火星への着陸が、科学者らから「恐怖の7分間」と呼ばれる理由は、主に重力と大気にあります。
火星の前に人類は、月への着陸に、そして(有人宇宙飛行からの帰還で)地球への着陸にも成功しています。
地球は大気層が厚いため、地上への着陸にむけてパラシュートで宇宙船を減速させられるメリットがあります。
一方、デメリットはというと、厚い大気は摩擦熱を発生させます。
そのため、高熱から守るための熱シールドが必要になります。
さて、大気がほとんどない月では、摩擦がないため、熱シールドは必要ありませんが、パラシュートが使えないという欠点があります。
そのため、速度や衝撃をやわらげながらの着陸(軟着陸)には、逆推進ロケット(逆噴射ロケット)が必要です。
現在、火星への着陸は、50%以上が失敗しています。
実は、火星への着陸の場合、地球、月、双方のデメリットが足を引っ張っているのです。
以下に火星への着陸が難しい理由についてみていきましょう。
火星の重力と大気の問題
火星は地球よりも質量が小さい(10分の1)ため、その分、大気は100倍以上も薄く、パラシュートは効果がありません。
したがって、複雑な逆推進ロケットが必要になります。
また、大気が完全にないわけではないので、逆推進ロケットを使うと乱気流にさらされる恐れがあるうえ、摩擦の影響から守るための熱シールドも必要です。
また、現段階の科学技術では、月(38万km)までよりもはるかに距離が遠い火星(7528万km)までは、地球からすぐに指示が送れないため、宇宙船をコントロールできないことになります。
ゆえに、突入から着陸にかかる間の指示はあらかじめプログラミングしておかなければなりません。
質量、大気、距離など問題の結果、火星への着陸の複雑さが増すのです。