なぜアボカドは高いのか?アボカドブームが水不足につながる理由とは

2020年5月 8日

アボカドは世界で最もトレンディな食品の1つとなりました。

世界で最も栄養価の高い果物としてギネスに登録され、ミレニアル世代の健康食品用ポスターにも起用されるなど、今やアメリカの食卓では欠かせないスーパーフードでもあります。

しかし、需要が増えるにつれて、アボカドの価格はますます高まり、2019年にはわずか1年の間に、世界の平均価格がほぼ2倍近くまで上がりました。

そもそも、なぜアボカドはこれほどまでに高いのでしょうか?

ここでは、アボカドがなぜ高いのかについて、栽培に必要とされる莫大な水量をはじめとする隠された生産コストを中心にアボカドビジネスの裏側を紹介します。

今、世界的なアボカドブームが引き起こされる一方で、それが水不足の深刻化につながるのではないかと心配する声があります。

問題はそれだけではありません。アボカドの価格の高騰化によって、果実の盗難事件の増加や、アボカドビジネスに目をつけた麻薬組織による生産業者への無理な取立てに関する問題も引き起こされています。

アボカドはどのようにして広まったのか?歴史と背景

ペルーの考古学者は、紀元前750年まで遡る古代インカ人のミイラとともに、栽培されていたとされるアボカドの種子を発見しました。

アボカドの名は、紀元前500年のアステカ族のナワトル語「ahuacatl(アフアカトル)」に由来します。この言葉は訳すと「睾丸」を意味します。これについてはアボカドの形や質感、果実が木からぶら下がっている様子などからイメージはわきやすいかと思います。

そして16世紀、スペイン人がメキシコと中央アメリカに侵入し、メソアメリカ文明が繁栄した地域に勢力範囲を広げたとき、「ahuacatl」は征服者らによってこのナワトル語に発音が似た「aguacate」と改名されました。

アボカド農業はその後、主に中央アメリカと南アメリカを中心に数百年にわたって発展しましたが、発芽条件の問題などから19世紀後半まではそれ以外の地域でみられることはほとんどありませんでした。

アボカド市場のマーケティングが始まったのは1900年代の初頭。1920年、ニューヨークでは、「サラダフルーツの貴族」とうたわれた広告によって、裕福層のための珍味としてブランド化したアボカドが宣伝されました。

しかし、カリフォルニアの生産者の一部が、「AGUACATE」という呼び名が発音しにくく、大衆市場への受けが悪いことに気付いたことから、カリフォルニアアボカド協会を設立。

1950年代までに、このカリフォルニアアボカド協会の生産規模が大きく成長したことから、アボカドの価格はそれぞれ約25セントにまで値下がりました。

アボカド栽培には並外れた量の高価な資源が必要

60年代のアメリカ移民の波とともに、ラテンアメリカ人のアボカドへの愛も米国に持ち込まれ、アボカド人気はさらに高まりました。

しかし、需要が高まるにつれて、安定した共有が求められるようになり、アボカド農業の大規模化がどれほど困難なものかが浮き彫りとなり始めました。

アボカド果樹園を繁栄させるためには、並外れた量の高価な資源が必要となります。

まず、高品質なアボカド栽培に欠かせないのが大量の水です。その他にも、肥料をはじめ、剪定、害虫駆除、木の日焼け防止など、さまざまな要素が必要となるのです。

アボカド果樹園の植樹においては、何年も前から認定された苗床に注文しておかないと仕入れられません。

ある農家では、平均して土地1エーカー(4047平方メートル)あたり100,000ポンド(45,359 kg)を生産する場合、約100万ガロン(4546.09キロリットル)の水が必要となるため、1ポンド(0.45kg)あたり100ガロン(378.5リットル)、つまり、8オンス(約226グラム)の果物をひとつ育てるために約50ガロン(約189リットル)もの水が必要となります。

しかし、農業は母なる自然が相手。農家にとって、災害や干ばつといった手に負えないものを管理して安定的に大量の水を確保することは不可能なことです。

空前のアボカドブーム

アボカド人気は、1980年代のダイエットブームから高まりはじめましたが、1989年までのアメリカでの消費量は1人あたり平均1ポンド(約453.6グラム)程度でした。

