって、おそらく赤色は白っぽく色あせてしまうでしょう。それは白い塗装よりもはるかに目立ちます。
なによりも、飛行機の塗装は、費用や人的資源、時間などにおいて、大きな投資が必要となるため、科学的根拠以上に、費用面の問題は航空会社として無視できないでしょう。
白色に比べて、絵画のような装飾はどうしてもコストが高くなってしまいます。塗るときだけでなく、上記のような劣化に応じて美的な魅力を維持するためにも多くの塗料や作業が必要となるでしょう。
塗装量が増えると、もちろん全体の重量も増え、運用コストも増加します。
さらに、白い飛行機は、色付きの飛行機よりも、再販価値が高いことから、白の選択は、理にかなったものだといえるでしょう。
機体に色を塗らないと逆にコストがかかる
過去には、飛行機に全くペイントを施さないという試みを行った航空会社もあります。
アメリカ最大の航空会社と呼ばれるアメリカン航空もそのひとつで、長い間、機体の金属部分にはペイントを施していませんでしたが、むきだしになった金属部分には大きな問題はありませんでした。
ただ問題なのは、金属に付着した汚れで、アメリカン航空は、それらの時間の経過に伴う汚れの研磨作業に、多大な時間とお金を費やしてきたのです。
そういったことから、現在は、ほとんどの航空会社が明るい色の塗装を採用することにいきついたようです。