車いすのパラリンピック水泳選手トム・ミアズガ(Tom Miazga)氏が、背泳ぎのキャッチとプルの練習を3通り実演しながらポイントを解説したものや、メダリストのマット・グレイバーズ氏による背泳ぎのアドバイスを紹介します。
オリンピック選手自らが、背泳ぎについて説明し、具体的にどのように自分の泳ぎに適応させるかについてヒントを与えています。
背泳ぎのキャッチとプルの練習方法3通り
トム選手が実際に行っているもので、バタ足や下半身の力を借りずに、ボディバランスを安定させてスピードアップするために、ストロークや体のコアな筋肉を有効に使って泳ぐ3通りの練習方法です。
頭上で一度手をそろえる
背泳ぎのストロークの際、リカバリーの手が頭上に戻るまでもう一方の手をそのまま伸ばした状態にし、両手が頭上に揃ってから次のストロークを始めます。
頭上の手は、肩が耳の近くにつくようにしてしっかりと伸ばします。
ポイント
トム選手は、背泳ぎの泳ぎ始めのキャッチを何よりも重要視しています。
水面に手を入れたら、体のコアな筋肉を使って傾きながら、すばやく水をしっかりとつかみ、肩の下から、肘、手首まで前腕全ての部分で水を感じながら押し出すように意識します。
手を垂直に天井向けて上げてそろえる
ストロークのリカバリーが半分まできたら、指先まで伸ばして天井をさし、もう一方の腕のリカバリーが同じ位置にくるまでその状態(片腕を垂直にあげた)をキープしたまま背泳ぎをします。
ポイント
背泳ぎの間ずっと、コアな筋肉全てに意識を集中させて、お尻やおなかの位置が下がらないように、バランスを取ります。
プッシュの終わりで両腕をお尻の横でそろえる
ストロークをプッシュの終わりで一端止め、もう一方の手が同じ位置にくるまで、そのままお尻の位置でキープします。
ポイント
次のストロークのキャッチとプルを肩を使って力強くすばやく行う練習になり、背泳ぎのスピードアップにつながります。
ちなみに、トム・ミアズガ氏の好きな言葉は、「Shoot for the moon, even if you miss, you’ll still land among the stars/月を目指しなさい。たとえたどり着けなくても、どこかの星につくだろう(大きな目標を目指すことで、必ず何か価値のあることにたどりつける)」です。
パラリンピック水泳選手が実演する背泳ぎのキャッチとプルの練習動画
メダリスト マーガレット・ホーゼルによる背泳ぎのキャッチの練習方法
入水時の手があまりにも柔らかすぎる場合、背泳ぎの最初のキャッチを逃している可能性があります。下記は、プルの開始時に、より効率的に前進させるトレーニング方法です。
- 泳ぎのリズムを作ることを意識し、入水するときの手を少し硬めにするような感覚で泳ぎます。
- ストロークを3回行います。このとき、3回目のストロークで、前方にしっかりと手を伸ばして小休止してください。
- そして、強いキックで前進します。
練習のポイント
水泳で効果的に前進するためには、リズムを重視する必要があります。
まず、テンポトレーナーをゆっくりなリズムに設定し、両手のストロークを切れの良さを意識しながら交互に繰り返します。同時に、前方の手をしっかりと伸ばすように注意してください。
その後、ストロークのテンポを上げていきますが、どんなにストロークを速くしても、前方に伸ばした手にしっかりと焦点を当てて、必ずストローク3回ごとに小休止の間(ま)を作ってください。
このようなすばやいキャッチよりも、前方に伸ばした手に焦点をあてる練習は、誰にとっても有効に働くというわけではありませんが、長距離選手にとって理想的な練習であることがよくあります。
メダリスト マット・グレイバーズによる背泳ぎのアドバイス
過去に6個のメダルをもつマット・グレイバーズ(Matt Grevers)氏は、2011年以前は、強いキックや腕の動きなどをそれぞれ別で考えおり、全ての動きがひとつのユニットになっていることに気づけていませんでした。
しかし、この繋がりが分かった時から、全く新しいレベルに到達しました。
オリンピック選手は、一見するととても滑らかで、かつ、リズミカルで軽やかな泳ぎをしていますが、一方でおなかは可能な限り硬く引き締められており、体のコアをハードに使って左右の動きのバランスを取っています。
例えば、背泳ぎの時は、右腕を入水したら、体のコアをひねって、胸郭でプルの動きを生み出し、体全体を使って泳いでいます。