水泳でより速く泳ぐための合理的で正しいストリームラインの姿勢について、メダリストの親子が運営するレースクラブ(The Race Club swim camps)のGary Hallコーチによるアドバイスをはじめ、
GoSwimによるストリームラインがなかなかまっすぐにできない子供に、逆に抵抗を生む泳ぎ方をさせて適切な姿勢に導く練習方法など、
ストリームラインに関するテクニックを盛りだくさんで紹介します。
ストリームラインの基本的な姿勢
水泳で速く泳ぐために最も大切なことはストリームラインだといわれています、まずは、「何が正しいストリームラインなのか」を基本的な姿勢から理解していきましょう。
世界で最も技術的に優れたストリームラインを作れるのはマイケル・フェルプス(Michael Phelps)選手だといわれています。
多くの水泳コーチは、マイケル・フェルプス選手のようなストリームラインを作るには、腕(上腕二頭筋)を耳の横でギュッと絞ると教えていますが、イメージがわきにくい人のために以下にやり方とポイントを具体的に紹介します。
やり方とポイント
参照元:https://youtu.be/1GjtyBwaGdM
まず、アゴを胸の上につけて、頭の後ろで肘同士があたるくらいまでできる限り腕をギュッと絞ります。
この時、手首は重ね合わせて、親指で手が離れないようにしっかりと固定します。
指先は、まっすぐ前方を指します。
肩は、自分が限界値だと感じた地点よりももっと前方に伸ばして固定します。ポイントとしては、肩が耳よりも前方に届くイメージで伸ばします。
こうすることによって、ストリームラインの前方の姿勢がよくなるだけでなく、体全体を(ボディースーツを着ている以上に)タイトに締めることができます。
そして、最も大切なことは、アゴを引いた状態を維持し続けることです。アゴが浮いて頭が上がってしまうと、ストリームラインの流線型が失われるので注意してください。
アゴを引いた姿勢を横から見ると、アゴがボディーラインの範囲内におさまっているため、正面から受ける水の抵抗を妨げていないことが分かります。
クロールで体の幅をよりタイトに保つコツ
水中では、水にさらす体の面積が少ないほど水の抵抗がなくなるため、滑らかに進み、効率的にスピードアップできます。
このように、クロールで体の幅をタイトに保つことは、水(流体)力学的な意味があるため、狭いチューブ(筒)の中を体全体が通るのをイメージしながら泳いでみてください。
ときには、コーチにゴール地点(正面)から見てもらい、ストロークの手や腕が体の後ろに隠れているか、また、上から見てもらい、ストロークがプールの底のラインと平行に移動しているかなどを確認してもらいましょう。
実際に人に泳ぎを確認してもらうと、自分が思っている泳ぎとは異なることが多いので、人の視覚によるフィードバックも大切です。
ストリームラインは背中を反らせすぎないこと
世界中の水泳選手のためのクリニックを運営しているEffortless Swimmingによると、泳ぎをみるときに、なによりも先に確認するのが「姿勢」。
クロールを泳ぐときに背中が反っている状態では、胸からおなかにかけて、前方からやってくる水を受ける面積が大きくなるので、その分水の抵抗も大きくなるだけでなく、明らかに体のライン(姿勢)やバランスを崩してしまいます。
次に、太ももへの水の抵抗です。ウェストから太ももにかけてが斜めに下がることによって、そこに水の抵抗が生まれます。
最後は、お尻の上側への水の抵抗です。背中が反ることによって、体の下側だけでなく、ウェストとお尻の角度にアーチ状の隙間が生まれ、水の抵抗が増します。
それでは、余分なエネルギーを使いムダな労力が消耗されてしまします。
ストリームラインでは、背中と首が、長くまっすぐに伸ばされている姿勢を保つのがなによりも重要となります。
この水中でのまっすぐな体のポジションは、背中がアーチ状に垂れ下がった泳ぎ方に比べて、推進力を高めることができるため、下記のポイントを中心に改善していくことをおすすめします。
頭が上がりすぎない
まず、頭の位置を確認してください。多くの場合、目線がはるか前方を見過ぎているために頭が上がっています。
そのため、目線は真下か、または最大で45度前方を見るように心がけてください。
適切な目線の角度に関しては個人差があるので、トレーニングを重ねながら自分にあった角度を見つけてください。どちらにしても、45度以内であれば問題はありません。
首をまっすぐにする
頭が上がることで、首の後ろにしわができたり、あごが出過ぎたりした場合は、姿勢がまっすぐになっていません。頭の体勢は、首の状態と密接なつながりがあることを覚えておいてください。
ストロークのプルの向きは下ではなく後方に
クロールのストロークにおいて、プルの段階で、手が後ろ向きではなく、下に向かって水をかいている場合、肩や上胸部が上に押し上げられて、おなかや体のコアの部分が沈み、お尻が上がった姿勢になる傾向があります。いわゆる背中がアーチ状に反った状態です。
そのため、ストロークのプルは、必ず後方に向けて行ってください。
柔軟性を身に着ける
多くの場合、股関節屈筋(股関節を曲げるための筋肉)をはじめ、肩、腰などの柔軟性や可動性の欠如が、水中での悪い姿勢の原因となっています。
水の抵抗をなくし、楽に泳ぐ姿勢を身に着けるには、これらの部位を柔軟にするストレッチを取り入れたり、ボディーポジションやバランス力を向上させるようなドリルトレーニングを取り入れていくことをおすすめします。
参照元:https://youtu.be/EKzNHXpBzQc
ストリームラインの姿勢を学ぶためのYTAX練習方法
まず、壁を蹴ってけのびをします。次に、壁を蹴った後に以下の4通りの姿勢でどれくらい進むかを比べてみましょう。
- 両腕を広げてYの字
- 両腕を真横に広げてTの字
- 両足を広げてAの字
- 両腕と両足を広げてXの字
そして、最後に、両腕と両足をまっすぐに伸ばしてIの字でふし浮きをします。
ポイント
Y、T、A、Xの姿勢は、いずれもストリームラインで泳ぐ時に、子供がよくやる間違い(両腕や両足が離れる)をおおげさにした泳ぎ方です。
それぞれのけのびの姿勢でどれだけ遠くまで泳ぐことができるかをチェックし、両腕と両足を伸ばした姿勢(I)が一番抵抗を受けないことを学ばせます。
ストリームラインの姿勢を学ぶための練習を動画で見る
ストリームラインだけでできるだけ進む練習
歴代の水泳選手の中には、腕や足の力を全く借りないで、ストリームラインだけで25m進む選手もいます。このことから、私たちの泳ぐ姿勢にはまだ改善の余地が残されていることが分かります。
次は、ストリームラインだけで、自分のボディーバランスをコントロールしてできるだけ進む練習方法を紹介します。
スタート地点(またはターン地点)からストリームラインで進む距離を伸ばすことができると、レースで実際に泳ぐ距離を短縮することができます。
練習方法
- スタート地点から飛び込みます。
- 可能な限りストリームラインを維持して進みます。
- 体が水面に浮いた後も、そのまま姿勢を崩さないで、水平になって水面を滑らかに進めるところまで進みます。
繰り返し練習しながら、バランスの安定性を磨き、ぜひ、他の人と体の安定性と距離を競走してみてください。