誰かが海に石を投げたら、それはすぐに沈んでしまいます。
では、なぜ船は浮くのでしょうか?
今回は、重たくて巨大な鉄の塊「船」が水に沈まずに浮かぶ理由について分かりやすく紹介します。
どうやら重量のある金属製の船が浮くのは、その形が関係しているようです。
物が浮かぶための「排出量」
重いものは水に沈むはずです。
私たちがお風呂に入ることができるのも、身体が沈むからです。
では、なぜ船は水に浮かんでいるのでしょうか?
そもそも物体が沈むか浮くかは、「排水量(Displacement)」と呼ばれるものに大きく関係しています。
排水量とは、物体が押しのけた水の量ことです。
例えば、満ぱいのコップの中に氷を入れると、水がこぼれてしまいますよね。
それが排水量?
そうです。こぼれる水の量は、実は氷が占める空間の量と同じなんです。
お風呂に入るときを考えてみてください。
バスタブに水を上いっぱいまで入れた中に、あなたが入るとします。
すると、床は水浸しになりますね。
それはおそらく大量の水です。なぜなら、その水の量は、あなたが占拠している空間の量と同じだからです。
「こぼれる水の重さ」と「水に沈めた物体の重力」が同じ=浮かんでいる
さて、物体が浮かぶことができる秘密の1つは、脇に押しのける水が物体と同じくらい重くなるように十分な水量を排出しなければならないこと。
では、浴槽で実験をしてみましょう。
小さなお椀と、いくつかの石を用意します。
水の中にお椀を入れると、お椀は浮きますね。
なぜなら、お椀の底がいくらかの水を排出させているからです。
このとき、脇に押し出された水の量はボウルと同じ重さです。
さて、お椀に小さな石を入れます。
さらにもう1つ、もう1つ。
お椀は重くなり、そのたびに少しずつ沈みます。
お椀は重くなっても、重くなった量と同じ重さの水を押し出しているので、押し出される水の量はお椀と同じ重さになり、浮かびます。
このとき、脇に押し出した水の重さがそのまま「浮力」の大きさとなります。
お椀が押しのける水の量がお椀と同じ重さである限り浮きますが、もし石を入れ過ぎた場合、お椀は移動する水よりも重くなり、沈んでしまいます。
浮力とは
浮力とは、物体が浮かぶとき、その物体を下から上向きに押し上げる力のこと。
では、豪華客船の場合はどうなるのでしょう?
なぜ船は重たいのに海に沈まないのでしょうか?
船はできるだけ多くの水を押し出すように設計されています。
船は幅が広く、船底が大きく広がっているため、大量の水を脇に押し出すことができます。それこそ何万トンもの水の量です。
一方で、船の沈んだ部分は空洞になっており、押し出した水の重さと船の重さが釣り合うようにつくられているのです。
つまり、浮くのに十分な量の水を押し出した結果、浮力を発生させることができているです。
もちろん、船の底に穴が開いて、この水に沈んでいる部分に大量の水が入り込むとそれだけ物体にかかる重力(体積当たりに下向きにかかる力)が大きくなり、浮力は失われていきます。
穴から大量の水が入り、船自体が排出量よりも重くなると、船は沈んでしまうのです。
船を浮かばせる「浮力と重力の関係」
いかがでしたか?
ちなみに、これは古代ギリシャの物理学者が発見した法則で、彼の名にちなんで「アルキメデスの原理」と呼ばれています。
巨大な金属製の重量物を浮かす方法を見つけたなんて、なんと素晴らしいことでしょう。