どうやらこの10年間は、低脂肪ブームが消費者を後押ししたため、アボカドの隠れた栄養分よりも脂肪分が注目されたことであまり受け入れられなかったようです。

一般的に、食品の脂肪の話になると、人々はメディアの影響によってあまりよくないイメージを抱く傾向があります。

アボカドにはたくさんの脂肪分が含まれますが、実のところ、この脂肪は一価不飽和脂肪と呼ばれる種で、心臓にもよい健康的な脂肪です。

そんななかで、アボカドが運命の復活を成し遂げたのはミレニアムの変わり目、意外にも政治的な策略によるものでした。

2005年、米国農務省は、90年におよぶメキシコ産アボカドの輸入禁止を解禁し、50州すべてに輸入することを許可しました。

当初、その決定は、アメリカ生産者の売上を最大20%削減させる恐れがあるとして、カリフォルニアの生産者を怒らせていました。

しかし、実際には、それまで一貫性のない需要だったアボカドが、メキシコからの供給によって安定的に普及できるようになったため、小売業者がアボカドのマーケティング戦略として販売やフードサービスプロバイダー、レストランの常設メニューなどに一貫して利用し始めたことで、アボカドブームが引き起こされたのです。

その後アボカドは、年中を通して人々に楽しまれるようになりました。なかでもアメリカのスーパーボウル・サンデーにおけるアボカドの消費量は、約2億ポンド(約9071万キログラム)にも相当すると推定されています。

しかし、その量を生み出すために必要な要素を考えると、アボカドがなぜ値上がりし始めたのかを理解できるでしょう。

アボカド栽培に必要な大量の水が水不足を深刻化させる可能性

専門家によると、1ポンド(約0.45キログラム)のアボカドを育てるには平均して約270リットルの水が必要です。

したがって、スーパーボウル・サンデー1日に消費されるアボカド2億ポンド分を作り出すには、540億リットルもの水が必要となる可能性があります。これは、干ばつや熱波がアボカド産業に壊滅的な被害をもたらすことを暗に示しています。

実際にこの問題は、過去7年間にカリフォルニアで起こりました。カリフォルニア州では渇水や干ばつは珍しいことではく、それが記録的なアボカド価格の高騰を生んだのです。

チリなど他の一部の国では、アボカドブームによって、緑豊かなアボカド果樹園が地下水を吸い尽くし、干ばつを悪化させて、水不足を深刻化させているとの非難が高まっています。

アボカドの代用となる食べ物はあるのか

今、おいしいくて健康にもいいアボカドは、ディップをはじめ、サラダや寿司などレストランやカフェでもたくさん使われています。

Instagramに「avocado」と入力するだけで、1,000万件を超える検索結果が表示されることからもよくわかります。

たしかにアボカドは他の食品では再現できないほどの栄養素を一つの果実に含みますが、スーパーフードとして誇大宣伝されすぎていることも否定できません。

たとえば、一価不飽和脂肪は、オリーブオイルやオリーブ、ナッツ、種子などにも見られますし、ビタミンやミネラルに関しては、ほうれん草やブロッコリーといった緑黄色野菜などでも摂取できます。

したがって、アボカドなしでそれらの栄養素を摂取する方法がないわけではないのです。

アボカド栽培に隠された労働コスト

加えてアボカドは、成長し、剪定され、摘み取られた後でも、新鮮で熟したものを世界の隅々まで届けるために、高価な流通手段が求められます。

たとえば、あなたがフィラデルフィアに住んでいるとしたら、そこで熟したアボカドを買いたい場合、それにはカリフォルニアから緑の状態のアボカドを船で出荷したのち、熟成センターに送り、それらを温めてエチレンを入れ、すべて熟してから小売店に移動する必要があります。そのようにして、あなたはやっと食べる準備が整った作物を購入できるのです。

カリフォルニアから市場に直接出荷された緑色のアボカドを購入した場合、7日から10日間かけて自分で熟成させる必要があるため、10日間も待つことを嫌がる消費者も多いようです。

アボカドビジネスが生んだ世界的問題

今、アボカドの価格の高騰化によって、世界中の果樹園や配達用トラックからの盗難事件が引き起こされています。

ニュージーランドでは、果樹園の70%が盗まれた生産者が、その後武装した夜間パトロールと電気柵を導入しました。

世界の三分の一の生産量を誇るメキシコでは、収益性のあるアボカドビジネスに目をつけた麻薬組織カルテルによる「血のアボカド貿易」が問題となっています。

特にメキシコの生産量の80%を占めるミチョアカン州でカルテルは、土地のサイズと作物の重さに基づいて、農民から交渉不可能な手数料を強要しています。

そんななかで、食生活の背後にある倫理を重視した一部のレストランは、アボカドのボイコットを始めました。

専門家は、2050年までに水不足によって50億人が影響を受ける可能性があり、メキシコと南アメリカを含む、いわゆる干ばつ地帯の降雨は減少すると予測しています。

しかし、環境悪化の証拠が高まる一方で、アボカド産業は依然として消費者の需要とともに成長しています。

おそらくこのままでは、世界の特定地域での、持続的なアボカド生産が維持できなくなる日もそう遠くはないかもしれません。

参照元